LOCUS GEARのDjediについてもっと語りたい(雨の日編)
前回、Djediについて7500字もかけてダラダラと語りました。
今回は語り切れなかった<雨の日の使い方>についてです。
前回『年も明けたのでLOCUS GEARのDjediを語り尽くしたい』では「雨の日に使いたければ、大人しく専用タープを買え」と語りました。
しかし、それだけでは十分ではありません。Djediは何も考えずに雨の日に使っていると、ボトムから浸水します。
「アイエエエエ! シンスイ!? シンスイナンデ!?」
それを説明するにはDjediの構造的特性について補足しなければなりません。
Djediの構造的特性
こちらはDjediを初張りした時の写真です。テン場は槍ヶ岳山荘。あまり広くないテン場で、しかも初張りなのでピンと張れていないのは見逃してください。
テント大好きマンならこの写真を見ただけで違和感を感じたかもしれません。張綱がない?そこじゃありません。
……そう、グランドシートがテント本体からチラリはみ出しているんです。これはドームテントでは本来あり得ない状況です。
グランドシートの役割は2つ。1つはテント本体のボトム保護。2つは雨天時の浸水防止です。2つ目の役割を果たすためには、グランドシートはテント本体より一回り小さくなくてはなりません。
グランドシートがテント本体と同じ、または大きい場合、雨はグランドシートに溜まります。つまり、わざわざ水溜りを作っている状態になります。さぁて、Djediのスペックを見てみましょう。
大きさ同じやんけ!あかんやん!
そう、あかんのです。あかんで。
同じ大きさですが、実際にはDjediを頑張ってピンッと張っても、必ずグランドシートが「コンニチハ」します。あかんです。
加えてDjediはシングルウォールテントです。ダブルウォールテントは雨が降ってもフライシートを伝って地面に落ちます。一方でシングルウォールテントの場合、雨は幕体を伝ってボトム側に流れ落ちます。
すなわちタダでさえ雨が流れ落ちるシングルウォールでありながら、グランドシートが幕体と同じ大きさなので、激しい雨の際はテント本体とグランドシートの間に溜まり続けます。
さて、するとどうなるでしょう。テント本体のボトム生地が完全防水であれば問題にはなりません。一方で山岳テント(特にDjediのような軽量重視テント)のボトムは完全防水ではありません。
生地自体の耐水性を上回る場合もありますが、それ以外にもボトム生地は使用している内に目に見えないような小さな穴が経年で空いてきます。そのような微細な穴は上から圧力が掛からなければ浸水してくることはあまりありません。
裏を返せば、圧力が掛かった際には浸水の可能性がある、ということです。
Djediのボトム生地の耐久性
「Djediのボトムってそんなポンポン穴あくの……?」「DCFって超高強度だったはずじゃ……」そう思うのも当然でしょう。
実際に使用している感覚から言います。『穴、空きます』。
DjediのボトムはDCFで出来ています。ボトムなので本体のようにeVentコーディングはされていません。DCFはダイニーマから成る不織布であるため<引張応力>は極めて強い強度を示します。
一方で鋭利なもので引き裂くような<せん断応力>は相性が悪いです。
前回、DCFを「超高強度ビニール袋のようなもの」と例えました。スーパーのビニール袋を想像してください。
両手で「イーッ!」と引張っても中々千切れないと思います(引張応力)。対してビスケットの箱のような、角がちょっとカクカクしているものを中心として破れている、なんて経験ないでしょうか。
ありますよね。そう、あるんですよ。
さて、こちらは穂高岳山荘のテン場です。鋭利なモノがそこら中に転がっていますね。
「でもグランドシートがあるから……」確かに『無いよりマシ』です。
一方で Djediのグランドシートは<15Dシルナイロン>で、とってもペラペラ。鋭利なモノの鋭利さは緩衝されずに、そのまま本体ボトムを襲います。
<穴>と言っても「ビリビリィ!」と大きく破けるわけではありません。目を凝らして、「あーー、ここかぁ」となる1-2 mmの小さな穴です。
またDjedi購入時にはテントと同じ素材のリペアシートが付属しているので、穴が空いても簡単に塞ぐことが可能です。
ただしそれは<目に見える穴>の場合。Djediは使用しているうちに<目に見えないほど小さい穴>が空いてきます(と思われます)。
自信がないのは『目に見えないので確認のしようがない』からです。これらの穴は晴れた日や雪山ではほとんど問題になりません。
一方で雨の日には最初に記した<グランドシートの大きさ問題>と合間って、浸水問題へと直結します。
雨の日のDjediへの浸水は、主に荷重が掛かっている所をメインに生じます。
最も荷重のかかる<スリーピングマットの下>ですが、ここは仮に浸水してもスリーピングマットの下に水が留まってくれることがほとんどなので大した問題にはなりません(水溜りができるほどの浸水が生じたことはありません)。
他には<物をドッサリ入れた小物入れ>などですね。濡らしてはマズイものを直置きするのはお勧めしません。必ず<ザックの上>などに避難させます。
面倒くさい!面倒くさいなDjediくん!
古の技術で問題全部解決
そう、雨の日にDjediを使うのはとっても面倒くさいのです。なので前回は「悪いこと言いません、止めておきましょう」と書きました。
一方で失われつつある古の技術を用いれば、この浸水問題は呆気なく解決します。それがこちら。
そう、テントマット(インナーマット)です。
昨今、テントマットと言えば「何だかんだサーマレスト良いよね」となりますが、そっちじゃありません。それは<スリーピングマット>です。
かつて、テントの素材が今ほど良くなかった時代、山屋は必ず<テントマット>と<スリーピングマット>の両方を持って山へ向かいました。
時代は進み、<スリーピングマット>の高機能化とダブルウォールテントの普及によって、<テントマット>は時代の影に隠れつつあります。
なので<テントマット>で調べても「そうそう!こういうのが欲しいんだよ!」に中々ヒットしません。
👆の写真は<大きなアルミシート(旭電機化成)>という製品です。防災シートのようなものですね。お値段は¥483-。見た目の割に軽い164 g。少し嵩張ります。https://www.yodobashi.com/product-detail/100000001001194090/
こういったテントマット一つあるだけで、雨の日のDjediの使い心地は劇的に改善されます。
「浸水?しません」「ボトム強度?荷重が分散されるので穴空きません」「夕食の汁物をこぼしたってダメージ少ないです」「お酒をひっくり返しても、平気な顔🤗」「ついでに雪山だとボトムの保温性がちょっと上がります」
これ一つで諸々の問題全部解決です。やったね。
テントマットはテントの床面積と同程度であれば何でも良いです。
より軽量&小サイズを求めるのならSOLのペラペラシートでも良いでしょう。ただし薄すぎると、設営後に捲れてくて鬱陶しいかもしれません。
雪山におけるボトムの保温性を求めるのであれば、私が使っているような少し厚手のものがいいかもしれません。
何を買うにせよ、大した金額ではありません。Djediユーザーは迷わず買っておきましょう。これからDjediを買おうかな、なんて人は梅雨時期までに買っておきましょう。
以上、Djediを雨の日に使うコツ的な何かでした。