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スキー経験ゼロな社会人登山家が、テレマークを履き出した訳

スキーに行けない!行きにくい!あんかけだよ!

スキー?興味ないよ。

俺は山屋だぜ?
山は歩いて登るもんだ。どうしてたって金を払ってリフトで登らなくっちゃあ、いけないんだい?

時は2019年4月。

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スキーに興味の無いあんかけくんは、何故か白馬村の栂池高原スキー場・ゴンドラ乗り場におりました。

スキー滑りに来た?まさか。
目的地は標高2932 mの白馬岳。

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残雪期の白馬岳に登りに、栂池高原スキー場にやって来たのです。

残雪期の白馬岳

雪のガッツリある季節に白馬岳に登るには、いくつかのルートがあります。その中でも最も危険性が低いのが、栂池高原スキー場から登るルートです。

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栂池自然園から天狗原へ斜面を駆け上がり、天狗原から白馬乗鞍岳へ。
白馬乗鞍岳から白馬大池に一度下ります。大抵はここで幕営。
翌朝、雷鳥坂から小蓮華岳、三国境を経由して白馬岳山頂に至るルートです。

スタート地点の栂池自然園の時点で標高1700 m。白馬村の標高が700 mなので、スタート地点まで1000 mの標高差があります。この1000 mはどうするのか。

こうするんだ。

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栂池高原スキー場は4月になってもリフトを運行してくれています。ゲレンデ上部がまだ運営中なんですよね。
また春からは、リフトトップから栂池ロープウェイを運行してくれます。これを使うと、栂池のゲレンデベースから栂池自然園まで一気にショートカットできる訳です。

生まれて初めて見た<バックカントリー⛷>

さて、土曜の朝8時。
栂池スキー場のゴンドラ乗り場に来ると、予想以上に賑わっています。

「へー、4月になってもスキーやる人、こんなにいるんだぁ(無知)」と呆けていると、どうやら強風でゴンドラの始発が遅れている様子。

列に並んで待っていると、係のお姉さんがアナウンスをしています。

🙋‍♀️「強風のためゴンドラの始発が遅れております。リフトなら動かせるんですが、この中に『今日ゲレンデで滑るぞ』って方はいらっしゃいますかー??

⛷⛷⛷「シーーーン………」

🙋‍♀️「あ、はい。全員バックカントリーですね。もう少々お待ちくださいー」

ゴンドラ乗り場には約80人ほどの人がいました。ちょっとした大群です。
その全員がバックカントリー⛷だというのです。
その中で『登山装備なのはあんかけくん一人』。理解が追いつきません。

何せ、『バックカントリー』なんてのは話にしか聞いたことがありません。<雪山の滑り降りるヤベー奴ら>という印象でした。
しかし、そのゴンドラ乗り場では逆に自分が<一人だけ登山装備のヤベー奴>です。もうどうしようもなく浮いています。

バックカントリーの真髄

出発前から面を食らいましたが、ゴンドラも無事動き、気を取り直して登山開始です。

山屋特有の<無駄に朝早い>を活かし、列の先頭に並んでいたあんかけくん。
乗り継ぎのロープウェイも始発に乗ることができ、先頭でゲレンデトップに降り立ちました。

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同じ始発ロープウェイに乗れたスキーヤーは、何やら板を立ててモソモソしていますね。
「何してはるんやろ?準備運動かな?(無知)」
そんなスキーヤーを尻目に、手早くワカンを装着して登り始めます。

そしてこれが次の写真。

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あれ?おかしいですね?
先頭で歩き始めたはずなのに、前にスキーヤーが沢山います。

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後ろを振り返ると次発以降のロープウェイで来たBCスキーヤー達がゾロゾロと追いかけてきます。
追いかけるどころか、ドンドンドンドン抜かされていきます。

そう、こちらはワカンで、向こうはスキー。その浮力の差は歴然です。
こちらがテン泊装備で20 kgもの重荷を背負っていたことを加味しても、スキーヤーの歩はあまりにも速すぎます。

あんかけくんがワカンで「ゼェゼェ」言いながら深雪にステップを刻んでいる間、BCスキーヤーは『まるで平地を優雅に歩く』かのようにグングンと歩を進めていきます。
「これがバックカントリーの真髄か」
あんかけくんの認識が<雪山の滑り降りるヤベー奴ら>から<雪山をグングン登るヤッベェ奴ら>に変わった瞬間です。

山スキーへの憧れ

その後、白馬岳には無事登頂しました。
その景色はまさに天国。

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これ以上ないくらいの絶景です。
特に山を始めて丸一年の記念的山行ということもあり、登頂の喜びは格別でした。

しかし一方で頭をよぎるのは、あのバックカントリースキーヤー達です。

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スキーの圧倒的浮力による深雪への適応性。
グングン登り、下山は滑走でスイーーーっ。
これを見て、羨まないというのは無理な話です。

しかし時は既に4月。
スキー経験ゼロのあんかけくんは、まずゲレンデのスキー技術習得から始めなければなりません。道具もゼロから揃えなくてはなりません。
普通なら諦めます。いや、精々頑張ってレンタルから始めるところでしょう。

あんかけ的・山スキー計画

時は8ヶ月後、2019年12月末へ一気に進みます。
年末は北岳に登っていました。

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そして、下山して直行したのはカモシカスポーツ・松本店。
その時のツイートがこちら。

買ってんじゃん。買い揃えてんじゃん

そう、あんかけくん。28歳にしてスキーデビューです。
しかもよりによって<テレマークスキー>
テレマークスキーの詳細は別の記事に書く予定ですが、曰く「テレマークなんてのはアルペンスキー(所謂、現代的な普通のスキー)を一通り満足した人が、別の趣向を求めてやるもん」です。

編集後記:テレマークスキーってなんやねん、な記事を書きました。

なんで、どうしてたってテレマークかというと、「山スキーってやっぱりテレマークじゃん?」という安直な考えと、同年9月に穂高岳山荘のテン場で出会った『テレマークおじさん』の影響が非常に大きいです。

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その『テレマークおじさん』とは、「珍しいテント(Djedi)張ってるね〜」と声を掛けてきて下さった、テン場のお隣さん。

東京で大工をしているというそのテレマークおじさんは、お連れの方2人と奥穂に上りに来ていました。そしてお連れの方曰く
「このおじさん、山じゃおっっそいんだけど、雪山でテレマークスキー履かせたら人が変わったみたいに速いんだよw 嘘みたいに元気になるのww」

これを聞いて「カッケェぇ……」と思ってしまったあんかけくん。
早々に松本のカモシカスポーツに出向き、店員に向かって一言「一番いい装備を頼む」

山スキーへの道

そんなわけで始めたテレマークスキー。
ようやく圧雪ゲレンデでのテレマークターンのコツを掴み始めたばかりで、本格的な山スキーはもう少し先でしょう。

それでも、スキーをきっかけに新しいご縁に巡り会えたりと、充実したアウトドアライフを満喫しております。

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いつの日か、山スキー。
その日を夢見て、今日もゲレンデですってんコロリン転ぶのです。