LOCUS GEARのKhufuは山岳テント足り得るのか その1<設営編(無雪期)>
LOCUS GEARについて語るシリーズもはや4回目。
Djediに一段楽したので、次はKhufu編です。また長くなりそうなので分割です。
【編集後記】
全6回になりました。続きものですが、単体で読んでも完結しているので、お好きな記事からどうぞ。
LOCUS GEAR / Khufu
まずは概要。KhufuはLOCUS GEARのワンポールテントです。
2019年8月。北アルプス、ヒュッテ西岳のテン場。
トレッキングポール一本とペグがあれば設営可能。400 g前後と超軽量ですが、ボトムやスカートはありません。
KhufuはLOCUS GEARを代表するテントであり、実用的な<山岳テント>です。
Khufuのラインナップ
LOCUS GEARのラインナップは少々複雑ですが、その中でも特に分かり難いのがKhufuです。
Khufuは<Khufu HB><Khufu DCF-eVent><Khufu DCF-B><Khufu Tyvek><Khufu Sil>の5種類が存在します。呪文かな?
この中で欲しいと思ったらすぐ手に入るのは<Khufu HB>のみで、他は受注生産です。
受注生産品の納期は2021年1月時点で約3ヶ月です。
沢山種類のあるKhufuですが、基本構造は同じです。異なるのは幕体と材質とシーム処理の有無、そして付属品です。
私が所有しているのは<Khufu HB>なので他のKhufuについて多くは語れませんが、主な特徴を列記すると以下のようになります。
Khufu Sil:Khufuの基本形。材質は30Dシルナイロン。重量480 g。¥33,800-
Khufu Tyvek:最も安価なKhufu。材質はタイベック。重量440 g。¥28,800-
Khufu DCF-B:最も軽量なKhufu。材質はDCF(旧称キューベンファイバー)。重量335 g。¥65,000-
Khufu DCF-eVent:最も高価で機能的なKhufu。材質はDCF-eVent(Djediと同じ)。重量435 g。¥80,000-
Khufu HB:全部入りのKhufu。材質は10Dシルナイロン。重量390 g。本体の他にペグ、フルサイズメッシュインナーが付属。シームテープ処理済み。在庫があればいつでも購入可能(唯一、LOCUS GEARのHP以外での取り扱い有り)¥58,000-
こうして見るとTyvecの安価さが際立ちますが、山岳用途を想定する場合はあまりお勧めできません。理由はTyvecの材質的強度・耐久性とシーム処理の難しさ、です。
私が全部入りのKhufu HBにした理由は付属品のインナー等が欲しかったからではなく、とにかくすぐ欲しかったからです。
代替テントとしてのKhufu
時は2019年2月3日まで遡ります。
2019年2月。八ヶ岳、黒百合ヒュッテのテン場。
山を始めて7ヶ月。八ヶ岳の黒百合ヒュッテでテント泊をしていた時のことです。
当時持っていたテントはZerogramのEl Chaltenでした。今思うと「よくフルメッシュインナーのペラペラテントで厳冬期の八ヶ岳にいたもんだなぁ」と感心します。
無事に幕営を終えて、さて撤収、、、あ。
やらかしました。フライシート下部の隙間を雪で埋めていたのですが、それが昼間に溶解⇨夜間に再凍結し、テントは雪面と一体化しています。
そんなこと知らずにポールごとテントを持ち上げようとした瞬間、「ビリビリィ!!」。ポール吊り下げの起点になっている部分の生地が無惨にも破け去りました。
El Chaltenくんはその後修理して今も現役でいますが、韓国のテントメーカーなので修理は本国。納期は3ヶ月という絶望を突き付けられました。
まずい。まずいぞ。3ヶ月もテント泊ができない……?冬が終わってしまうではないか……買うか?いや、でも……いいや、どのみち山道具は全て消耗品。ザックにせよ、靴にせよ、何でも予備は必要じゃないか……もちろん…テントも…
こんな感じで「うん。予備テントは必要経費」と自己暗示をかけた次第です。冬のボーナスは冬山装備一式を揃えるのに全部使っている中で、この決断はかなり大きなものでした。
じゃ、何を買うか、という話になるのですが、「普通のテントを買ってもおもろないなぁ→よっしゃ!ワンポールシェルターにしたろ!」
冬山で使うことを想定しているのに、密閉性の欠片もないシェルターを選択する辺り、やっぱりキチg………冒険心に溢れています。
(本題)Khufuは山岳テント足り得るか
さて本題です。ワンポールシェルターを山岳テントとして使用することに抵抗がある方も多いのではないでしょうか。
「岩岩のテン場でちゃんと固定できるか心配」「風が強い時はどうするの…」「強い雨の時はどうなっちゃうの…」「冬山って寒くないの…?」
そういった疑問に一つずつ答えていきたいと思います。
第一回の今回は<設営編>です。まずはグリーンシーズンから。
「岩岩のテン場でちゃんと固定できるか心配」
ワンポールシェルターを山で使う上で最も心配になるのがコレではないでしょうか。ドームテントであればペグダウン・確保が若干甘くても、ポールさえ通せば自立します。
一方でワンポールシェルターはペグダウン・確保ができなければ自立すらしません。
それでは実際に山にKhufuを設営した時の様子を写真とともに振り返ってみましょう。まずはグリーンシーズンです。
八ヶ岳・赤岳鉱泉。設営し易さ:◎。しっかりと締まった土でペグの効き良し。快適空間そのもの。
八ヶ岳・白駒の池。設営し易さ:◎。赤岳鉱泉と似て、締まった土でペグ効きやすい。
南アルプス・北岳肩の小屋。設営し易さ:○。一見すると砂利のようだか、その下は割と土。しかしペグが奥まで刺さらないこともあり、少し苦労する。この日は風が強かったが、問題無し。
北アルプス・白馬岳頂上宿舎。設営し易さ:△。とにかく硬い地面でペグはほとんど刺さらない。ペグ固定の石は沢山あるが、どれも小さめで複数乗せる必要あり。この日は風がとんでもなく強かったが、他のドームテントより遥かに高い固定力。どれだけ強い風が吹いてもびくともしなかった。
北アルプス・三俣山荘。設営し易さ:○。土も程よく締まり、平らな処が多いので設営し易い。手頃な石が転がっているのも嬉しい。
北アルプス・唐松岳頂上山荘。設営し易さ:○。締まった土でペグ刺さり易い。石もそこそこ転がっている。ただし設営可能数と山の人気度が釣り合っておらず、ハイシーズンはとんでもなく混雑するので注意。「もうそれ斜面やん」なんて処に張るハメになることも。
北アルプス・五色ヶ原。設営し易さ:○。見た目よりもペグ刺さり易い。ハイシーズンでも混雑しにくく、テン場も広いのでおすすめ。景色も最高。
北アルプス・薬師峠。設営し易さ:○。場所さえ確保できれば固定は容易。人気のテン場なので、むしろ張れる場所を確保する方が勝負。
北アルプス・ヒュッテ西岳。設営し易さ:◎。北アルプス稜線のテン場で最も張り易いかもしれない。ここから眼前に眺める槍ヶ岳が一番好き。しかも滅多に混まない。
北アルプス・白馬鑓温泉。設営し易さ:○。砂利に見えるがペグは刺さる。手頃な石もコロコロしていて固定容易。温泉三昧を楽しんで。
こんな感じで、北アルプスであっても整備されたテン場はしっかり整地されているので、Khufuの設営も概ね容易です。
唯一苦労した白馬岳頂上宿舎も、トンデモ暴風に耐えられるくらいしっかり固定できています。
Khufuを張った経験はありませんが、個人的に「ここは苦労するやろなぁ」と思うのは槍ヶ岳山荘、北穂高小屋、奥穂岳山荘、涸沢辺りでしょうか。コレらは<地面にペグが刺さらない>&<スペースが限られている>の二重苦です。
特にKhufuをピンを張ろうとすると幕体以上のスペースを必要とするため、槍ヶ岳山荘のように張るスペースがガッツリ指定されている場所では苦労するかもしれません。
ただしコレらのテン場は大きな石がゴロゴロ豊富にあるので、それらを使えばペグ単体よりよっぽど安定して固定できます。
Khufuは張綱もキッチリ固定して「ピンッ」と張ることで、本来の耐風性能を発揮します。設営する際は多少面倒でも、お腹が空いていても、まずは張綱含めて「ピンッ」と設営することをお薦めします。
>>その2に続く。