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スキー初心者から見るテレマークスキー

山スキーに憧れてテレマークスキー一式を揃えたあんかけくん。

殆どの方がこう思ったはず。「いや、テレマークって何よ」

テレマーク

改めて、全国76億人のどうでしょう藩士の皆様方。こんにちは。

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さて、ジョンズなんちゃらキンス大学の統計によると、藩士の97%が<テレマーク>を勘違いしているとの研究結果が出ています。

「テレマーク?あのミスターが勝った時の腕の形でしょ?ビクトリー、みたいな」

違います。それは体操競技において競技終了を意味するフィニッシュマークです。
テレマークとは本来、腕の動きではなく、足の動きを指します。

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これがテレマーク姿勢。ターン時に左右の足に前後差ができる。
引用:https://icelanticskis.jp/3200/

ちなみによく見ると、ミスターもちゃんと左右の足に少し前後差ができています。

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アルペンスキーとテレマークスキーの違い

正確にはアルペンと<ノルディック>になりますが、まぁ細かいことは置いておきましょう。
アルペンスキーというものが、いわゆる<普通のスキー>ですね。

これがアルペンスキーのビンディング。

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見慣れた形状ですね。靴を先端に合わせたあと、踵を「グイッ」と押し込むと靴の前後が固定されます。同時にブレーキが上がり、滑走できるようになります。
普通にスキーをやっていたら、このビンディングしか見ないと思います。あまりに標準的に成りすぎたが故に、自分がやっているスキーを<アルペンスキー>と認識していない人もいるくらいです。

一方、テレマークスキーのビンディングはこちら。

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「なんじゃぁ、こりゃぁ」

アルペンスキーに慣れ親しんだ人ほど、「ギョッ」とする構造。
足のつま先を固定する部分が妙に大きく(広く)、一方で踵は……え、引っ掛けるだけ……?

テレマークのビンディング構造

そう、テレマークスキーは足のつま先しか板に固定されていません。

実際にブーツを装着する様子を見てみましょう。

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まずブーツの<前コバ>をビンディングに差し込みます。

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「スッポリ」とハマっているように見えますが、単純に『差し込んでいるだけ』なのでアルペンスキーのようにロック機構があるわけではありません。

先端から伸びる2本のワイヤーは、踵側に回り込みます。

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ワイヤーの踵側にはアイゼンと似た固定パーツが付いており、手で上げることによって固定します。

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そう、アルペンスキーのように「ブーツをグイッとやって、ガション!」なんて便利なものではありません。いちいち「よいっしょ」と屈んでスキーを着脱する必要があります(※1)。

※1:ここでは詳しく説明しませんが、テレマークの中でも<NTN>という規格のビンディングはアルペンスキーと同じようにスキーを着脱することができます。

整理すると、テレマークスキーのビンディングは<ブーツのつま先>しか固定しません。踵は上下に、自由に動かすことができます。
良く言えば「踵がフリー」。逆に言えば「不安定極まりない」です。

不安定なテレマーク

ブーツのつま先しか固定されていない、不安定なテレマーク。
そのテレマークスキーで安定的に滑る技術こそが<テレマークターン>です。

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歴史的には<踵がフリーなスキー>こそが原初的なスキーです。どうして踵がフリーかというと、<スキーは雪山を歩くための手段>だったからですね。歩くには踵を上げる必要があります。
18世紀後半になって、歩くことに<斜面を滑走>が加わり、踵がフリーなスキーでも安定して制動(ターン)する技術として<テレマークターン>が確立されました。

テレマークターンの足の動きは、アルペンスキーとは真逆です。
アルペンスキーではターン初動で山足(内足)を少し前に出し、谷足(外足)に加重することでターンを安定させます。

テレマークスキーではターン初動(スキーがフォールラインを向くと同時・または直前)で谷足(外足)を前に出します(※2)。同時に山足(内足)は後ろに下がって、自然と踵が上がります(※3)。この時、加重は両方の板に均等にかかっていることが理想ですが、実際は山足(内足)に思いっきり加重します。

※2:前に出すと言っても、ぐいっと前に出すわけではありません。そのようにすると、前のめりになって板の制御が効かなくなります。感覚的には足を前後に少しだけ開く感じです。
※3:※2の動作によって、腰から上は下方向に少し下がります。下がるためには膝を曲げなければなりません。足の前後差をつけた状態で膝を曲げてみてください。後ろ足の踵が自然に上がるはずです。

つまり、不安定なスキーで安定してカーブするために、足に前後差をつけて<より広い面積>でスキーを雪に接地させるわけですね。いや、スキーの接地面積は変わる訳ないのですが、感覚的な話です。

むっちゃむずいテレマークターン

はい、ここまで文字で説明してきましたが、殆どの人がなんのこっちゃ分からないと思います。私も分かりません。

アルペンターンは不恰好でも、多少雑でも、ターンとして成立します。一方、テレマークターンは、ターン一つに関係する要素が膨大です。そして、それら要素を一つでも損ねると、ターンは成立しません。盛大に転びます。
ただ転ぶだけではありません。高確率で前方に転びます。足の前後が固定されたアルペンスキーではあり得ない転び方です。

今まで何度、自分の頭を自分のスキーのトップに打ち付けたか覚えていません。ヘルメットがなければ、流血沙汰です。

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それでも私はテレマーク

『とにかく不安定』『ゲレンデに200人いたら、テレマーカーが1人はいると思え』『絶滅危惧スキー』『マイナージャンルすぎてブーツの選択肢が皆無』『そもそもスキー屋さんで取り扱っていない』『スクールが殆んど無い』『単純にアルペンより難しい』『ブレーキがないので流れ止め必須』『ブレーキがないからスキーを履くだけで一苦労』『スキーの着脱で腹がつる』

そんなテレマーク。それでも私はテレマーク。
その理由は<山スキーをやりたいから>、そして<難しいから>。

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元は山屋のあんかけくん。スキーを始めたきっかけも、山スキーをやりたいからです。
BCスキーではなく、山スキー。厳密な区別はありませんが、別に急峻な山岳斜面を滑りたいわけではなく、誰も入っていない深雪を進むためにスキーを使いたいという思いが強いからです。

テレマークスキー(踵がフリーなスキー)は、元々<雪山を歩く>ために確立された技術。近年はアルペンスキーのブーツ・ビンディングでもウォークモードにして歩くことは可能です。
一方でテレマークの場合、剛性の高いプラスチックブーツであっても足の甲が蛇腹になっており、普通の靴のように曲げることが可能です。

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これによって、より自然に歩くことができます。

そして<難しい>から。
テレマークスキーはとにかく難しいです。まず最初は<足に前後差をつける>だけで大変。とにかく転びます。

足を開けても、そこからターンに持っていくのが大変。もちろん転びます。

パウダースノーなんか行ってみましょう。ファットスキーでなく、重心を後ろにかけることを怠ると、スキーが深雪に突き刺さって、漏れなく前方に転びます。前転する勢いです。

緩い傾斜でも転びます。初心者コースでも、とんでもない充実感があります。

午後、ゲレンデが凸凹になってきましたね。踵が固定されていない分、その凸凹は体に直に響きます。油断すると転けます。

コブ斜面?とんでもない。前に吹っ飛びます。

難しい。あらゆることが難しい。
でも、まれに『とんでもなく巧いテレマーカー』がいるのです。
まるで雪面を歩くかのように、板をシュバシュバ前後させて優雅に滑るテレマーカー。

そういう方々に対する尊敬、敬意、そして憧れ。
それこそが、テレマークスキーに魅力を感じる最大の理由です。

さぁて、またゲレンデに転びに行こう。
そして目指せ山スキー。