TOKAIのLSシリーズはなぜ評価され続けているのか
TOKAIはGibsonレスポールモデルの忠実な再現を目指して1978年にLSシリーズの生産と販売を開始しました。
主なモデルは、
【Les Paul Reborn】
初期の代表的モデルで、1958年製Gibson Les Paulの忠実な再現を目指しました。高品質な木材選定と精密な製造技術により、オリジナルに非常に近い特性を持っていました。
・LS-80
LSシリーズの中でも人気の高いモデルの一つです。1980年代に製造され、ヴィンテージ・レスポールの特徴を多く取り入れています。
【販売中】TOKAI Reborn期 LS-80 LesPaulタイプ 1978年製
【Love Rock】
著作権問題に対応するため、LSの名称を変更した後のモデルです。デザインも若干修正されていますが、高品質は維持されています。
・LS-100F
フレイムメイプルトップを採用した高級モデルで、美しい杢目と豪華な外観が特徴です。
・LS-200F
LS-100Fをさらに上回る高級モデルで、より厳選された材料と高度な製造技術が用いられています。
・LS-55
比較的手頃な価格帯のモデルで、初心者からプロまで幅広く支持されています。
これらのモデルは、それぞれ異なる特徴や価格帯を持ちながら、TOKAIのLSシリーズの高品質と優れた演奏性を体現しています。特に初期のモデルは、現在でもヴィンテージギター市場で高い評価を受けており、コレクターアイテムとしても人気があり、国内外問わずますますプレミアがついているLSの評価について解説します。
精緻な再現性
TOKAIは1958年製Les Paul Standardを詳細に分析し、NCルーター(※)を使用して精密に再現しました。この手法により、本家Gibsonのヴィンテージモデルに非常に近い品質と特性を持つギターを製作することができました。
※ NCルーター:数値制御 (NC) 技術を用いて対象物と同じサイズに木材、プラスチック材、金属材などを刃物で切削加工するための装置
ネックシェイプ:1960年製ヴィンテージLPのネックをプロファイルし、当時のスリムネックを忠実に再現しています。
ネック角度:例えば、通常の4.5度のネック仕込み角度を3.8度に変更し、1959年製レスポールの約3度に近づけています。これにより、弦の張力が若干弱くなり、サウンドの甘さとサスティンが向上しています。
ピックアップ位置:ヴィンテージモデルに合わせてピックアップ位置を調整し、より本物に近いサウンドを実現しています。
材料選定:メイプルトップやマホガニーバックなど、オリジナルと同様の木材を使用しています。
高品質な製造技術
東海楽器は1970年からC.F.Martin社と代理店契約を結び、ギター製作に関する高度な技術を学んでいました。この経験が、LSシリーズの製造にも活かされています。
職人技術の継承:日本の伝統的な楽器製作の技術をギター製造に応用し、高い品質管理を実現しています。
最新技術の導入:先ほどもお伝えしたNCルーターなどの最新技術を積極的に導入し、精密な加工を可能にしています。
品質管理の徹底:各工程での厳格な品質チェックにより、一貫した高品質を維持しています。
これらの要因により、TOKAIのLSシリーズは海外のプロフェッショナルギタリストからも信頼される品質を実現しました。
時代のニーズとの合致
1970年代後半は、ヴィンテージギターへの注目が高まっていた時期でした。この背景には以下の要因があります:
ヴィンテージ・ブーム:1970年代後半から1980年代にかけて、古いギターの音や外観に魅力を感じるミュージシャンが増加しました。
新製品への不満:当時のGibsonの新製品は、品質や音質の面で多くのギタリストを満足させられていませんでした。
オリジナルの高騰:本物の1950年代のGibson Les Paulは既に高価で、一般のミュージシャンには手が届きにくくなっていました。
希少性と材料の質
TOKAIのLSシリーズ、特に初期のLes Paul Rebornシリーズは、以下の理由から希少性が高くなっています:
限定生産:初期のモデルは大量生産されておらず、生産数が限られていました。
生産期間の短さ:著作権問題などにより、オリジナルデザインに近いモデルの生産期間は比較的短かったです。
材料の枯渇:高品質な木材の入手が困難になり、同じ品質のギターを大量に生産することが難しくなりました。
時間経過:生産から40年以上が経過し、良好なコンディションで残っているギターの数が限られています。
次に、TOKAIのLSシリーズ、特に初期のモデルは、材料の選定にこだわりがありました:
厳選された木材:メイプルトップやマホガニーバックなど、高品質な木材を使用しています。特に初期のモデルでは、木目の美しい材料が選ばれていました。
乾燥処理:適切に乾燥させた木材を使用することで、安定性と音響特性の向上を図りました。
ヴィンテージ仕様の再現:1950年代のGibson Les Paulで使用されていた木材に近い特性を持つ材料を選定しました。
材料の組み合わせ:メイプルトップとマホガニーバックの組み合わせなど、音質に優れた材料の組み合わせを採用しました。
これらの要因により、TOKAIのLSシリーズは高品質な材料を使用したギターとして認識され、その音質と外観の美しさが高く評価されました。また、材料の質の高さは、ギターの経年変化にも良い影響を与え、長期的な価値の維持にも貢献しています。
Gibsonが発売禁止を求めた理由
著作権侵害の懸念
TOKAIのLSシリーズは、Gibsonのレスポールを非常に精密にコピーしていたため、著作権侵害の問題が生じました。ブランドイメージの保護
LSシリーズの品質の高さは、Gibsonのブランドイメージや市場シェアを脅かす存在となっていました。特に、当時のGibsonの新製品に満足できないユーザーのニーズに応える形で登場したLSシリーズは、Gibsonにとって大きな脅威でした。日本メーカーとの協定違反
1977年頃、GibsonとJapanese Instrument Manufacturersは「コピー自粛」の協定を結んでいました。TOKAIのLSシリーズの発売は、この協定に反する行為と見なされた可能性があります。市場競争の抑制
TOKAIのLSシリーズは、その品質の高さから本家Gibsonの製品と競合する存在となっていました。Gibsonはこの競争を抑制しようとした可能性があります。
これらの要因により、TOKAIのLSシリーズは海外で高く評価される一方で、Gibsonとの法的な問題も引き起こすことになりました。結果として、TOKAIはLSシリーズの名称を変更し、デザインも若干修正することで対応しました。
今では海外で通称「訴訟ギター」として呼ばれ、ファンの中では愛称にもなっています。