見出し画像

「鬼灯の冷徹」と「奪衣婆」と「涅槃会」

2月15日は、お釈迦様が入滅された日で、お寺では「涅槃会」(ねはんえ)を行います。

2月15日、16日と、東京国際仏教塾の専門課程曹洞宗コースの修行のお手伝い(5回目)に、町田の簗田寺様に行って来ました。

前日2月14日ですが、翌日の準備を終えて寝る前の(作務衣にアイロンかけるとか、お経本や絡子や靴下用カイロとか)ほっと一息タイムなのですが、最近の私の「一息タイム」は、「鬼灯の冷徹」なのです。

順番としては「サカモト」と「バババ」の最新話をチェックし、何度も観てる割にまたアニメ版「陰陽師」を観てから、「鬼灯」で落ちつく?みたいな感じです。

うちの師匠が「ゴッドファーザー」と「カジノ」を繰り返し観るのとあまり変わらないような気もしますが、落語の同じ噺を何度聞いても面白いのと同じかもしれません。
最近は「ジョン・ウィック」シリーズを見ているようです。

元々連載時から読んでおり、アニメもオンタイムで見ていたのですが、ネトフリでやっているので、何だかループでみている状態です。
なんというか、なんだか癒されるというか、日本昔話的なんでしょうか。

さて「鬼灯の冷徹」の「鬼灯」は「ほおずき」と読みます。
以前私の知りあいと青年誌連載時代(アニメ化前)に「あれ、面白いよね」という話になったのですが、その方が、道端で大声で
「キトウって面白いですよね~」とか「キトウ」を大連呼するので「あ、あれはキトウではなくホオズキを読むんだよ」と伝えた記憶があります。

いや、大人のオトコが路上で「キトウ~!」って連呼するのはちょっと止めて欲しいと思っただけです。

主人公の鬼灯様は、閻魔大王の第一補佐官の鬼神。
つまり、官房長官みたいなものです。
また、鬼灯の冷徹って、仏弟子にとってはとってもためになるんですよ。
日本の地獄の仕組みのおおよそが理解できるんです。
地獄で働く鬼は「獄卒(ごくそつ)」とというとか、八大地獄とか、地獄での裁判の順番とか、地獄のシステムとか、かなりよくわかります。

その中でも印象的なキャラで「奪衣婆(だつえば)」というのがいます。
奪衣婆は、亡者が三途の川を渡る時に、衣類を奪って脱がせ(なので奪衣)る、地獄の官吏の一人です。
奪衣婆の夫が懸衣翁(けんえおう)ですが、有名なのは断然奪衣婆です。
「鬼灯の冷徹」では、古参(イザナミさんが第一補佐官時代から)でなおかつ仕事をまったくせず(奪衣婆が仕事できる)、マキミキ(地獄のアイドル)の追っかけをしており、古参故に解雇もしにくいどうしようもない爺さんとして描かれています。

なお、奪衣婆が閻魔大王の奥さんという説もあるのですが、それは閻魔様がちょっとかわいそうかも?(鬼灯の冷徹、の話です)。

話を簗田寺さんに戻すと、涅槃会ということで、涅槃図が飾られていました。
江戸時代に描かれたものだそうです。


涅槃図(部分)
涅槃図(全体)象とかヒョウも写っています。かなり大きいんです。



涅槃図は、天界の神仏やお釈迦様の弟子達、動物なども描かれています。

この涅槃図の下をみると、カニや蝶々、カタツムリ、亀なども描かれています。ヒョウや象もいます。
迦陵頻伽(がりょうびんが@上半身は人間で下半身が鳥の、極楽浄土に住む鳥)もいたような。
細かく見ると色々な動物がいて興味がつきません。
この絵を描いた人は多分象を見たことがないので、象の鼻が短いのだそうですよ。

どこのお寺でも2月15日は「涅槃会」なので、「涅槃図」があれば飾るはずです。多分今月中は展示しているお寺さんも多いと思うので、見かけたら是非近寄って細かいところまで見てくださいね。

その涅槃図を前に、方丈様(ご住職。曹洞宗では、ご住職のことを方丈さん、と呼びます)が説明して下さったのですが、お釈迦様の足元に立っている老婆、それが奪衣婆なのだそうです。

「昨日奪衣婆を見て(鬼灯の冷徹)、今日も奪衣婆だ」と、何となく御仏縁を感じた日でした。

なお、曹洞宗では、涅槃会に「八大人覚」といって「正法眼蔵」からより抜いたものを読みます。

私達は本堂に飾られた涅槃図の前を「八大人覚」を読みながらぐるぐる歩きました。




いいなと思ったら応援しよう!