千字百夜の三題噺 第二夜
歌詞カード•近所迷惑•憂鬱
My Chemical Romance のアルバムの歌詞カードは中学生の彼の宝物だった。
古びた英字新聞みたいな段組に所狭しと並んだ歌詞は、見るたびに彼を何処でもないゴシック建築の並ぶ街並みへと連れて行った。
周囲のもの全てが薄っすらと嫌いだった彼は自分自身と一切交わらない遠い異国の空気を纏ったそのアルバムを愛していた。
社会に出て数年、金曜の夜にくたくたになって帰ってきた彼が突然そんなことを思い出したのは隣室からWelcome To The B