あなたの英語はネイティブ何歳レベル?vol. 7<イギリスの聖ジョージ・デー>
イギリスという国は国民性もさながら、同じ島国なので地理気候も日本と似たところがあり、日本列島が大きく分けて北海道、本州、四国、九州の4つの島から構成されているように、イギリス(グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国)も島でこそ分かれてはいませんが、ウェールズ、イングランド、スコットランド、北アイルランドの4つの地域(country)に分かれています。
これら各地域には、昔から守り神のような「守護神」がついており、本日4月の23日は「イギリスの本州」ことイングランドの聖人をたたえる記念日「聖ジョージ・デー(St George's Day)」です。
聖ジョージって誰?
実は、聖ジョージはイギリス人ではありません。それどころか、イギリスに足を踏み入れたこともなく、ポルトガル、スペイン、ブルガリアにキプロス、ギリシャなど、そのほかの国や地域でも守護聖人、つまり主にキリスト教を信仰する国々で崇められている「みんなの神様」的な存在です。
聖ジョージはローマ兵でしたが、所属していたローマ軍より棄教するよう迫られてもせず、ついには殉教してしまったと言われています。キリスト教信者の多いイングランドでは、こういった信心深い態度や勇敢な行動力などが、当時の王を始め、一般市民にも好意的に受け止められたのではないでしょうか。
この聖ジョージを語るうえで欠かせない逸話は、ジョージの鬼退治、ならぬ竜退治!わが子が通うイギリス現地の学校でも、この季節になると小学2年生(Year3という呼称)より授業で毎年この伝説を習うほどです。
後世にまで語り継がれる伝説の竜退治
この伝説にはいくつかのバージョンがあるようですが、基本的なストーリーは次のようなもの(参照:Barrow, Mandy “The Legend of Saint George and the Dragon” Project Britain 2014.)。
とある町が、悪い竜によって支配されている
若い姫が竜の生け贄にされる
それを聞きつけたジョージが村に乗り込み、見事竜を退治し姫を助け出す
竜が悪の化身とされていた中世のヨーロッパでは、悪い竜をやっつけるという聖ジョージの話はわかりやすい勧善懲悪で、後世にまで伝わるほど人気になりました。
わが子も、ほかの課題で誰か勇敢な人物を描写する時に
as George the brave knight 勇敢なジョージ騎士のように
と書くほど、イギリス、特にイングランド地方ではヒーローとして扱われています。でも、竜と言えば我々アジア人にとっては、むしろ中国といった国の想像上の生き物としておなじみではないですか?
西洋と東洋の竜
イギリスでもそうですが、欧米ではどうやら竜と言えば「炎を口から吐く憎っくき悪者」というのが定番なようで、アジア人が思い浮かべる「不思議でなんだか縁起が良さげな」というイメージとは大きく異なります。
それもそのはず、世界には「西洋のドラゴン(Western dragons)」と「東洋の竜(Chinese dragons)」の2種類が存在するようです(参照: Hua, Sara Lynn“DIFFERENCE BETWEEN A CHINESE DRAGON AND A WESTERN DRAGON” TutorMing China Expats & Culture Blog June 2016.)。
ロンドン市内を歩いていると、この悪の化身とも言える竜をかたどった像や紋章をよく見かけます。これは金融街、シティが採用しているシンボルで、シティの紋章は聖ジョージとシティ・オブ・ロンドンの守護聖人、聖ポール(Saint Paul)の象徴が合体したものです。それだけ聖ジョージの偉業に敬意を払っている、といったところでしょうか。
イギリスの国旗構成
ユニオンジャックの旗が象徴的なイギリスの国旗は、この聖ジョージ(白地に赤十字🏴)、スコットランドの聖アンドリュー(青地に斜め白十字🏴)、アイルランドの聖パトリック(白地に斜め赤十字)の3つの神様の十字架を組み合わせてできています(出典:“Union Jack” The Royal Household 2021.)。ジャックとは船首に掲げる旗のことですが聖ジョージ・デーでは、イングランドの国旗「セント・ジョージ・クロス (St. George's Cross)」 を掲げます。赤い十字は、聖ジョージの血を表しています。
私はまだこちらに来たばかりの頃この旗を知らず、ママ友に「あれは一体どこの国の旗?なんであんなにおっきな旗をわざわざあげてるの?」と聞き、初めてその存在を知りました。
当日の祝い方
ほかの聖人の日が国民の祝日である一方、聖ジョージ・デーは18世紀頃を境に普通の日となったそうです。現代の祝い方としては、イングランド各地で祭りが開かれ竜退治のショーを披露したり、教会や寺院などで聖ジョージの日か最も近い日曜に聖歌「エルサレム」を歌う習慣もあります。
イギリスの伝統ダンスであるモリス・ダンス(Morris dance)を見る機会もあるそうですが、これは聖ジョージ・デーに限らず、季節を問わずほかの祭りでも踊られることがあるようです。
こちら、わが家では意図せず、とある地域の祭りで目撃していました!なにやらおじいさんたちが全身白尽くめで、フォークダンスかはないちもんめみたいなことをしながらのどかに踊ってるなぁ、という印象でした。
当日は聖ジェームスの命日となりますが、この日はもうひとりのある、偉大な著名人の命日および誕生日(仮説)でもあるそうです。それは正真正銘のイングランド人であり、イギリスが誇る劇作家で詩人のウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare)。
シェイクスピアは1616年の4月23日に没しているため、この日はイングランドにとってダブルで記念すべき大切な日となります(参照:“St George's Day: All you need to know about England's patron saint” Euronews April 2016.)。
ちなみに昨日4月の21日はエリザベス女王(Elizabeth II)95歳のお誕生日でしたが、同月9日に夫のフィリップ殿下(Prince Philip, Duke of Edinburgh)が99歳で亡くなったため、2週間は喪に服すことになっています。そのため、ロンドンでの祝砲など例年行われる公式の行事はすべて見送られました。