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まるで夢の中【哀れなるものたち】

息をするのも忘れるくらい
濃くて綺麗で激しい映画

「哀れなるものたち」

Poor things

ヨルゴス・ランティモス監督の映画
           「哀れなるものたち」
みなさんはご覧になられたでしょうか?
ヨルゴス作品ということもあり奇妙で理解することが
間違っているようなそんな作品
簡単に言えば“変な映画”だと伝えられて
鑑賞した私が感じたことは
「何かわからないけど苦しい、けどそれが美しい」
という感情でした

カラーの使い分け

この映画では
前半はモノクロ、後半は様々な色に彩られて
映像が映し出されている
そのため前半は何か重く感じ
少し気持ち悪さも目立っていた。
このカラーの使い分けの意味はエマ・ストーン演じる
「ベラ」の心情や成長によって変わっていることを作中で知ることとなる。

モノクロが目立つ前半ではベラは幼稚で
何も知らない無垢な少女だった。
仕草はまるで赤ん坊のようで、好き嫌いも多く
性による気持ちよさや恥ずかしさ等もちろん
知らない。そんな女性であった。

後半では色付き、赤や青など単色の名前では
言い表せないような様々な色が使われていた。
そんな作中で色付くタイミングはいつか?


それは

ベラが初めて“熱烈ジャンプ”をする時である。


婚約者の元を離れ弁護士と世界を
知ることにしたベラ。
知らない菓子を食べ、様々な人と触れ合い、
熱烈ジャンプ(性行為)をする.…。
色付いたタイミングはまさにベラが言葉通り
大人になった瞬間ではないだろうか?


実は私自身、この映画は星5の満点をつけ
以前記事にしたクルエラに並ぶ映画となった。
何がそこまで魅力的だったのか?
3つほど紹介していこう。


1.目が離せない! エマ・ストーンの演技力

開幕からピアノを覚束無い様子で弾くベラ
話す言葉も、歩くのさえままならない彼女はまるで赤ん坊のようだ
何も知らず間に見れば何か障害を持っているのか?と思う場面だ。
そう思わせるエマ・ストーンの演技力もまた
すごいものであるのは間違いないだろう。
そう、この映画において魅力的に感じる事の1つは
エマ・ストーンの演技力なのである。
初めは赤ちゃんのように
終わりではもう完全なる大人のように
同じ人間があそこまで演じ分けられるのは、
エマ・ストーンの才能だろうと思う。
覚束無い歩き方、口に入れたものを吐き出す動作、不格好なウインク、性行為、等々..…
やれ、と言われて安易にできるような
しかもそれを自然にできるような演技力は正に惚れ惚れとするほどである。

2.美術館の様な映像

哀れなるものたちではモノクロの映像や
逆にカラフルな映像が使われている。
美術館に飾られている絵画のような色使いと
風景に、他の映画とは明らかに違う雰囲気が見て感じられるだろう。
ロンドン、リスボン、パリ、広大な海に浮かぶ豪華客船など、様々な土地や場所を舞台として
奇妙だが美しい映像がまたこの映画を魅力的にさせている。
ランティモス監督は
「本作では、ベラが見て感じるままの世界を創造すべきだと思った」と語っている。
そう思うとこのように他とは違う映像や街並みの作り方にも納得がいく。

3.哀れなる"者"たち

この映画は正にタイトル通り哀れな人物がたくさんでてくる。
まずは肝心な『ベラ』。
彼女は実は元々妊婦だった。だが、ある事情により
この世から去ろうとお腹に赤ん坊を抱えたまま橋から飛び降りたのだった。物語はそこから始まっている。
そんな彼女の死体を見つけたのが天才外科医の『ゴッドウィン・バクスター』
ではその死体をゴッドはどうしたか?
そう、彼女をそのまま蘇生しても生き返りたくないだろうと考え、彼女のお腹にいた赤ん坊の脳みそを彼女に移植し『ベラ・バクスター』という新しい人格を生み出したのである。
元の人格の彼女も、自分の母親の中に入り生かされているベラも哀れな人物なのである。
作中で1番哀れだと思ったのはベラと共に様々な場所を訪れた弁護士『ダンカン・ウェダバーン』
ベラを誘惑し愛人として自分の意のままに操ろうとしていた。だがベラは反発して言うことを聞こうとせず自由に生きている。そんなベラに苛立ち突き放そうとするがダンカンは本気でベラを愛してしまっていた。
が、その頃にはベラも沢山の事実や世界を知り大人になっていく..…
最後には完全に捨てられる存在となるのだが、本当に哀れすぎて笑ってしまうほどだ(失礼)。
1番味があって哀れで作中には必要不可欠な人物がこの『ダンカン・ウェダバーン』だと思っている。

さいごに

この映画、なんなんだ??と頭を抱えるような内容だった。もちろんいい意味で気持ち悪さや人間の哀れな部分や愚かな部分がよく見れる作品であった。
変な動物が出てきたり性的描写が激しかったり、奇妙な色使いであったり。世界観が凄すぎて見ていて自然と息が詰まるような映画だった。
紹介した魅力の他にも、カメラワークや音楽などどこか不安になるような要素がありつつも不自然とは思わせないような世界観の作り方にまで、この映画に魅力は沢山あるのだ。
ジャンルとしてはコメディ/SFの映画であり理解に苦しみつつも楽しく見れる作品であった。
自分自身が観てきた映画の中で1番「結局あれはどうなったんだろう?」が全くなくスッキリする終わり方であった。

ヒトであっても動物であっても
生まれてくればみな哀れな結末に陥るものである。
この作品を見て他人事のように笑っている私もまた
哀れなのである。


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