
創作メモ。米と霞と修験者と
飛び跳ねたい気分だった。米は重いが(3俵担いで180kgぐらい)心は晴れやか。今日で五穀断ちも終わりですたーい♪ 今宵は米の宴だ、何合炊こう。
渓流で米を研いでたらゴンタ(ツキノワグマ、7歳)が寄ってきた。今日のはやらんぞ、そんな目で見るな。今宵の修験者さんは仏に会えば仏を切り、鬼に会えばぶっ飛ばすからね。米はワシのだ。
小屋に戻ると烏天狗がいた。応、火の準備は出来てるぞじゃないよ。何飯食う気満々で他人の家に上がり込んでるんだ。お前は神仙の類なんだから霞を食えカスミを。何? だってコメが美味いんだもん? 全くもーしょうがない奴だなぁ。一膳ぐらいは馳走してやろう。なぁに俺とお前の仲じゃないか。
振り返り釜の前を見ると仁王立ちして妙な迫力出してる大僧正(鞍馬山出身。大天狗)がいた。煮付けと交換? まぁ、いいけど……
てーかさ、天狗が茶碗持って白米食ってるのおかしくね? 霞食うって師匠も言ってたぞ。俺の五穀断ち終了記念を何と心得て……何ヶ月? 半年ぐらいかな?
大天狗は頭を抱えた。五穀断ちとか木食って普通即身成仏する時の修行で半年もやったらミイラだミイラ。なんでそんなに健康的でツヤツヤしてんだ。炊き立ての白米か。大体お前の場合断ち物ではなく食えなかっただけだろが。それは五穀断ちではなく食いっぱぐれだし、それでそんなだっつーのはお前も気付かずこの山の霞(霊山の霊気)を食ってるんだよ! お前片足神仙界に突っ込んでる自覚ないだろ? 普通そこから更に精進して霞食う訓練するんだぞ……
結局三人で一気に一升飯を食った。彼らは同じ釜の飯を食った友人である。白米は美味しいからね、仕方ないね。
未来の自分へ注意書き
白米好きで怪力無双のバカだが験力あり……それはひょっとして小天狗てん丸では……友人の烏天狗が妖怪辞典持ってるとか語尾がガスになるのは全力回避せよ。あと烏天狗とバディ組む系は無しで。今朝の夢で脳内12人委員会に指摘されるまでマジで気付かなかった。
小天狗化を全力で阻止せよ。修験者のイメージ的には花の慶次に出てくる摩利支天のオババの父親みたいないかつい顔した30手前ぐらいの偉丈夫である。
神仙界に片足突っ込んでるから霞も食えるが、片足だから飢えは感じる。この飢えを感じている間はギリギリ人間で、飢えよりも衆生済度の気持ちが高まると完全に「あちら側」の存在となる。これが入定とか補陀落渡海、即身仏。まぁ通常は身体が人間のまま精神だけがあっちに行くので普通は死ぬ。本稿の修験者は50くらいまで普通に加齢してその後に「エターナル50歳」として肉体の加齢が停止、7〜8割まで天狗と化した状態で150年ぐらい生きる。死因は餅。現在は4〜5割天狗や魑魅妖怪の類である。
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