ロボットの脚のハナシ2
前の話
主にガンダム系で用いられる偉大な発明にマルイチモールドなんてものがある。
視聴者側には「ここに関節があるんだよ」というリアリティー上げるためのモチーフとして働き、作画側(アニメーター)には「ここで曲げろ」という指示になる。旧キットなどでは実際ここに関節軸仕込むし、そこで曲がるとアニメと同じ様に動く訳だ。まぁ、機動戦士ガンダム当時はまだ関節構造が稚拙で設定通りにするとビックリするほど関節曲がらないんだけど。
で、関節位置をハッキリさせると、関節間距離を人体に近付けないと違和感を生む原因になる。アニメではMS類は派手に動いて派手に爆散するからね。色々なポーズを取り動かすためにはアニメーターが動かしやすい様に人体に近い方が良いんだ。
ぶっちゃけ、割と最近までロボアニメのロボは人体の素体にメカの意匠を貼り付ける形で作画されてる。その為……
こんな風に膝の構造を大腿側に付けてしもたり、割と細かい作画ミスが結構ある。ガンプラ作ってる人なら分かるよね? 膝当て部分は脛側にくっついてるからこうはならんのだ。
これが何故発生したかと言うと……
ガンダム(RX78)って、実際の膝関節位置より膝アーマーが上下に長く展開していて、見かけ上の膝-足首間の関節間距離を長く見せているのである。
脛が長い方がヒロイックに見えるが、実際長いとしゃがんだり膝立ちした時に不格好になるし、絵を描く側からしたら人体と関節間距離が違うとアタリ取る段階でロボ用の比率にしなきゃならんからめんどくさい。この問題の解消法として膝アーマーを縦長にして「見かけ上の脛の長さを伸ばしてやる」と言うテクが生まれたのだが、先のイラストでは実際の膝関節位置でガッツリ曲げて、膝上モールドは大腿側やなと「ひん曲げて描いた」のである。
で、このお作法を忠実にトレースして見かけ上の身体バランスと実際の身体バランス崩しまくったのがZガンダムでMSデザインのフィニッシュを手掛けた藤田一己である。
略歴見たら分かるが、藤田は元々ボトムズでアニメーターとして一枚なんぼのアニメーターをしていた。そこから富野監督に見出されてZのメカデザインに抜擢されたのだが……Zガンダムのデザイン作業が行われていた頃、藤田はハタチそこそこの年齢なのである。(1964年9月生まれ。Zのメカデザインは放送前年の年末ごろに永野護が抜けているので、藤田参加は1984年年末ごろになる)
で、この藤田だが……見かけ上と実際の関節位置をズラすのが天才的に上手い。もはや詐欺師のレベルである。
更に、ある程度絵が描ける人は脛をちょっと湾曲させるのだけど……
藤田はメカデザインとして正面から見た脹脛張り出しのボリューム弄ってこの「なんとなく湾曲させた方が自然なんだよ判れよ!」欲を立体構造に落とし込んでいる。
なお、リバイブガンダムMk-II
実はガンダムMk-II、流行りの脛長デザインに見せかけて、実際の関節間距離比率は人体に近いし、Mk-IIはきちんと古典的な構造を遵守しているのである。勿論Zガンダムも見かけ上すんごいバランスで新しいデザインに見えるのだが……
表層的なモデルバランスはすっごく「新しい」形に見えるのだが、関節や各部の位置関係考えて内部バランス見るとちゃんと人体構造入っているし、見せかけだけ凄い脛長にしてるんである。そしてあまりにも先進的な「新しい」デザインに見えてしもたんでZガンダム以降のガンダム系列デザインはZの見せかけ上のボリュームバランス(上半身が小さく、ヘソ下から股間までが長くて大腿部が小さく、脛が長い)の劣化コピーが蔓延した。
しかしバンダイは永野護や藤田一己と言う若い才能を割と邪険にして追い出してしまい、可能な限り大御所起用したがり、若手はデザインぶっ壊されても大人の対応する「残念な人」を多用する。
そらまぁ過去の大実績でデカい顔する人が2002年頃まで居ましたからなぁ。社内的に実績重点、新しい才能に重きを置かない体制だったのであろう。その後もなんかポエミーな方がいらっさった様で。
ガンダムのデザインに於いて、関節間距離と見かけ上の各部長さは一致しない事が多く、なんならZガンダム時代の奇才 藤田一己によりこの傾向は極大化してその影響力によりガンダム系のデザインは盛大に歪んで行く事になる。元のデザインが歪んでいるのにプラモ化の際に変なアレンジ加えるのだから、そりゃーもー、ね。
あー……
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バンダイ側のオーダーがどうか知らないが、この辺カトキさんイマイチよね……
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