東京旅/03
高円寺のジロキチさんを出たときには、辺りはすっかり夜だった。深夜帯、とでも呼べようか。
わたしは宿に戻らなくてはと、すぐ近くにあるJR高円寺駅まで歩いた。
ところが、なんと新宿行きの路線のほうが止まっていた……友人は「暑いし新宿からタクシーに乗るね」と言っていたので、新宿を経由していたことは間違いないのだが、困った。
「品川まで、どうやって行けますか?」
わたしは駅員さんに訊いて、耳が不自由だからメモが助かると伝えて、書いてもらえた。
仕事なんだろうけれど、都会の人もそう冷たくはないものだ。
思えば、遠恋をしていたときもそうだった。困ったわたしは、駅員さんにお願いをしたんだった。
彼とは別れて、違う男性とわたしは結婚したが。
品川駅にたどり着けば、あとは歩きで宿に向かうのみである。サイン本を3冊もかかえて、わたしは品川駅まで電車に揺られながら到着した。
何時くらいに落ち着けたのかわからないが、わたしは着替えを済ませるなり、メイクも落とせないまま、ベッドで寝こけたのだった。
買ってきて冷蔵庫にしまっておいたコンビニおにぎり? は、疲れていてあまりお腹が空かなくて、真夜中になってから食べた。
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