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アイモビーグ

わたしは酷い片頭痛もちだ。
ここから先は、食前・食中・食後に読むのは、おすすめいたしかねる。


耳慣れない名前の薬だと思う。
それもそうか、──新薬の部類に入るから、なおかつ保険適応してもそれなりに薬価も高いし、仕方ないといえば仕方ない。

わたしはこの注射を、ひと月に1回打っている。
先日、4度めを打ったばかりだ。
しかし、予防薬(本来なら片頭痛予防には使われない内服薬)を飲むのは欠かせないとはいえ、頓服である鎮痛剤を使う回数は目に見えて減ってきた。
アイモビーグ様々である。

わたしは治療データを提供する代わりに、このアイモビーグを安価で使わせてもらっている。
データがたくさん集まれば、薬価もいつかは下げられる日がくるだろうし、きてほしい。


わたしの片頭痛発作は、10代にさかのぼる。

その日の夕食はすべて戻してしまい、鎮痛剤を打ってもらっても効かない頭痛が頻繁に起きはじめたため、精密検査をしたが、異常は何もなかった。
CTスキャンには骨などくらいしか映らないのだから、まして血管の微妙な膨らみ具合や、それが周囲の神経に及ぼす影響なんて、まだわからなかった頃のはなしだから、特にそこがヤブ医者だというわけではない。
時代の流れというものである。

そこから、片頭痛に効果的な薬ができた。
しかし、当時は医師が注射することしかできず、内服薬はまだ存在しなかった。
鎮痛解熱剤によく含まれるサリチル酸の過敏症になるまでは、それで痛みを何とか散らしたりしていた。

やがて月日は流れ、予防薬と鎮痛剤が飲めるようになるまでに、医学は発達した。
しかし、本当の意味での戦いは、そこからだった。

片頭痛が悪化を始め、どんな薬を飲んでも駄目になってきたのだった。おさまっていた随伴症状としての嘔吐も、それなりの頻度で起きるようになった。
いまの主治医に出会ってからも、起きることも動くこともできず、とにかく涼しい部屋で真っ暗な中、静かにしているしかなかった。

予防薬の分量を増やしても変わらない。
ふさぎ込みがちなわたしに、主治医は「よかったら、注射をやってみないか」と持ちかけてきてくれた。
それが、アイモビーグだ。

アイモビーグによる治療を始めて、4ヶ月。
わたしのQOLは、劇的に改善されつつある。

本来は高価な薬なので、1回だけで辞めてしまう患者もいるし、3回打って改善されない片頭痛であれば、治療の中止も視野に入れなくてはならなかったりと、まだまだ問題は山積みだ。

きょうも朝から雨だというのに、片頭痛はない。
アイモビーグがもっと普及してほしい、使いやすい薬価にまで下がってほしい。

わたしはそう願いながら、来月も主治医に会いにいく。

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