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はじめてのnote│22歳とピンク

ピンクのブラウスと、ピンクのスカートを買った。

それだけのことなのだが、初めてnoteを書いてみようと思った。

何がきっかけだったかは覚えていないが。
なんとなく、私の中ではピンク色というものはこと禁忌であった。勘違いしないで欲しい。悪であったわけでも、呪い、トラウマがあったわけでもない。
けれど漠然と、「可愛いらしく」「キュート」なピンクは自分には似合わないという思いが中学生頃から芽生えていたように思う。

私という少女は、可愛いをどこまで己に許していいか分からなかったのだ。可愛いとは、大きくなるにつれ卒業するべきことであり、私はどちらかと言えば当時思い込んでいたステレオタイプの「可愛い」である、守ってあげたい小動物のような雰囲気とは無縁だったので。

モノトーン。紺。グレー。茶色。たまに差し色にロイヤルブルーやハッキリレッド。そんな格好をしていた。そしてそれが、実際よく似合っていたのだ。

幾年かが経ち、成人して酒の味を覚えてもへべれけにならぬまま迎えた今年。ロリィタのお友達が出来た。
初めて人が身に付けるキューピッドピンクのメルヘンキュートなファッションをみた時、心の底から可愛い!と思った。
ロリィタ服のお店も一緒に見た。
高校時代、ゴスロリの方のお店に親友のソウルメイト氏と行ったことはあったのだが、甘めの方のロリィタをしっかりまじまじと見るのは初めてだった。
ロリィタと一言に言っても、ヨーロッパ系もあればチャイナ系もある。彼女曰く私は皇子系が似合いそうだとも言ってくれた。
キュートな彼女の勧めで、お店のアプリをインストールした。

それからたまにスマホに新作などの通知が来ては、眺めていた。可愛かった。

ここでしばしの月日が経つ。
私は、会社に着ていくブラウスが欲しくて、Twitter(現X)で以前、オフィスファッションに良いと話題になっていたハニーズのオンラインストアを揺蕩っていた。

前述の通り、私はモノトーンやそれに近いコーデが好きだ。職場にも、白いブラウスに紺のタイトスカートやスラックスを合わせていた。
だから今回買うのも、白やベージュなんかのつもり満々だった。

お盆前だからかセールがやっていて、セール品を中心に眺めていて、ふと上品なタイ付きブラウスをタップした。カラー展開の中に、ピンクがあった。可愛かった。淡すぎず華やかすぎない、サーモンピンク。

直感的にいいかもと思った。ついで、そういえば二年ほど前に友達と受けたパーソナルカラー診断では、私は朝焼けみたいな柔らかなオレンジとサーモンピンクが一番似合うらしかった。さらに、そういえばバースデーカラーなるものもシェルピンクだったと思い出した。

いいんじゃなかろうか、ピンク。

と思ってカートに突っ込んだ。サイズと数量に間違いがないか確認して、決済した。ほとんど余計なことを考えないで、買った。

その日のうちに発送されて、次の日帰宅した玄関前に置かれていた。ハニーズ、いと早し。シャワーを浴びて、夏にまいった体をさっぱりさせてから、ブラウスに袖を通してみた。

想像よりは、くすんだピンク。どちらかと言えば小豆色に近い。直線的なシルエット。肌当たりがいい七分丈の袖。サイズはぴったり。
鏡で見てみた。よく似合っている気がした。
面倒くさがりの私なので、室内灯をつけず窓からの西日の中でぼんやりと鏡と目を合わせていた。

脱いで、ブラウスを畳んで置いた。お盆休み前の最後の出勤日、明日の金曜日に着ていこうと決めた。

可愛い。
可愛かったから、顔を出した衝動と欲があった。

前に例のアプリの通知で来て見かけた、フェミニンなスカート。
上品な可愛さで。レース素材、ピンクから足元へかけてのグラデーション。

勇気、とはちょっと違う。
説明が難しいのだが、悩んだ時間はあったもののやっぱり手に入れたいという気持ちがあったのだと思う。
住所を入力しながら、私は、無意識のうちに自身の『可愛い』に限界を設けていたのだなと思った。もったいないことだった。環境要因から、同年代の子供よりもはやく大人にならなければいけなくて、あまやかで無邪気な色合いを捨てていたような気がする。
可愛い、という字のとおりに、もう少し私は私を「愛することをよいとして許す」ことにしようかな、と思った。

今日は、ブラウスを着ている。着心地もよくて、腕の肌と布地の境目を何度も眺めて浮わついた気分でいる。
このスカートは、予約商品で九月上旬に届く予定だ。ピンクをひらめかせて美しく纏う晩夏が、楽しみである。


あまい 2024/8/9




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