曖昧模糊なる四字
日本語が好きだ。日本語に限らず、音のならびが意味を与えることが好きだ。単語と単語の組み合わせで、さらに美しさが増す時、心が震える心地になる。感極まって泣く。
そんな私の、好きな言葉を今回はひとつ語らせていただこうと思う。
曖昧模糊という四字熟語をご存知だろうか。
私はこの言葉が好きだ。
きっと自ら文字を書く方ばかりなのだから、この意味をご存知の方が大半であろう。
いやいやまずは、先入観なしで口に出して読み上げてみましょうよ。
「あい・まい・もこ」
どうにも不思議で楽しげな響きではなかろうか。
「あい・まい」で右往左往し、なにかを掴みかけた瞬間に「もこ」。
今しがた確かに掴んだ!と思ったそれが、まるで指から煙のように抜けて溶けていく。そんな感覚がして、私は非常にうきうきと好ましいと思うのだ。
さらに、英語の授業で「わたし」を意味する人称代名詞をリズミカルに読み上げた経験をお持ちの方は「アイ・マイ・ミー・マイン」を連想したりしたのではなかろうか。
あの、初めての言語に触れるワクワク感。
日本語なのに、外国語のような響き。うやむやな音の羅列。四字熟語でもめったに使われないミステリアスさ。なんと魅力的か。
さて、ようやくここで曖昧模糊を辞書で引いてみれば、「ぼんやりしている様」とのこと。「曖昧模糊とした状態」と例文に載っていたが、これならば「ぼんやり」と書き示した方が読みやすく、意味も汲み取りやすく、何より書くのも簡単!
この一筋縄ではいかないじゃじゃ馬さもまたいい。
どうだろうか、曖昧模糊。
もしこの機会に興味が出たというのなら、ぜひこの言葉を使ってみて欲しい。言葉とは、使うことがなければいつか消え去っていくかもしれないのだから。
あまい 2024/10/4
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