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孤独の真っ只中で、孤独から逃げ惑っていた

孤独が恐くてたまらなかった
けれどずっと、孤独だった
孤独に苛まれてきた人生だった
ひとりぼっちになんか、なりたくなかった
自ら求めるわけがない
一緒にいたかったのに、いさせてもらえなかった
私を気に入らない“ある一人”が大きな影響力をもって周囲を巻き込んでいき、私は孤立させられる
仲間外れにされる存在であるという事実が悲しかった
人並み以下という烙印を押された自分が情けなく、恥ずかしかった
大勢の人がそれぞれに溜め込んだ鬱憤
それらが捌け口を求め、悪意となってひとりぼっちの私に向かって一斉になだれ込む
きっとその人達も自分より強い誰かから悪意を受け取らされてしまったのだ
悪意は、強い立場から弱い立場へと流れていく
自分で消化出来なかったストレスを私で発散した人達は満足そうに笑い、
私はひとり涙を流した

孤独を選べる強さ
それは何も感じない心ではない
感情ではない
感情を失くせばいいということではない
知性である
知性でなければいけない
相手に迎合せずにいられること
私という存在を蔑ろにする集団の価値を、私自身がちゃんと判断できる知性である
自分の感情を殺してばかりいる日々から抜け出す方法を考えるべきだった
そこには“孤独になる”という選択肢もあることに気付ける知性
孤独への恐ろしさから自分を殺すことで払う羽目になる大きな代償を予測できなければいけなかった
わざわざ自ら進んで理不尽なことに服従する訓練を積むことの愚かさを
知るべきだった
逆らわぬことを良しとする感情に流されてしまうことを防ぐべきだった
自分の居場所は自分で確保すること
一人であったとしても、孤独であったとしても、
居心地のいい場所は作れたはず
誰かに縋ることばかり考えていた
自分の居場所を誰かに作ってもらえるものだと思っていた
いい子にしていれば、利用価値のある人間として認められれば
「ここにおいで」と、いつか誰かがそう言ってくれるものだと思っていた
都合のいい人間になるために必死に忠誠を示し、尻尾を振っていた
他人や自分自身に自分を殺させないためには、孤独を恐れずむしろ積極的に受け入れられる知性が必要だったのだ
妥協して我慢するのではない むしろ意欲的に、前向きに受け入れるのだ
いざ孤独に直面した時、すでに心の準備が出来ている状態
私は私らしくありたいから、そのためにこの意思を貫くんだという
自分への意思表示

ただ耐えるだけでは何も変わらない
耐え続ける限り、受動的であり続ける限り、何も変えられない
意志を持つべきだった 大切なのは志
正しく能動性を発揮するために
自分だけではなく、相手を正しく分析出来る知性

“感情は煽られるが、知性を煽ることは出来ない”
この言葉をいつどこで聞いたのか、憶えていない
でも、この言葉を聞いた瞬間のハッとした自分の心の動きを鮮明に憶えている
孤独を恥じる感情ばかりに埋め尽くされていた
ひとりぼっちが恥ずかしくて
私はいとも簡単に屈したのだ
愚かな私はその感情に屈し、それほどの価値も権利もない人間達に
自分を差し出した
服従のしるしとして、自分を余すところなく明け渡したのだ
こうなる前に、孤独に価値を見出さなければいけなかった
知性によって
恥ずべきことではないと「わかる」こと
自分自身が孤独を望もうが望むまいが、それが事実として恥ずべきことは
何もないとわかること
それは強がりでなく、理論武装するためのものでもなく
ただ孤独な自分を心から肯定するための
雁字搦めの自意識から解放されるための?
知性があれば、ネガティブな感情を受け止めた上で、
理性的な対処が出来るはず
孤独でなくなるためには?ではない
孤独を感じなくなるためには?ではない
ただただ孤独であることの価値を知る

他人との間に干渉され過ぎない空間を持っておける能力
迎合せずにいられる能力
一人一人がきちんと孤独という空間を持っていなければ、一気に流れていく
膨大な悪意が勢いに任せて、流れ込む
止めることが出来ない
自分が属している集団が何か間違った方向に突き進んでいる時、たとえば「いじめ」というものが起きている時、
自分が仲間外れにされるのが怖いから「いじめ」に加わる人がいる
孤独を恐れ、間違っていると知りながら加担してしまう
私は、加担した
私は私自身へのいじめに加担した
いじめられっ子という形でも構わないから、と
疎外される存在としてグループに属した
傷つけられ、ヘラヘラと笑い、媚びへつらって
すでに仲間外れにされているのに、孤独の真っ只中で孤独から逃げ惑っていた
疎外され、孤立させられながら
それでもなお、ただただ必死にしがみついていた
仲間外れは嫌だった
孤独が恐ろしくてたまらなかった
孤独である自分を受け入れられず、向き合うことすら拒否していた
だから私はずっと、ずっと、孤独だった
「孤独」というものを本当に知ることによって、孤独との向き合い方に変化が訪れる
受動的状態から抜け出すためには、“孤独である自分”について自分が自分に説明できる状態になること
孤独でいるとどんな感情が生まれてくるのかをひとつひとつ
それらの感情がどんなふうに、どれだけ精神に影響を及ぼしているかをひとつひとつ
網羅することは出来ない、けれど一つでも多く知ることで説明はより説得力を持ち、私は能動的状態へと一歩近づく
自分の感情が持つ力を認識する能力を持つことで、
それをどう捌くかの判断がよりしやすくなる
何が何だかわからないままに精神が感情に振り回されるという事態を防ぐ術を獲得していく
“孤独”という観念を辞書に載っている説明文としてではなく、自分の言葉において出来るだけはっきりと形成することで精神が受ける感情からの影響を小さくしていく

孤独とは静寂である、平穏であり、自由であり、足るを知ることである

私にまともな知性があったなら
恐れずに、孤独を選べたはずだった
殻に閉じこもるのでもない
独りでも、真っ直ぐに立っていられること
孤独に陥るのではなく、選び取ることが出来ていたのなら
最初からは無理だったとしても、どこかの時点で受動的である自分を脱ぎ捨てることが出来ていたなら

本当に自分が望むものは、ただただ素朴な一日、それだけで
打算や思惑のない今日一日
清掃をして、炊事洗濯をして、運動をして、読書をして終える一日
もし贅沢を言えるのならば、極力人と関わらずに出来る仕事を持ちたかった
働きたい
孤独であっても、誰かの役に立ちたい
そういう能力を持った人間として自立出来ていれば、私は心置きなく孤独を愛せたのだと思う

いや、誰かの役に立ちたいということは、言い換えれば“誰かに必要とされたい”ということにならないか?
それはやはり孤独ではいられないということではないか?

孤独は恐ろしい
騒々しく、不穏であり、窮屈であり、不満だらけ
足るを知らないから
本当の意味で孤独を愛せていたら、どんなによかっただろう
孤独とは?
孤独の価値とは?
わからないのに愛せるか?
私は何一つわかっていないのだ

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