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怖い話【 中古車解体屋 】

※ 初めてのお読みの方は【はじめに】をお読みください。


車というのは使わなくなったら、次にほしい人に売ります。

でも、もう売れなくなるくらいボロボロになったらどうすると思いますか?

じつは車の解体屋さんで、バラバラになります。

バッテリー、タイヤを外し、次にシート、内装を外す。

最後に、大きなプレス機で車を丸ごと上からグシャグシャグシャと押しつぶす。

すると高さが30㎝くらいの、金属のかたまりになる。

こうやって、車は金属としてリサイクルに回されます。

しかし、解体屋さんに運ばれてくるのは古くなった車だけじゃない。

事故を起こしバキバキになった車や、中で人が死んでしまったいわくつきの車も運ばれてくる。

その1

事故を起こした車は、ひと目見れば分かる。

車が凹んでいたり、グシャっとつぶれている。

人が死んでいるやつは、運転席やとなりの席が血まみれだからすぐ分かる。

ヒビの入ったフロントガラスに、髪の毛が何本もささっているやつもある。

思いっきり頭をガラスにぶつけたのだろう。

事故の衝撃はものすごく、体がバラバラになる。

シートを外したり、足元のマットを外すと、手や指が出てくる。

靴が落ちていたので拾ってみると、中に足が入っている。

体の一部が車内に残ったまま運ばれてくることは、よくある。

その2

ある解体屋さんでの出来事。

まだ入社して間もない新人Aさんの話。

午前中にトラックが到着する。荷台には普通の中古車が載っている。

いつもと違うのは運転席に髪の長い女の人が乗ったままだということ。

なにやらうつむいて、暗い感じだった。

(ひょっとして、持ち主かな?)

大事にしてきた車とお別れするために、わざわざ付いてきたのだと思った。

トラックから車が下ろされ、分解が始まる。

バッテリーを外し、タイヤを外す。

イスを外し、内装をはがした。

奇妙なことに、女の人はまだ車に乗ったままだ。降りてこない。

(いくら車との別れが悲しいからといって、そんなことあるのか?)と思った。

とうとう車はプレス機の下に来る。

プレス機の板が下りてくる。

女の人はまだ車の中だ。

さすがに「ちょっと待ってください。」と、機械を動かしている先輩に声をかける。

「なに?」

「女の人が乗ってます。」

それを聞いた先輩はすぐにプレス機を止めた。

そして事務室からお椀いっぱいの塩を持ってくると、車にパっパっとかけ始めた。

「おーぃ。みんな集まれー。」と声をかけ、みんなの肩に塩をパラパラとかける。

そうして、手を合わせて「ナンマンダブ、ナンマンダブ…」と唱えた。

はじめから車に人なんて乗ってなかった。

車の中で自殺した人の怨念が、そこに残っていた。

一見普通の車でも、霊がついてくることはよくある。

そのままプレスにかけてしまうと、呪われてしまうこともあるので、必ず塩と念仏で供養するのが解体屋さんでのしきたりである。

その3

次は新人Bさんのお話。

その日は事故車の解体だった。

正面から突っ込んだようで、前の部分はぺしゃんこ。

運転席側のガラスは、円形にひび割れている。

血が大量についているから、思いっきり頭をぶつけたのだろう。

シートも血だらけで、足元のマットを取ると案の定指が3本、親指、人指し指、中指がちぎれた状態で出てきた。

分解の前に、お祓いが始まる。

車にパッパッと塩をまく。

みんなの肩にも塩をかける。

そして、「ナンマンダブ、ナンマンダブ…」と念仏を唱える。

しかしBさんは幽霊なんて信じてなかったので、「あ~はいはい、ナムナム。」と念仏も適当だった。

その車の解体が始まる。

シートを外し、内装を外している時だった。

運転席側のドアを大きく開けた状態で、Bさんが作業をしていると、突然運転席側のドアがバタンっ!と閉まった。

ドアの間にはBさんの人指し指が挟まれていた。

「いってー!」

Bさんがビックリして車の中を見ると、まったく見たこともない、知らないおじさんが運転席にいた。

目が合うと、そのおじさんは口をニンマリとして「あぶないよぉ。」と笑った。

そのおじさんが、ドアを思いっきり閉めたと分かった。

声を聞いた先輩がかけ寄ってくる。

ドアを開けると、Bさんの指は軍手ごしにだらんとしている。

軍手をゆっくりはずすと、完全に骨からちぎれていて、肉だけでつながっている状態だった。

Bさんは激痛もあったが、そのおじさんへの怒りが収まらず、

「おい、てめー!」

と運転席へつめよる。

すると先輩が肩をつかんで止めに入った。

「お前、なにか見えてるのか? こいつはそうとうヤバいやつかもしれん。もう関わるな。」

そう言われて、すぐさま救急車で病院に向かった。

しかし、Bさんの指は結局元には戻らなかった。

車の中で死んだ人は、自分の指と離ればなれになった。

だから、おなじ境遇の友達が欲しかった。

Bさんは車のお祓いの際に、念仏を適当に唱えてしまったから、幽霊につけいる隙を与えてしまった。

お祓いの際はしっかり「ナンマンダブ」と声に出したほうがいい。

さもないと、あなたの体のどこかを幽霊は持って行ってしまうよ。

おしまい

【 元ネタ:語り部 】

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