怖い話【 医大生の練習台 】
※ 初めてのお読みの方は【はじめに】をお読みください。
お医者さんは手術をする。
しかし、最初はお医者さんも練習をする。
なにで練習するのかと言うと、本物の死体を使う。
死体は生前お医者さんや、病院の関係の人だ。
死ぬと医学部のある大学に運ばれる。
そして手術の練習台になる。
とはいえ、死んですぐに練習台になるわけじゃない。
なぜなら生徒の授業に合わせて行われるから。
それまでの間、大きな水槽にホルマリンという液を入れて、そこに死体を入れる。
ホルマリンに漬けておくと、体が腐らない。
だけど、しばらくすると水面に体が浮いてきてしまう。
空気に触れると体が腐ってしまうので、死体を棒でつついて底に沈める作業が必要になる。
これはある医学部でのお話。
ある夜に練習台の死体が運ばれてきたので、ホルマリンの水槽に入れる。
死体は知らないおじいさんだ。
死体は2時間おきに浮いてくるので、この日はある大学生が、夜の間棒でつついて底に沈める役になった。
夜中の2時ごろだ。大学生は浮いてきた死体を棒でつついて底に沈める。
トイレに行きたくなったので、教室を離れ、トイレに行く。
戻ってくると、ホルマリンの水槽に漬かっていたはずの死体がない。
床は液体でところどころ濡れて、出口の方へと続いている。
(え!?)と思って、教室を出る。
薄暗い廊下の先からピチャ、ピチャと音がする。
目を凝らしてみると、水槽に漬かっていた死体のおじいさんだ。
ゆっくりゆっくりと体を揺らしながら歩いている。
そしてグルンと振り返ると「だ~れ~だ…。」と言うと、さっきよりもはやい速度でピチャピチャピチャと向かってきた。
大学生は慌てて、教室に戻り、掃除道具が入っているロッカーの中に入った。
ガタガタと体が震える。
教室に入ってくる足音が聞こえる。
ピチャ、ピチャ。
ロッカーの中の大学生は(どっか行ってくれ、バレないでくれ。)と願う。
しかし、その足音はゆっくりとロッカーの前で止まると、扉のところにビチャと手をつき「見つけた~。」
次の日、ロッカーの中で死んでいる大学生が発見された。
手術の練習台になるはずだったおじいさんの死体は、未だに見つかっていない。
夜になると、この近くをピチャピチャと歩いているかもしれない。
おしまい
【 元ネタ:語り部 】
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