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怖い話【 コンコンコン 】

※ 初めてのお読みの方は【はじめに】をお読みください。

東京に男性3人がいて、登山に行くことになった。

頂上まで行って、下りてくる最中に霧に包まれる。

男たちは、道に迷ってしまった。

そうしているうちに陽も沈み、辺りは暗くなる。

よく見ると下の方に明かりが見えた。

男たちはこれは家の明かりだと分かり、そのまま明かりの方へと下って行った。

そこには村があり、何件もの家が建っている。

しかし、明かりが点いているのはその一軒だけだった。

そして、男たちは玄関の扉をたたく。

コンコン

「すみませ~ん。」

しかし、人の気配はあるものの返事がない。もう一度叩いてみる。

コンコンコン

「どなたかいらっしゃいませんか~。」

やっぱり返事がない。

どうしたものかと思ったが、ダメもとで明かりが点いていない家も訪ねてみようと歩きはじめた時、

ガラガラ…

と玄関の扉が開いた。

出てきたのはおじいさんだった。

「ああ、良かった。実は登山の途中で道に迷ってしまいました。申し訳ありませんが、一晩泊めさせていただけませんか?」

と言うと、おじいさんは

「それはそれは、どうぞお上がりください。」

と家の中に入れてくれた。

家の中にはおじいさん、おばあさん、娘さんがいた。

その晩は男たちは2階に、そしておじいさん、おばあさん、娘さんが1階で寝ることになる。

深夜2時ごろの事、突然「ギャ――――!」という悲鳴声があがった。

男たちは飛び起きて、ドタドタと1階に降りていく。

すると玄関の扉が開き、娘さんが肩からお腹にかけてザックリと何かに切られて死んでいた。

「大変だ!救急車、あと警察!」

と男たちが騒いでいる横で、おじいさんとおばあさんはなぜか冷静だった。

「あぁ、とうとう。」と言いながら、どことなくあきらめた表情をしている。

あまりにも冷静な態度を不審におもった男たちは、

「どうして、救急車を呼ぼうとしないんですか?」と聞くと、

おじいさんは「はぁ…実は、」と昔話をはじめた。

つい数年前までこの村にはたくさんの人がいた。

ある冬、そこに住むおばあさんの一人が病気にかかってしまった。

顔にブツブツができる病気だった。

最初のころは家に閉じこもっていたが、病気に耐えられなくなったのか、ひとつの家に向かった。

コンコン

「助けてくれ~、助けてくれ~。」

おばあさんは何度も頼み込む。しかし、村の人は病気がうつってしまうのを恐れて、玄関を開けようとはしなかった。

おばあさんは、となりの家、となりの家へと助けお求める。

コンコンコン

「助けてくれ~、助けてくれ~。」

それでも、誰も助けようとはしない。

おばあさんはとうとう怒ってしまって、家から鎌を持ち出し、玄関の扉に向かって叩きつけた。

ガンガンガン!

「恨んでやる、呪ってやる~。」

おばあさんは村の家中の玄関を鎌で叩きまくった。

次の日、そのおばあさんは雪の中で死んでいるのが発見された。

それから半年くらいたったあと、奇妙な事件が起き始める。

玄関の扉を開けると、鎌のようなもので切り裂かれ死んでしまうというものだった。

村人たちはすぐに気がついた。

これはおばあさんの祟りであると。

たびたびこのような事件が起き、またひとり、またひとりと村人は村から去って行った。

そして、最後におじいさん、おばあさん、そして娘さんだけが残っていた。

「わたしたちも、娘を墓に埋葬したら村を離れます。」とおじいさんは言う。

それを聞いた男たちは「分かりました。それでは僕たちは明日の朝、東京に帰ります。」

そう言って、次の日には東京に戻った。

3か月後のある日、3人の男の中の一人の所に電話がかかってきた。

「おい、〇〇君死んだよ。」

それは、登山をした男の中の一人だった。

聞くと、ベランダの窓を開けた状態で、頭からお腹までを真っ二つに切り裂かれて死んでいたそうだ。

次の日、登山をしたもう一人の男性が死んだとの知らせが入った。

トイレの小窓から外に顔を出し、首を横にかっ切られて死んでいた。

それを聞いた男はすぐにおばあさんの呪いだと気がつく。

そしてすぐさま、霊媒師のところにかけ込んだ。

そこは、薄暗い部屋で窓がない部屋だった。出入口がひとつあるだけ。そこで男と霊媒師は向かい合わせになっている。

男は今までのいきさつを全て話した。

すると突然出入り口の扉が、コンコンコンとなった。

男は「お客さんみたいですよ。」と言ったが、霊媒師はすぐさま「いえ、これは人間ではありません。」と言う。

そう、扉の向こう側におばあさんの怨霊がいることに霊媒師は気がついたのだ。

扉は何度もコンコン、コンコンと鳴る。

しかし、逃げ場所は全くない。

どうしよう、どうしようと男も霊媒師も慌てる。霊媒師はだんだんと青ざめていく。

打つ手のない霊媒師は手を合わせ、「ナンマンダブ、ナンマンダブ、ナンマンダブ…。」と10回お経を唱えた。

すると扉のコンコンコンはスーッとおさまった。

「もう、大丈夫です。」と霊媒師は言い、扉をすっと開けてみせた。そして、そこには何もなかった。

ここで、残念なお知らせです。

このお話を聞いた人のところには、いつかコンコンコンと扉をたたく音あります。

返事がない時は、手を合わせて「ナンマンダブ」を10回唱えてください。そうすれば、大丈夫です。

しかし、うっかり扉を開けてしまうと、切り殺されてしまいますよ。

特に扉や窓が全部しまっている部屋は要注意です。

また、このコンコンコンはこの話を聞いた人にしか聞こえません。

それは3か月後なのか半年後なのか、本当に気をつけてくださいね。

おしまい

【 元ネタ : 語り部 】


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