田舎一人歩き、popなおじいちゃんの後をつける
グレーにしましま白のニット帽、くすんだ水色のジャンパー、茶色のパンツ、小柄丸顔。
バイト先まで40分かけて歩く途中で現れたお爺ちゃんは、とてもポップだった。
そもそも、ほとんど一本道のこののどかな道で、ふと目を逸らした隙に現れたポップなお爺ちゃんに、目が釘付けにならないほうがおかしいのである。
「このおじいちゃんとどこまで行けるのか試してみたい」
そう思ってしまったからには、歩く時に前に人がいるのが嫌で、さっさと抜かしてしまう派のわたしも、さすがにお爺ちゃんと同じ歩幅で歩くことにした。
それにしても本当にポップなお爺ちゃんである。
今時の韓国アイドルが着ていそうなくすみブルーのジャンパーはきっと、ブルベ冬の人によく似合う。
私はイエベのど真ん中にいるので、ブルベの人が羨ましいのである。
お爺ちゃんは、くすみブルーを着ていても顔色が悪く見えず、とっても自然に着こなしている。
茶色のパンツは、古臭さを感じさせないシルエットで、くすみブルーのジャンパーに合うちょうどいい色味だし、なにより、人間の頭の中でも特に丸みを帯びた頭の形にフィットした、そのニット帽はもう言いようがないくらい最高だ。
天気はひさびさに快晴。空は高く、カラッと乾いた空気は、2人旅にはぴったりではないか。
バイト先までの一本道は、左右に建物はなく、冬にふさわしく土が剥き出しになった畑がしばらく続いている。
どんな仕組みで生えているかわからないが、まっすぐな枝が地面から何本も生えている、扇子のような木の畑を通り過ぎ、柿をついばむ複数のカラスにチラ見されながら、一行(2人だけ)はどんどん歩く。
その瞬間は急に訪れた。
お爺ちゃんは関係者以外入ることを許されないような風体の、舗装されていない細い小道へと曲がっていったのだ。
共に長い旅をした仲だったから、突然の別れは喪失感に襲われた。
なぜお爺ちゃんが曲がる前兆に気付けず、いつまでもこの時間が続くと勘違いしていたのだろう。
いや、今思い返せば、急ではなかった。お爺ちゃんとの別れの前兆はあったのだ。
お爺ちゃんは歩き始めてから、何度か後ろを振り返り、私を確認していた。今思えば、若者にしてはゆっくり歩く私を警戒していたのかもしれない。
それに気付けず、勝手に歩幅を合わせてしまったのだ。
あの時、お爺ちゃんが曲がった道の関係者にお爺ちゃんが含まれるかも、今となってはわからない。
しかし、共に歩いたお爺ちゃんには感謝したい。
マイペースでしか歩けない私が、人と歩いたことで、人に合わせてでしか見えない景色や、冬の空の高さを知ることができたのだ。
この歳になって、人を尾けることで学びを得られた。
長い時間歩いて心も体もぽっかぽかになった。
「いい一日になりそうだ。」
そう思いながら、バイト先に到着した。
以上
p.s
お爺ちゃん。ずっと同じ速度で追ってくるのは怖かったと思います、申し訳ありませんでした。
【12月初ノート】
帰省終わりの広い空が見える電車から