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夜景とは集合してこそ体をなす

一つの疑問


俺はいつも部屋のベランダでタバコを吸うのだが、都会暮らしゆえ夜になるとビルのネオンを楽しむことができる。昨晩もいつも通り何の気なしにそれを見ながらタバコをふかしていたところ、ふと一つの疑問が生まれた。
「高層ビルの上にある赤いライトって、高層ビル群ではどうなってたっけな」
ベランダからは一つの高層ビルが煌々と聳え立つ姿しか拝めないため、少し考えてみることにした。

より高いやつ一つだけに付いたっけ?あれって飛行機が衝突しないためだから、ビルが密集してるところだと一番高いやつがついていればいいもんな。
ということは、より高いやつ一つだけに付いたっけ?
でもそれだと、一番高いビルが停電した時とか危ないよな。
ということは、ある程度の高さのやつにはみんなついてるんだっけな、、、

考えたところで、航空にも建築にも精通していない俺には確固たる答えは出せなかった。
「じゃあ見に行くか」と俺は、パジャマを脱ぎ捨てよそ行き(といってもラフなものだが)に着替え部屋を飛び出した。

現地調査

行く当てはあった。東京には無料で入れる高層ビル展望台があるのだ。それは「カレッタ汐留46階無料展望スペース SKY VIEW」である。
一応リンクを張っておこう<カレッタ汐留 - caretta shiodome>
カレッタ汐留は、(俺が知る限り)東京で一番高い無料展望台である。かつ立地は港区のため、間違えなく高層ビル群を拝めると確信があったのだ。
この時俺は、赤いライトへの好奇心で特に何も思わなかった。が、夜の21時から地下鉄に乗り男一人で展望台の夜景を見に行くなんてみすぼらしくて狂ってしまいそうだ。
と、執筆している今感じずにはいられない。
結果として新たな発見ができたのだから実際行って正解だったのだが、、、
電車に揺られること40分ほどでJR新橋駅に、そこから5分くらい歩くとカレッタ汐留に到着。ここまでナビも使わず記憶力だけで来れた自分を褒めたくなった。
まぁ、それもそのはず。カレッタ汐留は何年も前に、俺が当時ちょっといい感じ(自分評価だと友達以上恋人未満)だ思っていた女子と二人で夜景を見に来た場所なのだ。(駅からの道を歩いていたとき、当時ここで突然雨が降ってきて、その子ととっさに相合傘をしたことを思い出して正直帰りたくなった)
しかしまぁ、いざ現地に着いて展望台行のエレベーター前に立ってみれば、そんな記憶も吹き飛び(本能的に吹き飛ばしたのかもしれないが)赤いライトがどうなっているのか、意識はそこにのみ集中していた。

夜景は集合として体をなす

「カレッタ汐留46階無料展望スペース SKY VIEW」から見えた夜景は、キッパリとその答えを提示していた。

カレッタ汐留の夜景

答えは"ある程度の高さのやつにはみんなついてる"であった。
もっと正確に答え合わせすると
"日本国内において、航空法第51条により地表又は水面から60メートル以上の高さの建造物などには航空障害灯(本記事の赤いライトに該当)の設置が義務付けられている。"
-航空障害灯 - Wikipedia参照-
正直あの時ベランダでググればこんな手間暇かけて確認(あと哀しい過去想起)する必要もなかったな、と思わず苦笑してしまった。
しかし、この時たくさんのビルが同時に赤いライトを付けている本当の意味を理解できたような気がした。俺はここに来るまで複数のビルに赤いライトが付くのは、一番高いビルの予備程度にしか思っていなかったのだが、それは大きな誤りだった。沢山のビルが同時に赤く光る様は、とりわけ個々のビルがそれぞれ存在しているのではなく、一つの大きなビル群という塊がそこに鎮座しているようにしか見えなかったのである。
そう見えたのは、沢山の赤い点の集合が連なって線の様になっていたからであろう。
これなら飛行機からは、地上にビルが群をなして存在していることが分かる。昼間見える実像のビル群と同等の景色を観測できるのだ。一番高いもののみが存在感を放っていても、それは夜景として機能をしないのだ。なんだか、小学校の時に見たスイミーを想起させるような気分であった。一匹では小魚だが、魚群を成すとそれは大魚に見える。(最もこの場合は集まることで虚像を見せているので全く逆の話になるが)
当然、赤いライト以外もそうだ。小さいビルから民家まで、小さな光一つ一つの集合が大都市東京の姿を夜でも観測できるようにしてくれている。恐らく東京タワーやスカイツリーといったランドマークだけが光っていてもそれは東京の景色にはとても見えない。
夜景は集合として体をなすのだ。

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