エミール・シオランの考え方に共感
哲学者エミール・シオラン(Emil Cioran)は、20世紀に活躍した思想家で、「ペシミズム(厭世主義)の詩人」とも称される存在です。シオランの思想は、現代人の抱える不安、虚無感、生きることの苦しさをテーマにしており、特にその絶望的な視点や独特な言葉遣いから、哲学・文学の世界で高く評価されています。以下に、シオランの主要な思想や著作、そしてその影響について紹介します。
1. 生涯と背景
シオランは1911年、ルーマニアのトランシルバニア地方で生まれました。大学で哲学を学んだ彼は若い頃から深い絶望感に悩まされ、眠れない夜に明け方まで街を彷徨うことがあったといわれています。このような体験が後の彼の厭世的な思想に大きな影響を与えました。30代でフランスに移住した後、シオランはフランス語で執筆を始め、生涯をパリで過ごしました。そこで発表した『解体の書』『存在の誘惑』などの作品は、フランス語圏でシオランを一躍有名にしました。
2. 思想の核心:「絶望」と「虚無」
シオランの哲学の核心は、絶望と虚無にあります。彼は人生を「病」とし、あらゆる存在が無意味であると考えました。この視点は、彼が敬愛していた古代ギリシャの哲学者たちや仏教的な無常観に通じる部分もありますが、シオラン独自の視点では「救い」の概念が一切存在しません。むしろ、彼は人生の苦しみを「受け入れる」ことこそが、唯一の選択肢であると主張します。
彼の言葉には、「生きることは絶え間ない敗北であり、死ぬことですら救済ではない」といった厭世的な表現が多く見られます。シオランはこのような悲観主義において、人間がいかに「生」に執着するかを皮肉的に描写しています。
3. 代表作
シオランの代表作としては、以下の作品が挙げられます。
『解体の書(La Tentation d'exister)』
シオランの哲学的考察が詰まったエッセイ集で、人間の存在意義や生への問い、絶望について語られています。『存在の誘惑(De l'inconvénient d'être né)』
「生まれることの不便さ」をテーマにしたこの作品は、彼の厭世観が最も濃厚に反映されています。シオランは、人間が生まれてくること自体が「過ち」であるとし、そこから生じる苦しみを描写しています。『涙と聖人たち(Lacrimi și sfinți)』
若い頃のルーマニア語で書かれた著作で、信仰と絶望の間にある微妙な感情の葛藤が見て取れます。
4. 現代におけるシオランの影響
シオランの作品はその深い悲観主義から、一部では「読みづらい」と言われますが、同時に現代人の抱える「不安」や「無気力感」を代弁するものとして、多くの人々に支持されています。特に近年の情報過多やストレス社会の中で、彼の「無意味の中にある美学」を見出す視点は新しい価値観として注目されています。また、シオランの詩的な表現やユーモアを交えたスタイルは、自己探求や人生の意味に悩む人々にとって、どこか「救い」にも似た癒しをもたらしています。
5. シオランの言葉に触れる意義
シオランの思想は、その絶望的な視点から、一見すると厳しいものです。しかし彼の著作を通じて、人間の「不条理」を認め、受け入れることが、人間にとっての真の「自由」につながるというメッセージが伝わってきます。シオランはこの自由を追い求め、人生を厭わずに生きるための「諦観」という境地に至ろうとしました。彼の思想に触れることは、日常の些細な悩みや苦しみを超えて、「存在」の根本にある本質に迫る旅でもあるのです。
シオランは、人生に対する疑念や哲学的な探求に興味がある人にとって、一度は触れてみる価値のある思想家です。その言葉に触れることで、自らの生き方を見つめ直すきっかけになるかもしれません。
感想
youtubeで哲学系の動画をみていて上記の記事を作成しようと思いました
一人で考えこんでいやなこと辛いことを考えてしまうときシオランの
考え方ですごく救われている自分がいます。
シオランの本も読んでみたいと思います。