美しき迷宮とその記述[3]
【3節】
私は魔導書を使用して魔術と戦技を習得します。
基本魔術は火球です。補助魔術は衝撃波にしておきました。階段の上にいる盾とランプを持つ敵へ、私は火球を投擲します。火球は敵に命中すると、盾を貫通してダメージを与えました。通常は炎を被り体当たりする敵を私は安全に倒せたのです。精神力が回復するのを待って私は階段の途中まで登ります。振り返り火球を火炎瓶兵に投擲しました。火炎瓶兵の1体を倒せました。私は階段を下り精神力が回復するのを待ちます。再度、階段を登ると火球で最後の火炎瓶兵を倒しました。私は少し休憩して、2階に立ちます。徘徊していた曲剣持ちの魔術兵が向かってきました。私は自信を崩さずに応戦します。敵は曲剣を振り下ろしました。私は鳴り打ちをします。精神力は衝撃波ほどの消費です。鳴り打ちは成功しました。敵は鳴動して怯みます。鳴動が敵の身体に拡散して、次に収束します。その瞬間を私は攻撃しました。致命的ダメージを与えるのは成功です。私は呼吸を整えて最後の敵と対戦します。敵の攻撃を待ち、鳴り打ちをしました。鳴り打ちは成功です。敵の怯みを観察して、適時に攻撃します。致命的ダメージを与えました。
私は城壁の内部を制圧しました。屋上に通じる階段の前に立ちます。補助魔術は感覚の向上に変更しました。使用してみると、待ち伏せはありません。頭上も確認しますが、階段の周辺には誰もいませんでした。屋上のクロスボウ兵のうち3体は、城の外を警戒しています。残り2体は、中庭を向いていました。私は階段を登ります。忍び足で屋上を進むと、補助魔術を衝撃波にしました。城の外を向いている3体に衝撃波を放ちます。その3体は、城壁の外に落下しました。中庭を警戒していた2体は振り返ります。私はそちらにも衝撃波を放ちました。1体は落下して倒せます。最後の1体は、横に身を投げて躱しました。私はその敵に戦鎚を振り下ろします。これで城壁の敵は全て排除しました。
私は最初の部屋に引き換して木材を大量に用意すると、城壁に1夜だけ籠城する準備を始めます。基本魔術を結界にする間、敵が補充されてはやり直しなのです。城壁に通じるのは、1階の出入り口2つと、屋上から城の内部に直接通じている扉の合計3つです。屋上と城の内部を繋ぐ扉を開けよとしてみましたが、こちらからは空きません。1応はここも塞ぎます。私は木材でバリケードを作成しました。1夜をこれでしのぎます。
私は昼食を人形と済ませて、夜を待ちました。人形はすぐにではなくてよいので、緑の指輪が欲しいことを私に伝えました。その指輪を貰えれば魔術騎士団との交渉を更に助けるとも名言します。これは約束です。人形に贈り物をすることで更に魔導書などを騎士団に無心できるなら、安いものでした。私は金銭の貯蓄をすることにします。
その夜も明けました。基本魔術を結界に変更した私は城壁を封鎖します。
私はその日のうちに中庭の探索をすることにしたのです。2つ目の門に近づいて奥の塔を見つめると、手前の広場に人の動きがあります。よく見るとそれは忌み子でした。その忌み子の年齢や性別は諸事情で記述しません。忌み子とは魔族と人類の混血児です。騎士団や戦士団、魔術師団には時々見かけるのですぐにわかりました。それらの団体には天吏族の末裔もいますが、忌み子だけは迫害されています。天吏族の末裔も人類との混血ですが、魔族とのそれとは待遇が違いすぎるのです。広場に見える忌み子には特有の角も見えます。その忌み子が桶を持って広場の井戸に近づいていました。忌み子は井戸から水を汲みます。水を桶に注ぐと忌み子は奥の塔に帰りました。私はその忌み子を観察しています。私が背後に何かの羽ばたきを聞いたのはそのときです。私は振り返る。
それは羽毛が着地するように降り立ちます。眼の前には黒い羽根の天吏族がいました。その後ろには先程攻略した城壁があります。2メトルの身長に、黒いローブと魔術紋様のある革鎧です。片手には2メトル半の長さの柄をした鉈を持ちます。その鉈の刃は、前方向に30度の屈折があります。告死の神が持つ鎌にも似ていて、それをより機能的にした形状です。反対の手には小盾を備えていました。背には黒い羽根があります。黒い戦乙女です。それは私へ嘲笑しました。私は2つ目の門からそれを観察します。堕天吏です。太古の昔に、大規模な堕天が起きたそうですが、その流れをくむ魔族でした。天吏族は転ばない。天吏族は堕ちるだけです。私は結界を設置する基本魔術のままなの後悔しました。戦乙女は鉈を手に私へ歩み寄ります。私はそれを待ち構えました。射程距離に入ると、私は衝撃波を放ちます。戦乙女は回転跳びをしました。天吏族は固有の能力として転ばないのです。それを無理に転ぼうとすると、その血の加護で1瞬の無敵とともに立ち直るのです。衝撃波はその無敵で避けられました。敵の鉈が来ます。私は咄嗟に跳びました。私は天吏族ではありません。私は転びました。階段で転ぶほどのダメージはありません 。それよりも起きあがる手間は厄介です。私は起きあがろうとする数秒で鉈の攻撃をくらいます。かなりのダメージです。私はあと1発の攻撃で死亡するのを理解しました。私はせめて1発の攻撃をこちらから与えようと、戦鎚を敵に振りました。戦乙女は鳴り打ちをしたのです。私はあ然としながら怯みます。鳴動が収束する瞬間に、敵は攻撃を入れました。私は致命的ダメージを受けて赤い砂となります。その間際に戦乙女の相貌を近くで見ました。高い鼻に赤紫の口紅です。鋼鉄の目隠しをしています。私はそれを見ながら死ぬのです。「美しい」。私は戦乙女の嘲笑を聞きながら死亡しました。
黒い大壺を使用して、最初の部屋に復活地点を移動させました。
私は1夜して基本魔術を障壁にします。火球も私は考えたのです。検証として私は松明を片手に戦乙女へ挑みました。魔族は本能的な行動や考えが希薄なのでいつまでも戦乙女は中庭にいます。何度か挑み検証すると、戦乙女の持つ小盾に火炎耐性を確認しました。火球は燃費も悪すぎるのです。1発投げると精神力の回復を待つ必要があります。その1発も回転跳びで躱されます。牽制として考えるなら、2発を連続で放てる衝撃波にしたほうがよいのです。攻撃も私は鳴り打ちだけに頼ることにしました。こちらから普通に攻撃すると、相手は鳴り打ちをするのです。私は本格的に挑むために鎧を全て重甲冑にしました。武器は槍にします。短槍よりも長いので、牽制にはよい。懐に入られても、私には鳴り打ちがあります。槍を構えて大振りを誘発して、鳴り打ちで反撃する。只それだけを繰り返すのです。回転跳びができないので、行動の幅を狭く設定して、私は最適化を繰り返します。私はそれを次の行商人が来るまで繰り返しました。
最適化はよい感じです。私はダメ押しに友人の正統騎士と、魔術騎士団に、魔導書を無心します。魔術騎士団のほうは断られる確率が高いです。緑の指輪も注文しますが、届くのは来月になります。そこから人形に助力してもらうとしても、魔術騎士団から魔導書が届くのは2ヶ月後です。私は友人からの戦技に期待しました。
私は最適化を続けます。好機は、私の構える槍を振り払おうと、戦乙女が鉈を振る動作です。それへ1歩の踏み込みで私は鳴り打ちをします。1歩前へ行かないと鳴り打ちが届かない。鉈が振られるのを見てから動いては遅いのです。予備動作として戦乙女は右脚を後ろに下げます。それを見たときには動いていないといけないのですが、そこから3つのパターンがあります。1つ目は槍を払う動作です。2つ目は、予備動作を見て1歩前に進むと、小盾で殴打されるパターンです。戦乙女は牽制で小盾の殴打をわざと空振る場合もある。私はその牽制に自分で当たりに行くのです。私は何度も攻略が嫌になりました。3つ目は、戦乙女が鉈の端を逆手に待つのです。それから1秒半して振り下ろすのですが、これは槍で牽制していても届きます。懐に入るのもダメです。懐でも恐ろしく高精密に私の頭部へ振り下ろされます。回避方法は障壁による防御か、もしくは間合いの外に身を投げるかです。1撃離脱を繰り返すことも考えました。戦乙女は鉈の構えを解いて突進すると、大振りの薙ぎ払いをする場合もあるのです。回転跳びのない私には、障壁で防ぐしかありません。このパターンは、精神力の問題で繰り返せないのです。そもそも普通に攻撃しても敵の鳴り打ちで死にます。そうでなくても、回転跳びで躱されるのです。高確率でそのどちらかを駆使して、戦乙女は私の攻撃に対応します。城壁の上からクロスボウや魔術で攻撃してみましたが、戦乙女の魔術で防御されます。どうやら戦乙女の基本魔術は、矢除けです。これは常時発動する魔術で、遠距離攻撃を妨害します。
相手の攻撃を鳴り打ちする以外に方法はないのです。私は今日も戦乙女の予備動作を見て1歩前に出ます。その日最初の戦闘は、運良くお目当ての槍を払う動作から始まりました。私の鳴り打ちは空振ります。私には鳴り打ちの練度が足りないのです。敵は小盾の殴打をします。私の顔面に直撃します。戦乙女は私にトドメの鉈を振り下ろしました。
人形は最初の部屋にいます。人形は明日の行商人について話しました。緑の指輪を渡してから、私に助力するのは約束です。人形は約束を守ることに感謝を述べました。感謝の印に、私へもプレゼントを注文してあると述べるのです。私は驚きました。何か欲しいと私は思わないのです。遠慮する私に、人形は笑います。攻略の助けとなるものなので、私的なものを期待しないで欲しいそうです。
私は残念に思いました。その思いは、人形に筒抜けです。