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エキスパートのアドバイスは参考にならない

エキスパートは普通の顔してとんでもないことを言ってくる。

自分が何かを購入する時、それに詳しい友人に相談して失敗したことはないだろうか?

オレは以前、自転車を買うならママチャリもなんだしなと自分でいろいろ調べてみたところ

クロスバイクっていうのが欲しいなと思ってきた。

そこで

『趣味自転車です』な友人に相談したら、クロスバイクなんか買うよりバリバリドロップハンドルのロードバイクを勧められてげんなりしたことがある。

オレはママチャリから少し進化したいだけなのだ。

オレはただ猿人から原人になりたいのだ。

なのに進化の過程をすっ飛ばして新人にしようとしやがる。

こちとらまだ火を使えるか使えないかのレベルなのである。

それでも原人にキャンプファイヤーをしろとアドバイスするのだ。

あいつらのエキスパートの当たり前は初心者には荷が重いことが往々にしてある。

皆さまには、死んでもヘルメット被ってピタピタのウェア着て自転車乗るヤツに自転車の相談しないことを忠告したい。

オレはカエルを飼いたくなった。

亀を4匹お迎えしても消えることのないお迎え欲。

しかしながらスペース的にも亀のお迎えは難しい。

亀の飼育にはスペースが必要である。

マレーハコガメ2匹、ロシアリクガメ、インドホシガメの総勢4匹の愛亀達で、我が家のタワマン(メタルラック)も満室御礼である。

その頃から、休みの日に爬虫類のいるペットショップに行くことがオレのルーティンになっていた。

今の自分には高くて飼えないけど、こんなのもいつか飼いたいなぁなんて妄想を膨らませながら生き物を眺めることが楽しすぎた。

きっとニヤニヤして気持ち悪い客だったんだろうな。

ある時

ショップに行くといつも見かけるまんまるなカエルが気になり始めた。

クランウェルツノガエル

コイツらはショップのカエルコーナーでベルツノガエルと一緒に並んでいるのだが、どういうわけかベルツノガエルより少し安い。

決してクランウェルが安いからではなく、クランウェルの方が見た目が好きと自分に言い聞かせて

たくさんの色や柄のカエルの中から

オレは1番値段の安いクランウェルガエルの入ったプリンカップを持ち

近くにいた店員のお兄さんに声をかけた。

「これってエサは何を食べるんですか?」

お兄さんは

「この子はメダカをあげてます」

と教えてくれた。

なんとエサはメダカで飼育できるのかと心躍った。

おぞましい虫をあげないで飼えるのかと、オレの心は軽快にステップを踏み始めた。

なんでもツノガエルの仲間は

ジャングルで自分の身体が半分埋まる程度に地面に穴を掘り、目の前に獲物が通るのを待ち伏せするらしい。

待って待ってついに目の前に現れた獲物を丸呑みする。

まんまるの身体の半分くらいある大きな口で、自分と同じくらいの獲物も呑み込んでしまうらしい。

そんな待ち伏せ型の生態がゆえに、身体の割にそれほど広いケージは必要ないとのことだ。

スペース問題が深刻な我が家にもってこいの新メンバーである。

お迎え決定だ。

さらに飼育環境についてなどお兄さんにアドバイスをもらう。

飼育のイメージがわいてくるにつれ

はやく我が家に連れ帰りたくてウズウズしてきた。

もうオレの心の軽快なステップはとどまるところを知らない。

お兄さんのあるひとことで

さっきまで軽快だったステップは、すごい勢いで足取りが重くなっていった。

ツノガエルはメダカだけだと栄養が偏るので徐々にコオロギに切り替えてください。

コオロギ

コオロギ

コオロギ…


軽快だったステップに疲れが出てきたオレを横目に、畳みかけるようにお兄さんは軽快に続ける…

コオロギの後ろ脚は消化に悪いので、後ろ脚は取ってください

後ろ脚は取ってください

取ってください…

1度しか聞いてないのに、フェードアウトしながら何度も響きわたる。

コオロギの頭も噛まれたりするので潰してからあげてください!

オレの軽快なステップは完全に止まった

もはや直立不動だ。

爬虫類、両生類飼育者はコオロギにいつもこんなことしてんのか…


というわけで

それだけで大丈夫と勘違いしたメダカと一緒にコオロギもお買い上げして帰宅した。

それから毎度のエサやりの度

ぎゃあぎゃあ言いながらブチッとコオロギの脚を取り

顔を歪めながらコオロギの頭を潰した。

毎日が辛く苦しい修行のようだった。

でも可愛いカエルのため、オレは修行に勤しんだ。


ツノガエルはエサをやり過ぎると消化不良で亡くなってしまうらしい

なのでエサやりの回数には気をつけた

あげ過ぎないように

餓死しないように

慎重にエサの量を調節した。

しかしお迎えから1ヶ月ほど経ったある日、突然新メンバーは亡くなった。

1ヶ月間、カエルを飼ってるのかコオロギを飼ってるのかよくわからない日々だった。

もうコオロギを食べる生き物を飼うのはやめようと心に誓った。


それから20数年

たまに爬虫類を飼い始めたばかりの人からエサやりの相談を受ける

オレは言う

コオロギの脚をとって頭潰してあげてください!

少しだけエキスパートに近づいてるのかもしれない。


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