12月初旬クロトン=オン=ハドソンで
ルイーズ・グリュック
棘のような太陽
ハドソン川は氷で
切り刻まれていた
吹き飛ばされてカチカチいう
砂利のような
サイコロの音を聞く
骨のように青白い
降ったばかりの雪が
毛皮みたい川にくっついている
行詰り
私たちは去年タイヤがパンクした時に
クリスマスプレゼントを
配達しようとしていた
嵐によって切り取られ枯れた貝殻のような松の樹皮の上で
剥き出しの手足のまま
私はあなたが欲しい
ノーベル文学賞を受賞したルイーズ・グリュックの詩をまた訳してみました。初めて読んだ時に異様に感動した詩です。救いのない荒涼とした冬の情景を描きながら、最後でガツンと熱い言葉をぶつけてくるところが好きです。「嵐によって切り取られ倒れた栓のような松の上で」とは苦しまぎれの翻訳です。原文は"Above the dead valves pines pared/ Down by a storm stood"です。分かる方がいたら、教えてください。これは実際の情景を書いた詩ではないと思います。心象風景のようなものです。「私はあなたが欲しい」とは剥き出しの表現ですが、男女の情熱を超えたものを感じます。人間が根源的に持っている他者への飢えです。この飢えはコロナ・ウィルスのためにいろいろな行動が制限されている今、さらに強くなっている気がします。その意味でこの詩は予見的で、詩人が持っている感受性の確かさを表したものでしょう。
追記 私がフォローしているPlotさんがvalveの意味を調べてくださいました。それで上記の分からないところが理解できるようになりました。訳文も変えました。有難うございました。
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