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今更ながら舞台『呪術廻戦』の感想


 U-Nextってたっか‼月々2,189円(税込)ってマジ?(2023年8月時点)

 そう思ってずっと契約をしていなかった私が、最近、どうしても池井戸潤の民王を見直したくなってフリートライアルした。そして、そこで知ってしまった。U-Nextって舞台系の配信、しかも月額料金だけで観れる舞台めちゃくちゃあるという事実を。

唐突だが、呪術廻戦にはまった

 呪術廻戦。それは集英社で絶賛連載中、芥見下々(あくたみげげ先生って読むの知ってた!?)先生の漫画である。現在、テレビアニメの二期も始まり、ホラー要素も在りながら精神的・内面的な切込みが激しい作品である。気が付いたら沼にはまっている恐ろしい漫画だ。これから読む方はその点十分に注意してかかってほしい。一緒に沼ろう。

 少し前に、×××HOLiCで2,5次元舞台デビューを果たした私が味をしめ、U-Nextでたまったポイントを注ぎ込んだ一投目がまさにこの舞台、呪術廻戦だった。


 

マテ、ここに出てくるキャストみんな歌が上手いぞ

 どうなってんだこの本格的ミュージカル。まず第一声がこれ。
出てくるキャスト皆、歌が上手い、上手い、上手い。松尾芭蕉が現代に生きてたら多分この舞台観てまず歌が上手いしか言えなくなるんじゃないかってくらい歌が上手い。
 聞き惚れてしまうやろ……。呟きながら終始見た。歌一つで興ざめしてしまうこともある舞台で、何一つ不安なく安心して見れるのってマジですごい。みんなあれか、武道館このまま行っちゃうか?? って言いたくなるくらい見事な美声。まずこれは今回記事を書く上で絶対に言いたかった。しかしまだこれだけでは終われない。

↓こちらで虎杖様の歌が少し聴ける。
 これはもう、口ずさんでしまうレベルで好きになっちゃった曲の一つ。呪術廻戦の舞台でまさか推し歌増えるなんて誰が想像した?


B級映画好きそうな芥見先生へのリスペクトが凄い

 芥見先生の漫画を読むと、結構映画ネタが多いなって思う。呪術廻戦の漫画を読むと、マニアックなB級の所謂濃い映画を結構観てらっしゃるのでは?? という印象を受ける。ミミズ人間とか、ね。実際、舞台ではB級映画の演出、というかちょっとキャスト達のお遊びみたいな要素がたくさんあった。
 個人的には最初、え、ナニコレ? とか思ったけれど、なんだか脳裏に残ってしまってマダニ男やB級映画軍団を観にもう一度、もう一度と何度か観直し。B級らしいシュールさのある演技に、何度も見ていくうちにはまってしまった。まさしくB級映画を観ている時も多分こんな感じだと思う。結構、いや、かなりこれ演じるのってキツイところあるに違いない。だけど、そこは役者様達による役者魂。ちゃんと演じ切っていた。凄いな……って呟いた。こういうシュールな笑いも含めて呪術廻戦は愛せる舞台だった。

 ※この観直せるっていうのが、U-Nextと今回の舞台製作陣の配慮によるものだと思うとそういう点でもすごくありがたいなって思います。舞台は生ものですから、あんまり配信や円盤焼きってなかなか実現しなかったりするんですよね。本当に感謝です。海外はこういうところ徹底して売り出さないので日本はオタクに優しい国だってじみじみ思います。

祖父の呪いに縛られて生きる呪いをかけられた主人公の話

 私は呪術廻戦においてはテレビアニメ一期から入ったにわかオタクだった。一回目、アニメを観た時、このアニメはめちゃくちゃ格好いいアニメだなとそんなことを思った。しかし、SNSでの先輩沼りオタク達の感想やつぶやきをみていたら、これはどうやら格好いいだけの作品じゃないぞと気が付き再履修。そして、二度目を観てもまだ気が付けなかった要素を舞台がさらに補填してくれた。
※漫画先読めよって突っ込みは言わない約束♡今読んでます。遅いね。遅すぎるよ……わかる。

 まず、舞台では冒頭死んでしまった虎杖祖父の声から始まる。
 ——お前は強いから人を助けろ。感謝されなくてもいい。救える奴は救っとけ。
 ——オマエは大勢に囲まれて死ね。
 これらの言葉が呪いとなって、今回の舞台中何度も声が語り掛けてくる。
 この物語は呪いの物語なんだと改めて思い知らされる演出。虎杖悠仁役の佐藤流司さんの演技はとても無表情で、欲がない主人公をしっかり演じきっていた。虎杖って程よく冷静で、でも優しくて、すごく呪われてる。だけど胸の中には赤い炎というよりも青い炎がゆらゆら揺らめいてそうって感じ。こういうイメージがもてたのも舞台の上で役者さんが演じてくれたからだなって思う。

伏黒 恵は呪術廻戦の世界を現実に堕としてきた

 泰江和明さん演じる伏黒恵。漫画でもアニメでも、呪術廻戦の一番最初に登場したキャラクターがこの伏黒恵である。
 おなじみ百葉箱を探るシーン。舞台、呪術廻戦ももちろんここから始まるわけだが、ここは観劇者を物語に引き込む大事な役割を担っている。
 ——ないですよ。百葉箱空っぽです。
 ——マジで? ウケるね。
 ——ぶん殴りますよ。
 堕ちた。堕ちました。私、今呪術廻戦の世界にいるわ。違う、呪術廻戦の世界が今現実に堕ちてきたわ。
 電話越しに五条悟にケチをつける伏黒。ああ~~~~、これ現実なのね、理解した。五条悟の無責任な物言いに振り回される伏黒。現実の大人もそう。むしろ子供の方が責任感強めに持ってたりする。大人のが程よく強弱付けて無責任だったりね。特級呪物が無いウケる、とかやってらんねえですよね。舞台でこのシーンが再現される瞬間ってたまらないだろうなとU-Nextで液晶越しに観た私は、次回もし舞台があったら絶対チケット争奪戦参加するぞと決心したのでした。
 そして伏黒 恵の歌が今回の舞台で一番難易度高いなと思った。泰江和明さん頑張ってた。心の中で応援しちゃった……。


釘崎野薔薇が愛すべき女だと気づく

 初めてアニメを観た時に、野薔薇ちゃんって結構言いたい放題な女だなっていうのが第一印象だった。それ以上でもそれ以下でもなく、言いたい放題で強い女ってイメージが私の中でついていた。
 豊原江理佳さん演じる野薔薇ちゃんはいい意味でこいつ私が思っている以上にいい女だったんだなという補填をしてくれた。
 ——見るからにイモ臭い。ガキの頃ハナクソ食ってたタイプね!!!!
 初対面の虎杖に対するファーストインプレッションがこのセリフに込められている。そして豊原さん演じる野薔薇ちゃんの言い方が最高に可愛い!!!!力強い物言いに背筋を伸ばした紅一点の堂々たる振る舞い。
  あ、野薔薇ちゃんってちゃんと現実世界にいるとこんな感じなんだ。素直にそう思えた。
 そして上記で記載したようにこの舞台のキャストは歌が上手い。野薔薇ちゃんももちろん例外ではない。
 ——スカウトされたらどうしよう!!!!スカウトされたらどうしよう!!!!
 ——可愛いジャージに着替えたい、セットアップで揃えたい!!!!
(これらのセリフは野薔薇ちゃんの歌の歌詞です)
 大声で歌う野薔薇ちゃん。上手い。上手すぎる。そしてめちゃくちゃ可愛い。好き。私野薔薇ちゃんがこんなに破天荒なキャラだったなんて知らなかった……愛せる。私の知らなかった野薔薇ちゃんの魅力を全身全霊をもって気づかせて下さった豊原江理佳さんに頭が上がらない。
 そして豊原さんの、そして野薔薇ちゃんの歌もっと聞きたい。中毒性がありすぎた。

先輩ズのノリノリの歌がカワイイ

 禪院真希役、高月彩良さん。狗巻 棘役、定本楓馬さん。パンダ役で顔を出せなかった寺山武志さん。先輩ズのキャストである。そして三人はとにかく歌をノリノリで歌っていた。高校デビューした時、もう既に一年ないし二年先からズッ友で腐れ縁で息もぴったりみたいな空気出してくる先輩達を見ているようなそんなノリッノリの歌を披露してくれた。
 そして野薔薇ちゃんとのマイクの奪い合い。私舞台直に観に行ってたら笑いすぎて終わってたなって思った。可愛すぎるんだよ先輩ズ。なんなんだよもう。
 三人の歌の内容は主に自分達の自己紹介で、虎杖が死亡したと通告された後の伏黒と野薔薇にむかってがむしゃらとも言える元気さで捧げられた。
 あんまりにも何度も来る返される名前(歌詞)。
 ——禪院真希!!!!(歌詞です
 野薔薇ちゃん「覚えちゃったじゃないの」って大声でつっこみを入れるタイミングも間も、全部愛せるって思った。可愛すぎやしないか。
 なんなんだこの高校。いいぞ。このわけのわからないノリが高校生らしくていいぞ!!!!
 舞台『呪術廻戦』の歌のCDって売ってないんですか? 売ってもらってもいいですか? ずっと聴いてたいんですけど!?!?

ドレミン、ナナミン

 七海建人役の和田雅成さんは怖いくらいキャラクター分析が凄かった。
 そして歌が、ノリノリだった。
 舞台じゃなきゃ気づけなかった点。もしかしてナナミン社会人生活の付き合いでめちゃくちゃカラオケかスナックあたり行ってたな? ってこと。残業嫌いで付き合い悪そうだけど彼歌が上手すぎた……。しかも呪符つきのナタをマイクにしてるところ『やってられねー』感がすごく出ていて思わず声出して笑ってしまった。いいぞ、そのけだるい感じ。社会人を経て呪術師へと戻ってきた感満載でいいぞ。共感できる。
 タイトルに入れたドレミンとあるが、これは虎杖役の佐藤さんがアドリブ(?)で入れたナナミンと呼ぶまでに考案した名前の一つ。ドレミンと呼ばれたナナミンが丁寧に突っ込みを入れるところまでこの人って結構真面目な人なんだろうなって思わせてもらえた。

伊地知さんは帳を下せない

 田中穂先さん演じる伊地知潔高はもう本人だった。もう、本人なので語ることもなく、本人だったとしか言いようがないくらい素晴らしくハイクオリティ。もうこればかりは舞台観てくれと一言言いたい。
 伊地知さんという脇役キャラにしてなんとソロで舞台に立つシーンがあったり、カーテンコールで帳を下すお仕事をされていたり、とにかくこの役者さんはキャスト達にも愛されてるんだなという気がしてならない。
 ポジションもまさに伊地知さんだった。
 これから舞台観てみようという方には是非、カーテンコールの最後、伊地知さんが帳を下すところを観て頂きたい。絶対、観てほしい。約束だ。
 多分、今回の舞台で私が一番繰り返して観たのがこの伊地知さんの帳を下すシーンだったということをここに記して終わりたい。
 彼は託してくれた。私達観客に。そして舞台を観終わってしばらくの間私は思い出す度に顔の前に人差し指と中指を絡めて唱えたのだった。
 ——闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え。

ヴィランズは仲が良い

 呪術廻戦の魅力の一つが、個性的なヴィラン達だ。舞台の彼らもまた大御所キャスト達によって大変和気あいあいとした……歌とダンスを存分に披露してくれた。ねえ、どうして。あんた達までも歌うまいんかい!!!!どうして!? この舞台どうなってんの!? 歌うま。
 夏油傑(NTR済)役の藤田 玲さん、真人役の太田基裕さん(まさか×××HOLiC侑子さんを演じていた方だった)、漏瑚役の山岸門人さん、花御
役の南 誉士広さん。この役者さん達の醸し出す空気がまた癖になる。にやにやしてしまう。アニメを観た以上にヴィランズは仲良しで、同じ目的の為に集まった仲とは言え、それなりに楽しんで生きている、あるいは存在しているのだなと思えた。

吉野家と硝子

 吉野順平は根は優しくて友達思いで、好きなものにはこだわりがあって……シングルマザーのお母さんの体の心配をいつもしてる高校生。そして、吉野母はパワフルでそんじょそこらじゃ折れなそうな格好いいお母さん。
 今回吉野順平役だった福澤希空さんと吉野母役の石井美絵子さんの二人家族な空気がとても良かった。そこに家族を祖父しか知らない虎杖が混ざるというなんとも言い難い、ひと時の小さな、でも守りたい幸せがそこにあった。
 どこで間違って、何がいけなくて吉野家があんなことになっちゃったのだろうかと、悩んだって仕方ないのに悩んでしまうくらいにはみんなでB級映画語り合って笑いあった一夜が虎杖にとってこれからも忘れられない一夜になるんだろうな……高校生の時に友達の家に遊びに行くって結構インパクト強いというか、私個人の青春としては友達をデパートや商店街やらで暇をつぶすことが多かったから、なおさら虎杖の人生で忘れられない二人との一夜の食卓になったのだろうなと痛感させられた。
 舞台であのB級映画のくだらないシーン語り合って楽しそうな三人を目の当たりにして、なお切なさが増したのでした。
 そして福澤希空さん、カーテンコールの際の「よろしくお願いいたします」が可愛すぎるのでまだ舞台観てないぞって方は是非あの可愛すぎる挨拶をU-Nextで観てほしい。めちゃくちゃ可愛いです。
 石井美絵子さんは吉野母だけではなく家入硝子も演じており、まさか二役なんてびっくりしてしまった。美人で、硝子の時はちゃんとクールビューティー&ちょっと疲れている感じで、吉野母の時は家事なんてやってるように見えねえぜ、元気だぜなママになりきっていた。役者さん凄すぎ。 

五条悟は頼もしすぎる

 呪術廻戦、自他共に認める大人気お兄さん先生こと「五条悟」。自信家であり最強であり、白髪にブルーアイに身長190cmとちょっと、191cmほど。とにかくずるすぎるいいとこどり男である。だからアニメでも漫画でも出てきただけでふっと思わず笑みが漏れてしまう。来たか、五条。待ってました!!!!という期待から出る笑みである。
 三浦涼介さん演じる五条悟が登場した時ももちろん思わず微笑んでしまった。なんなら登場する前の声だけの演出ですら微笑んでしまいました。人間期待する時は思わず顔がほころぶんだなって知った。
 はい、きました悟。はい、超自信たっぷり。足なが。囚われた虎杖が封印の呪符の中目を覚ますシーンではその足の角度までもまさに五条悟。漫画から飛び出てきたような所作に感動。そしてもちろん、歌も上手い。なんならちょいちょいその長い手足等身を生かしてアニメ一期EDのようなダンスも挟んでくる。イメージ通りすぎて怖い。完璧オブ完璧。
 カーテンコールでまさかの目隠しをとって顔を出して下さった三浦さん。すっごい悟。ものすっごい悟。バチバチの白まつ毛にどこかドールのような整った御顔……。これ舞台に実際に行った人息できた? 過呼吸とかになってないですか大丈夫ですか? 心配になりました。

両面宿儺は最後まで両面宿儺だった

 両面宿儺役の五十嵐拓人さん。本編でとにかく格好よく、その立ち姿一つで両面宿儺の威圧感と呪いの王としての風格を見せつけてきた。とにかく理想の宿儺がそこにいたのだが、中でも一番印象的だったのが最後のカーテンコールの際の挨拶でお辞儀をする箇所だ。
 五十嵐さんは最後まで両面宿儺に徹していた。皆が深々とお辞儀する中、両面宿儺のイメージを崩すことなくやや頭を下げる程度に留める。あ、まだ宿儺なんだ。宿儺が深々とお辞儀するイメージってつかないから、そこまで徹してイメージを守ってくれているんだなと思えた。やっぱり舞台『呪術廻戦』。キャラ分析が徹底されすぎていた。

最後に

 舞台『呪術廻戦』観て良かった。解像度が舞台を観る前と後だと明らかに違う。B級映画のマニアックな演出も多々あるが、私はあのシーンのしょうもなさすら愛せるなと思った。なのでもし興味あるなって少しでも思う人がいれば背中をそっと押したいと思う。
 一緒に伊地知さんの代わりに帳、下ろしましょう。

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