恐怖や不安,興奮にも効果的: Tタッチのボディラップ&サンダーシャツ
前回の記事でTタッチの概要を説明した。
まだTタッチをあまり知らない方は一つ前の記事から読んでいただきたい^^
Tタッチは大きく分けて2つある。
身体に直接アプローチするボディワークと、動きの中で変化をさせていくグランドワークだ。それぞれにとても多くの手法やツールがあり、また日々新しいコンテンツが出てきている。
プラクティショナーに認定された後も継続的な勉強をし、技術と情報の更新が必要である。
(いやいや、これは全てのトレーニングにも同じことが言えるだろう。新しい技術や情報を得る努力をしなくなった人はもはやプロ意識が低いと私は思っている。)
今回はボディワークの中で有名なツールを使った手法を簡単に紹介しよう。
神経を意識させる⁉︎
ボディワークとは生き物(今回は犬としておく)の身体の神経を上手に意識してもらうよう導く。働いていない神経を呼び覚まし、正しく機能していない場合にはその機能をサポートしながら元に戻す。
消えたライトや消えかけているライトに「おい!消えてるぞ!」と気づかせ、付けていくという感じである。
例えば何か刺激に恐怖を感じる犬は、おそらく腰に大きな力が入る。
尻尾の付け根にもテンションがかかるだろう。
背中を丸めてお腹に力が入る犬もいる。
耳にもテンションがかかり、顔を硬らせたり、ハァハァするパンティングを始めたり、口をギュッとツボめることもある。
頻繁にそのような刺激を受けていると身体にテンションがかかった状態が続く。
そして刺激へ反応がより敏感になっていくのである。
さまざまなタッチを使い、そんな部位を意識させハッピーな犬の身体の状態へ戻すサポートするのだ。先の記事で書いたとおり身体のバランスを戻すよう各部位の神経へ働きかけていく。
手や指などを使って特殊な動きと圧で身体の様々なパーツへアプローチするこの方法をTタッチと言う。
マッサージの一種と思われがちだが、実はそれとは似て非なるものである。
身体に巻きつけるボディラップ
バンデージのような物を犬の身体に巻きつけるボディラップという手法がある。
身体を固定して動きをサポートするのではなく、身体を意識させるために使う。
つまりタッチを継続的にやっている状態とも言える。
ラップにはとても柔らかい伸縮性のあるバンドを使い、巻く際には一切引っ張らずバンドが乗っている程度、或いは落ちない程度の圧しかかけずに巻いている。
巻き方は様々あるので、プラクティショナーが犬の状態を見てどの部分によりアプローチをしたいか考え、巻き方も決めていく。
( ↑ 数あるラップの巻き方の一つ「ハーフラップ」)
「刺激が発生」の後の犬の身体の変化
例えば雷に恐怖を感じる犬が雷の音や振動、匂いなどを感じた瞬間、恐怖反応/行動が現れる。
ガタガタ震える、ハァハァ息遣いが荒くなる、椅子などの下に隠れる、逃げようとする、吠える、どこかを掘る、クルクル回る、尻尾を噛む、など行動/反応は様々だ。
このような状態になっている犬は考えることができず、本能の「危険回避」が作動しているため、飼い主ができることはただ一つ、助け出してあげること、である。
ストレスの要因となっている刺激を遠ざけるか、犬を別の場所へ移動させることをしなければならない。
このような大きな反応/行動が見られる前に、実は身体の様々な部分に小さな反応がある。
例えば、耳や尻尾に力が入る、腰がギュッと力が入り丸くなる、お腹に力が入る、体勢が後ろ重心になる、体勢が前重心になる、呼吸が浅くなる、など。
これらは全ていつもの身体のバランスが崩れ始めていると見る。
ボディラップをつけていることで犬自身が身体のこうした些細な変化を意識をするのである。
刺激が発生する → 犬の身体が変化する → 犬が身体の変化に気づく
上記のような流れになる。
この時に飼い主が更なるサポートをすることができる。
犬はまだ考えることができる状態であるため、この後に本能が作動しないよう意識を働かせるよう何かをさせることで回避できる。
つけただけで放置しておくと、この反応の後に今まで同様の大きな恐怖行動をすることも多々ある。
だから犬が身体を意識した時、つまり大きな反応にうつる前に飼い主がサポートしてあげることが望ましい。
トレーニングをするチャンスが訪れるというわけだ。
中には身体を意識し、その後の大きな反応をしない犬もいる。
「つけたけれど何も変わらなかった。」
と聞くことがあるが、いや何か変化しているはずなのだ。
刺激から反応へうつる時間が長くなったことや大きな反応をしたが今までより早く落ち着いた、など小さな変化に気づいて欲しい。
小さな変化に気づいてあげることが大きな変化へつながるのだから。
( ↑ 身体の全体を覆うフルラップの一つ)
より簡単なサンダーシャツ
ボディラップの効果は絶大だ。
それを簡単にしたのがサンダーシャツである。
今は日本でもネットなどを通じて比較的簡単に購入できるようになった。
10数年前に開発されたこの商品を知った時は、
そのストレートすぎるネーミングに驚いた。
だって「Thunder(雷)」である。。。
名前は雷とついているが、雷だけではなく全ての不安行動や逆に興奮しすぎる行動などにも使える。
つまり全てのバランスを崩す行動に使えるというわけだ。
ボディラップに比べてマジックテープで脱着できるため、誰でも簡単に使える。
一方でボディラップに比べてピンポイントで効果を狙うことが難しい。
また後半身はカバーしていないため、不安行動で最もよく見られる腰や尻尾へのアプローチは含まれていない。
しかしそれでも効果は期待できる。
ボディラップは巻き方やラップの選び方などがあるので、できれば認定プラクティショナーに相談するのが良いだろう。
サンダーシャツはそれを簡素化させたものなので手軽に試すことができる。
これだけが解決方法ではない
いずれも全てのトレーニングやツールに共通して言えることだが、
これだけで問題を完全に解決させようと思わないで欲しい。
犬の行動とは様々な要因から成り立っている。
特にボディラップやサンダーシャツは様々なアプローチの補助的ツールとして使って欲しい。
トレーニングと併用することが特に望ましい。
限定的に使わないこと!
最後に大きな注意点を。
付けただけで大きな効果が出る場合もある。
うっかり飼い主も嬉しくなってしまうが、問題が発生する時だけ使うことはやめていただきたい。
例えば、雷が怖い犬に雷の時だけボディラップやサンダーシャツを付けているとどうなるか。
ボディラップ/サンダーシャツ = 怖い雷
このような古典的条件付けをしてしまう。
これは絶対に避けなければならない。
雷以外の時間にも時々つけて、楽しいことをしてあげよう。
奥深い。。。
実は犬を触るだけではないTタッチ。
とても奥深いのである。
今までと少し異なるアプローチをしながら素敵なコミュニケーションが築けるTタッチの世界を是非体験して欲しい。
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★パップスフレンズでは認定プラクティショナーの金子真弓がご指導しています。ご希望の方はご連絡ください。★
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