腰板さま
「いろいろ説明しているけど、着物を着るとそういう身体になる部分もあるよ」
摺り足にならない摺り足でヨタヨタ歩く私に、
以前先生はおっしゃった。
先日、能のお稽古場でプチ発表会をしようということになって、先生が皆に袴と着物を着せてくださったんだ。
袴の背中側には、腰板と呼ばれるものがついている。
先生に着方を教わりながら、袴をつけたら
ムクムクと摺り足したい気持ちがわいてきた。
腰板が背中を押してくるんだ。
「摺り足しちゃいなよ」
腰板を背負っていると
「人類のスタンダードな歩き方は摺り足です」
摺り足するのが自然じゃないですか?
そんな気分になってくる。
(まだまだ摺り足じゃない摺り足だけど)
釣り腰っていうの?なんか自然に釣り腰に
なっちゃうんだよね。
腰板さまが、私を引っ張り上げて、背中を押してくださるから。
面白くて、着付けしている皆の周りをぐるぐる摺り足しながら
(先生、こんなにたくさん着物持ってきてくださって、お荷物大変だったろうな)
と思った。