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未来のこと - そして春 -
その猫はとある春の日に手違いで我が家にやってきた…
そして私たち家族を見守り、支え、たくさんの記憶を残してとある春の日に去っていった…
あの日、ミクが去っていった後に家族が抱えた喪失感… それは想像を遥かに越えていた。失ったことへの悲しみだけではない。ミクが我が家に来て本当に幸せな生涯を過ごせたのか… そんなことさえも気になっていた。暫くの間は食欲も湧かず、何かにつけてはミクを思い出し、込み上げた感情は行き場を失ったまま、ただただ涙に変わっていった。中でも母親の落ち込みは激しく、私はそんな母親に掛ける言葉さえ持たなかった。
そんな日々が1年位は続いたろうか、やがて母親自身が立ち直りに向けた模索を始めた。国内旅行、絵手紙、ウクレレ、フラダンス、大正琴… 今まで働き詰めだった人生を補う様に様々なことを始めていった。私がお盆に帰省した時などは玄関まで出迎えにきた母親がフラダンスの衣裳で頭には花輪、手にはウクレレなどを持ってニヤけていたりしたものだから、初見の私はそれはもう様々な事を覚悟したものだ。後から聞けばフラの発表会の直前練習だったとか… あの時ほどの安堵感を私は未だに知ることがない。
ある時、私が仕事で悩みを抱える中、友人から紹介されてとある方から霊視をして頂く機会に恵まれた。その中でたまたまミクの話題となり、とても興味深いことを聞くことができたのだ。
なんでもミクはこの世でやりたいことは全てやり切り、肉体から離れた魂は満足感と共にスパッと空に帰っていったと…
ではミクがやりたかったことは何だったのか?
それは母親ともう一度暮らしたいということ。
前世で捨て猫だった時、死が目前に迫る中、たまたま当時の母親に拾われて手厚く育てられたことがあったと。その時は結局短命に終わってしまったらしいのだが、とても幸せだったと。そしてもう一度機会が与えられるのなら、その時の感謝と共に母親と暮らしたかったのだと。だから空の上であの人(母親)の飼い猫として転生したい子はぁ…の募集があった時、まだ前世からそれ程時間が経っておらずいささか早いタイミングだったものの、周りの魂を押し退けてハイッ!ハイッ!ハイッ!って大声で手を上げて少々無理やりな感じで再び降りて来たのだと…
更にこんな話もあった。そんな風に再び母親の元に降りて来る際に、ミクには心に決めてきたことがあったと。それは今生は少しでも長く母親と一緒にいること、そして前世で自分を死の淵から救ってくれた母親を今度は必ず自分が守るということだったと。
私はそれを聞いて深く納得できたのだ。両親がもめ、離婚の危機から家庭崩壊につながりかけた時期、からっぽの家でひとり心を痛める母親をミクが毎日添い寝して慰め、母親もそんなミクがいたから軽々に人生をあきらめずにここまでやってこれた… と述懐していた訳を。その後もミクがこの世を去る直前まで、どんなに短い時間であろうと毎晩母親の布団まで添い寝をしようと弱った身体で向かおうとしていた訳を。
そんな母親もミクが去ってから10年も経たない内に病でこの世を去っていった。でもその時の私には何か安心感があったのだ。きっと母親が空に上がる時には、その足元に必ず嬉しそうなミクがいてくれる確信があったから…
人と人、人と動物、人と花… 様々なつながりが織りなすこの世の不思議、そして美しさ。ミクを通して感じ、考え、広げることができたこの視野を今は心から大事にしたいと思っている。
その猫はとある春の日に手違いで我が家にやってきた…
そして私たち家族を見守り、支え、たくさんの記憶を残して、とある春の日に去っていった。
ありがとう、ミク 🐈⬛
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