【1日1事例】経済格差と3歳児の食生活習慣との関連 #経済格差 #食生活 #健康格差

参考文献:経済格差と3歳児の食生活習慣との関連
筆者:緒方 靖恵, 横山 美江, 秋山 有佳, 山縣 然太朗
発行日:2021年
掲載元:日本公衆衛生雑誌
検索方法:インターネット
キーワード:経済格差, 3歳児, 食生活, 養育環境, 支援

【抄録】
目的
・本研究は,経済格差と幼児の食生活習慣との関連を明らかにし,今後の幼児をもつ家庭への支援のあり方を検討することを目的とした。
方法 
・A市内4区の3歳児健康診査に来所した保護者を対象に,幼児の食生活習慣の状況,保護者の社会経済的地位を含む養育環境を問う無記名自記式質問紙調査を実施した。
・1,150人の保護者に調査を依頼し,616人から回答を得た(回収率53.6%)。このうち必要な項目等が欠損していた者を除外し,498人(有効回答率80.8%)を分析対象とした。
・本研究では,国民生活基礎調査において相対的貧困率の算出に用いられる貧困線を参考に,相対的貧困群と非相対的貧困群に分類し,幼児の食生活習慣との関連を分析した。
・統計学的分析方法は,Fisherの正確確率検定,Mann-WhitneyのU検定を実施後,相対的貧困と関連が認められた食生活習慣について,ロジスティック回帰分析を実施した。
結果
・相対的貧困群と非相対的貧困群における幼児の食生活習慣を分析した結果,相対的貧困群の幼児は,非相対的貧困群の幼児と比較して,週6日未満の野菜の摂取の割合が高く(P=0.003),かつ週6日以上のスナック菓子の摂取の割合も高かった(P=0.034)。
・週6日未満の野菜の摂取と週6日以上のスナック菓子の摂取については,保護者の年齢や学歴,主観的経済観を調整しても相対的貧困と有意な関連が認められた。
・相対的貧困群の養育環境の特徴では,非相対的貧困群と比較して30歳未満の保護者の割合が高く(P<0.001),ひとり親世帯の割合が高かった(P=0.007)。
・加えて,保護者の最終学歴が高校までの割合が有意に高かった(P<0.001)。
・さらに,相対的貧困群の保護者は,非相対的貧困群の保護者に比べて主観的経済観でもより生活が苦しいと感じていた(P<0.001)。
結論 
・本研究結果から,経済格差が3歳児の食生活習慣と関連していることが明らかになった。今後,妊娠・出産期から経済的困難を抱える家庭を把握し,子どもが健康的な食生活習慣を身につけられるよう早期から支援していく必要性が示された。
メモ
・約7人に1人が貧困状態におかれている
・2013年6月には子供の貧困対策の推進に関する法律が制定され、「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会の実現」に向けて総合的な取り組みが推進されている状況である。
・経済格差は、新生児の体格への影響、肥満への影響、う歯への影響、青年期のメンタルヘルスへの影響、小学1年制の問題行動への影響、小学生へのQOLの影響などが報告されている。
・また、保護者の教育態度や喫煙などの子どもの健康に影響を及ぼす養育環境の問題、子どもの頃の経済状況が肥満やうつ病など成人後の健康にも影響を及ぼしているという報告の見受けられる。
・子どもの数が4人以上になると貧困率が上昇することが示されている
・主観的経済観は、客観的ではないため本当に貧困なのかと疑念を抱かれやすいが、本研究結果から主観的に生活が苦しいと感じている場合は収入的な面でも貧困家庭である可能性が高いと言える。支援する際は具体的な世帯収入までは把握しにくいが、主観的経済観は世帯収入に比べて把握しやすい項目であり、こうした情報を支援に活かしていくことが望まれる。


参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jph/advpub/0/advpub_20-114/_pdf/-char/ja


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