「何者か」になるには
コロナ禍になって、配信アプリを利用し始めた。
ツイキャスをはじめ、今ではInstagramでもアカウントがあれば誰でもライブ配信ができるようになった。
ご存知だろうか。配信に特化したアプリも今はたくさん登場している。
日本全国津々浦々、はたまた台湾や香港、アメリカやカナダ、ドイツやウィーンなど、世界各地にユーザーさんがいて、スマホやタブレットを通じて簡単に世界を知ることができる。
すごい世の中になってしまった。
きっかけは、Twitterで、あるプロトロンボーン奏者の方からの「コラボ配信」のお知らせだった。
本当にそれみよがしに、「へぇ~。」という気持ちで配信アプリをダウンロードした。次第に、そのプロ奏者(ここではライバーさんと呼ぶことにする。)の演奏配信を見るためにアプリを利用していた。
「おすすめのライバーさん」を辿っていくと、貴重な貴重なたくさんの出会いが待っていた。
私は音楽が好きなので、最初に出会ったライバーさんを通じて色んなプロ奏者を知ることができ、またさらに繋がることができた。
音楽のジャンルも、POPやジャズ、クラシックなど、それぞれに特化した奏者の演奏を聞くことができる。
私自身、実はこれが一番の勉強になっている。
金管楽器奏者はもちろんのこと、バイオリンやビオラなど、弦楽器の音を知ること。
知るのと知らないのでは大きな差があるように思う。
一流のプロが弾くバイオリンは、スケール(音階)を聞いただけでもそれが音楽的に聞こえる。
私が吹くスケールは、まだまだ音楽的には聞こえない。修行が必要である。日々の練習でレベルアップをしたい。
愛の挨拶(エルガー)や、ヴォカリーズ(ラフマニノフ)の曲を改めてバイオリンでじっくりと聞くことができ、曲の美しさを実感することができた。
音楽の基礎はクラシックなのかな、とも考える。
ジャズ奏者でも、心を動かす演奏をする方はクラシックを一応は通っている。
バッハやベートーヴェン、マーラーやワーグナーといった偉大な作曲家たちに、感謝とリスペクトを捧げたい。
知らないことを知るということは、頭を活性化させてくれる。一種の中毒にも似たようなものを感じることがある。
どんなライバーさんがいるかというと、バルーンアーティストさんや、ダンサーさん、三味線や三線を演奏する方など、オーケストラなどで使われる以外の楽器に触れた(出会った)時は一気にスマホやタブレット端末に釘付けになる。
本当に凄くて素晴らしいパフォーマンスに遭遇することがある。ごく稀ではあるが、その時は脳が活性していることを感じる。
また、音楽演奏だけではない配信をみかける。
キャラクターに扮していたり、中にはVライバーさんも存在している。
みなさん試行錯誤しているようで、歌っていたかと思えば、リスナーさんとコミュニケーション(雑談配信)をして楽しんでいる。
1年前くらいから私もトロンボーン練習配信を始めた。
何をやってもできない私でも、プライズがもらえるほどになると、「できるのかも?」と錯覚を覚える。
プロフィール欄に、「配信始めました」と入れてみると、顔を出しているライバーさんからフォローされるようになった。
さらに、そのライバーさんが私の配信に来てくれたりして、より繋がっている感が増した。
コロナ禍で直接会って話すことができない中でも、新たな出会い、交流ができたことはありがたいことである。
ここからは、私が配信し始めて感じたことを上げていこうと思う。
「聞くことで伝えてください」
日頃心がけていることをここでも最大限に使ってみている。
その前に、配信アプリについて調べてみた。
私がリスナーとして初めて知った時にオフィシャルページに載っていた、心に響いた言葉がある。
「いい発信に」報酬を。
少し前のことなので違っていたら申し訳ないのだが、伝えることを生業としたいと考えていた私の心に刺さっていた。
どういうことが「良い発信」なのか。
知りたいと思いたくさんのライバーさんをくまなくみていた。
冒頭に挙げた、「一流のプロ」の配信をみると、ギフターと呼ばれる人が有料ギフトを爆投げ(高いギフトを沢山投げること)している。
こういう人はオーケストラの演奏会やライブハウスなどにも足を運んでいて、席の種類もSとかを選ぶのだろうと想像できる。
中には、絶対に有料ギフトは投げない、という方もおられる。
ギフトは投げないが、口は出す、という方もたくさんいる。
演奏することを生業としている方に対しても、投げない。
手軽さゆえの行動、ということもみてとれる。Twitterの世界と似ているなと感じた。
私をフォローしてくださったライバーさんが配信に来てくれることがある。しかし大体ギフトは投げない。投げたとしても、小学生でも投げられるギフトである。
ギフトと呼ばれるのには、無料と有料と2種類存在する。
配信アプリを紹介するのに、無料と謳うことをみかける。
しかしそれはありえない。嘘だと感じる。
ライバーさんに報酬を与えるためにはどうしてもお金をかけないといけない。
それに、有料ギフトを投げるとライバーみなさんそれぞれ喜んでいる。
一気に笑顔が弾けるライバーさんも見受ける。
人は皆笑顔が一番似合う。
趣味で楽器やってます、という方の配信を覗いてみる。
ギフトが飛んでいるのである。
しかも、連続して色んな方が投げているのだ。
私は疑問に思ってしまった。どうしてギフトを投げるのか聞いてみた。
一生懸命やる姿に投げたいのだそうだ。
そうか。一生懸命にやる姿だったら私も自負する面がある。
見てくれているリスナーさんを思って心をこめて一生懸命演奏することを心掛けた。
ところがである。ギフトは飛ばなかった。
さらに趣味で音楽をやっているというライバーさんの配信をみてみた。
楽器を演奏すること以外で工夫をしている。
カツラを被ってキャラを作ってみたり、自らプライズを用意してイベントを設定していた。
中でも、女性ライバーにみられるのは、
「マットメイク」「ちらりと覗く胸元」「ミニワンピース」
だったりする。
これはあくまで私がみた女性ライバーさんの特徴である。
喜んでギフトを爆投げするのは、男性である。
配信アプリは、投げ銭に特化したアプリなのだ。
メディアリテラシーを学んできたことでいろんな事を発見することがある。
前からみること、後ろから見ること、いろんな方向から見てみないとその人やニュースを理解することはできない。
リスナーにもいくつかタイプがある。
私が最初に出会ったプロの奏者はプロ中のプロなので、ファンがたくさんいる。
そうして繋がったプロの奏者にもまた、たくさんのファンがついている。
そう、ちょっとしたファンクラブをつくることができるのだ。
プロの奏者と繋がることで、自分をちょっと上に見せるという人をみかける。要はマウントをとっているのだ。
こういうところもTwitterみたいだな、と感じる。
人は、人に対して興味を持っていない。
相互フォローだったとしても、行き来することは決してない。
来たとしても、ギフトを投げることは決してない。
また、長くみてくれることもない。
見ているようで、みていないのである。
きちんと取り組んでいる人が日の目を見ることは難しい。
事実を一つ一つ積み重ねて伝えること、なかなか人には伝わり切らないこととも共通すると感じる。
なんとも歯痒い気持ちになってしまう。
ある配信で、こんな言葉を聞いた。
不平等であることが平等である。
これは世界の真実だなぁと感じた。
私は有料ギフトを投げずにはいられなかった。
本当はもっともっとご紹介したいのだが、この話の続きはまた後でにしておこうと思う。
何かいいものを食べます。生きます。