【エッセイ】学生時代に戻りたいという気持ち
「あの頃に戻りてぇ」
という台詞、大人になってから何回口にしたことがありますか?
私はほぼ毎日、心の中で叫んでいます。
朝、娘を保育園に送る時、中高生達が徒歩や自転車で通学する姿を見ては叫んでいます。
仕事場で接する高校生達との会話の中で(私の仕事は飲食業なので、一緒に働く子はもちろん、お客様としても日常的に高校生と接しています)、折に触れては叫んでいます。
決して学生時代が楽しかったわけではありません。
むしろ高校時代は天国と地獄のような日々で、私にとっての天国である部活動の時間までは、クラスという地獄を耐えなければいけない、それはそれは暗い日々を送っていたのです。
それでも、そこで出会えた親友の存在や、今になってみると馬鹿馬鹿しいくらい些細なことで悩み苦しんでいた自分のことを懐かしんでいると、気づいた時には叫んでいるのです。
「あの頃に戻りてぇ」
皆さん、これは共通の感情なのでしょうか?
私は、何故こんなにも沢山の大人達が、在りし日のことを思い出しては悶絶し、またその日々が遠退いていくことに対して恐怖を抱かないのか不思議なのです。
何故「今」をしっかり生きられるのでしょうか?
私は毎日、それができないでいるのです。
どうしてもあの頃を思い出すと、絶対に苦しかったし辛かったし死にたかったのに、戻りたいのです。
その中で見つけた沢山の感情や出逢い、目に映った景色と鼻を掠めた匂いのひとつひとつが、この先絶対に100%取り戻せないものなのだと気付いた瞬間、発狂したくなるくらい怖いのです。
郷愁に浸るというレベルの話ではないのです。圧倒的な恐怖が襲ってくるのです。今この三十代を生きている私は、ずっと悪夢から覚めないような感覚なのです。
皆さんもそんな気持ちを抱えながらも、日々生きているのでしょうか?
どうやってこの感情を処理すればいいのでしょうか?
私の小説に中高生が多く出てくるのは、多分少しでも近付きたいから、戻りたいからなのでしょう。
娘達が成長していくにつれ、嬉しさの中にどうにも妬みが入り混じっているのです。
彼女達はこれからあの日々を過ごすことができるのだと。
もちろん苦しみは最小限に留めてあげたい気持ちはあります。
でもその苦しみを体感できることにすら、私は嫉妬してしまうのです。
見た目年齢などどうでもいい。私は本当にその時その瞬間にしかない「若さ」を取り戻したいのです。
本当に、世の中の人達はどうやって生きているの?
私はもう、そろそろ辛いです。
食費になります。うれぴい。