名指しと影
均質な光のもとには影がないのでなにも立ち上がらない
白くすみずみまでのっぺりと冴えわたってとても清潔だ
青ざめた紙の上でわたしたちは愛し合うそこに謎はない
ぎりぎり光を強めてじりじり目をこらして明日のための
紙のしみをみつけなければことばがうしなわれてしまう
まぶたのうらに過去の光の強弱が埃のように沈んでいく
ことばとは強弱であり差異であり生をひきのばすための
静寂と喧噪の波をまるごと受け入れる場所のようなもの
みえるものにことばはなくみえないものに愛を読みこみ
みえないものをみるために条件節をいくつも唇にのせて
ふと気がついたときにもう何日も降り続いていたような
切れ目のない雨の切れ目の音がつめたくただよっている
音と音の予感のはざまでわたしたちはふたたび愛し合う
はじまりもなくおわりもなく爪先立ちでゆらゆらと立ち
眠りをたぐりよせぐっとからだを閉じて影を探している
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