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演技と驚き◇Wonder of Acting #13

タイトル画像:ルーカス・クラナッハ「ホロフェルネスの頭部をもつユディト」(部分)
道案内をすると偽って取り入り、敵将の首を落としたユディトのきっぱりとした、しかしどこか穏やかな面差し。クラナッハはユディトを、またサロメを何回も描いている。[Jan. 2021]

01.今月の演技をめぐる言葉

月見 @daifu91225

#2020年映画ベスト10
【快演部門】
小松菜奈、かつ丼を食らう(糸)
一瞬で後輩に戻る松たか子(ラストレター)
無茶ぶり吹替・花澤香菜(ジェクシー! スマホを変えただけなのに)
コロナ渦中のお祓い撮影、さぞや大変だったでしょう(コケシ・セレナーデ)

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ひぞっこ @musicapiccolino

#あさイチ 志村けんさんとの芸者コントが 実は柄本明さんから 志村さんへの持ち込み企画だったという話が今日一番の衝撃でした。舞台一筋の役者がまさかのコント企画。その裏には成瀬巳喜男監督の「晩菊」の会話シーンのおかしみを再現してみたいというのがあったそうで、映画マニアの柄本さんらしい。

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じゅぺ @silverlinings63

ひかりの歌、みた。四首の短歌をもとに、孤独に生きる女性たちの姿を描く。役者どうしの空気感がすさまじくリアルだ。そこにカメラなんかないように振る舞ってる。言葉ではなく、目線の動きやしぐさで画面に映らない彼女たちの人生を語っているような。ある種のドキュメンタリーのような手触り。傑作!

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ヌーン・ムーン @noonmoonpoem

『きみはいい子』の池脇千鶴が素晴らし過ぎて、改めて彼女が映画界の宝であることを思い知りつつ、先週から始まったフジ系ドラマ『その女、ジルバ』を録画してあったことを思い出し視聴。池脇は演技をしない、作品の中を生きるのだということ、草笛光子の美は人智を超えているということ等を再確認した

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わとそん @doctoruwatson

#無言で殺意を見せろ
川本喜八郎さんの傑作人形アニメ『道成寺』('76年)より。
物言わぬ、表情の変わらぬ人形だからこそ、見る者それぞれの胸の内における最高の殺意が醸成される。
抜粋場面ラストの息づかいの動きこそが、生命を表現するアニマチオン!

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☠️背◢⁴⁶骨☠️ @1192seborn

「役作りが凄い」みたいに思わせないのが逆に有村架純の凄さだと思う。どれを見ても有村架純のままなんだけど微妙に違う。彼女は自分の中にないものをどこかから持ってきて纏うような演技はしない。役と自分の中にあるものを共鳴させるような演技

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引用させていただいた皆さま、ありがとうございます

02.[連載] 雲水さんの今様歌舞伎旅(ときどき寄り道)

第三回:あの日の麻実さん。ー 箕山 雲水

昨年の9月、ひさしぶりに麻実れいさんの舞台を観た。日生劇場での『MISHIMA2020』のうちの『班女』。三島由紀夫の近代能楽集をもとにした作品で、三島由紀夫没後50周年企画のうちのひとつである。黒の衣裳に身を包んだ麻実さんは、2階席で観ていても「そこにいる」と感じさせる。圧倒的な“気配”に健在ぶりを実感し、思わず登場から唸ってしまった。これだ、この感覚を求めていた、と。

麻実さんの舞台をはじめて観たのは2003年のこと。シアタートラムでの『現代能楽集Ⅰ AOI/KOMACHI』だった。関西にいた頃は宝塚歌劇と映画しか見ないような人間だったから、上京したばかりのあの頃はとにかく色々な劇場に気軽に行けることが嬉しくて、様々なジャンルの劇場を深い考えもなく渡り歩いていた。そのひとつがこの舞台。麻実さんといえば宝塚歌劇団の元トップスターだった方だ。現役時代の映像はビデオが擦り切れるほど見ていたから、あの方を生で観られるなら、という程度で足を運んだのだろう。たしか、美容院での出来事として謡曲『葵上』を現代に置き換えた作品だったと思う。麻実さんは六条御息所を現代に置き換えた役である。なんともあやふやな書き方しかできないのだが、実は、あまりにも麻実さんの芝居が衝撃的でほとんどの記憶が即座に消えてしまったのだ…。記憶が消えているのに、いくつかの場面は20年近く経った今でも強烈に脳裏に刻み込まれていて、時折フラッシュバックのように蘇る。素晴らしい俳優や演技には何度も遭遇してきたけれど、これほどの経験をしたのはあとにも先にもこの時だけである。

麻実さんの演技というのは、演技論的なおさめ方ができない程度に凄い。実体は舞台上にあるにもかかわらず、その気配や熱のようなものが客席全体に濃く満ちているのだ。とにかく存在が大きい。最近いくつかのインタビューを読んでいて感じるのは、自分に興味がなく、役や作品に一生懸命という姿勢なのだが、まさにその人柄が滲み出ているというのか…。特に日本では、実体のほうをいかに評価されるように見せるかに拘って小さくまとまってしまう俳優が多いというのに、麻実さんにはその小ささがどこにもない。だから、舞台から“とびだす絵本”のように一人だけ前面に飛び出してくるのだ。
鬼気迫る役の造形や声・顔・スタイルの良さ以上に、この存在感がすごい。おかげで、観ている方もただ観ているわけにいかず、それぞれの役と対峙しているような感覚を味わうわけだけれど、これがとても心地良いのだ。冒頭で書いた感覚も、まさにこれ。放っておいてくれないから、ああ、観た、という感覚になれるのがたまらない。

演劇界の、全体がとは言わないまでも大部分が大きな打撃をうけた2020年。いつエンタテイメントがなくなるのかという危機感に、演じ手も観客もさらされる1年となった。まだまだ完全に復活するまでは時間がかかりそうだけれど、この我慢の時期をすぎて通常の舞台がかえってきたら、たった一人の小さな瞳の動きに魂を抜かれそうになったり、死角からの若い激しい息吹に呼吸をし方を忘れたりする、あの感覚をもっと強烈に感じたい。きっと相手はこの1年で貯め込まれたものを舞台上から全力でぶつけてくるのだろう。楽しみ、と言っているだけではとても受け止め切れないだろうから…そうだ、まず滝にでも打たれに行こうかな。

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03.今月の「Wonder of Act」(編集人一押し)

2020年の忘れられぬ演技はたくさんありましたが、中でも『罪の声』の宇野祥平さんは、素晴らしかったですよね。悔恨・苦悩・負い目が人の形をとって生まれてきたみたいな造形。そしてあの記者会見。第42回ヨコハマ映画祭助演男優賞、第75回毎日映画コンクール男優助演賞も大納得です。

さっき、原作を読んで聡一郎さんに自分を重ねたと言いましたけど、まさかその役を僕に振られるとは思っていなかったんです(笑)

やはり、持ってらっしゃる方ですね。インタビューの中で小栗旬、星野源両氏のことを役名で語っているのに、グッときました。

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04.こういう基準で言葉を選んでいます。その他

舞台、アニメーション、映画、ドラマ、etc。人が<演技>を感じるもの全てを対象としています。編集が観ている/観ていない、共感できる/共感できないにかかわらず、熱い・鋭い・意義深い・好きすぎる、そんなチャームのある言葉を探しています。皆さんからのご紹介、投稿もお待ちしています。→投稿フォーム

なお引用エントリー中に俳優スチルや動画が載っていた場合、記事を直接埋め込むのではなく、文章を引用しリンクを張るようにしています。

第14号は2月28日発行予定です。

連絡先:
Twitter/@m_homma
Mail/pulpoficcion.jp@gmail.com

05.執筆者紹介

箕山 雲水 @tabi_no_soryo
兵庫県出身。物心ついた頃には芝居と音楽がそばにあり、『お話でてこい』や『まんが日本昔ばなし』に親しんで育った結果、きっかけというきっかけもなくミュージカルや歌舞伎、落語を中心に芝居好きに育つ。これまで各年代で特に衝撃を受けたのは『黄金のかもしか』、十七世中村勘三郎十三回忌追善公演の『二人猩々』、『21C:マドモアゼルモーツァルト』

06.後記+α

まず、最初にnoteというプラットフォームについてです。note株式会社代表取締役CEO加藤貞顕氏のnoteを発見しました。(先月号を発行した時点ですでにポストされておりました。

具体的な事実が何もわからないし、どう是正していくかもわからない文章ではありましたが主張は理解できるものでした。できればnote株式会社のプレスリリースに事実含めてポストしてくれないものかしら。注目しつつnoteを継続します

さて、一周年を迎えました。特に記念的なことはせずにいつもの通り淡々と発行しましたが、今年から始めたいことはいくつかあります。企画倒れにならないようにぽつぽつ、いっこいっこやっていきます。演技について観客目線で語り合える<場所>を作りたいという気持ちは今も全く変わりありません。

それではまた次号で!

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