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20数年ぶりに『うわさのズッコケ株式会社』を読んでみた
行動力は抜群だが女子に嫌われるタイプのハチベエ、頭がいいはずなのに学校の成績は底辺なハカセ、特に何か秀でているわけでもないのになぜかモテるモーちゃん。
そんな3人のイケてない小学6年生が、児童会長に立候補したり、妖怪や幽霊にうっかり会っちゃったり、怪盗を追いかけたり、江戸時代や戦国時代に行ったりするのが、ズッコケ三人組シリーズ。
中でも13作めの『うわさのズッコケ株式会社』は、小学生だけで商売やって大儲けしようぜ、という、公式の人気投票でも堂々の1位を獲得した人気作。にして、どうもnoteの今秋の課題図書なのだそうです。
で、現役小学生時代に当時の既刊はすべて読破(確かその時点で40冊くらいあったはずで、最後にリアルタイムで読んだのはなんか海底に行くやつ)し、かつてズッコケファンクラブの会員(黄色い手帳が送られてきた)であった自分が、20数年ぶりに読んだ自分の感想としては、あくまで子供の世界の話だったんだな、これ。……っていう。
いや、小学中学年向けの本だし、そもそも主人公はみんな扶養家族だし、そりゃそうなのですが、昔はもっと大人っぽい印象だったんですよね。ああ、文字ばっかりのちゃんとした小説を読んでるぜ俺、みたいな。
今の感覚で読むと、ひらがなが多くてクラクラしてくる。「べんとう」くらい漢字で書けとか思ってしまう。そして、今の感覚で読むと展開が早い。スラスラ読める。え?これで終わり?というところであっさり終わる。
現役当時も1日のうちにぜんぶ読めちゃったことが多々あって、それだけおもしろいというのもあるんですが、単純にストーリー自体がそんなに長くないんですね。昔やっていたドラマ版やアニメ版は、30分で1巻ぶんの内容を放送していたもんなあ。
三人組の住んでいる地域は海に近く、秋ごろには港はイワシ釣りの人たちで賑わっているようです。ただ、港の近くには自販機や飲食店がないらしく、ここでジュースやべんとう……弁当……を売ったら儲かんじゃね?というところから話が始まります。
まあゼニ稼ぎなわけですが、このゼニ稼ぎの渦中にガチな経営理論が組み込まれているのが凄い。資本金のつくりかた、株主総会とはなんなのか、配当金の計算と、基本的な知識はこの本で身に付きます。株価は高いうちに売っとけとか、粗利のパーセンテージにも言及。このへんは、これ本当に子供向けの著書か?と思ってしまう。
ゼニ稼ぎが目的なので、当然ながら何度も利益の計算をしているのですが、この数字がなんかワクワクしてきます。大人の感覚からすればしょぼいんですが、逆にこのしょぼさがいい。お年玉でもらった一万円札と千円札を並べては数えてほくえ笑んだ冬休みを思い出す。
後半では高校の文化祭にお邪魔することになるのですが、これもまた実際はたいした規模のことはしていないんだけど、小学生から見た高校って、確かにどこか、大人に近しい場所っていう印象だったよなあと思う。そんな場所で不特定多数の人を相手に(小学生にしては)とてつもない額のゼニ稼ぎをするわけですから、そりゃもう興奮ですよ。
ただ、別に金のことばっか話しているわけでもなく、この巻での裏の主人公ともいえるクラスメイトの中森くんは、仕事への姿勢というものを教えてくれます。
それは一般的にいう「やりがい」みたいなものですが、ラーメン屋の息子である彼は、ただただ自分のラーメン(これも、本物ではなく半分フェイクみたいな代物。だがそれがいい)を他人に提供したい、っていう気持ちだけで、三人組に乗っかるんですね。
クラスメイトはみんな株を持っているので、当然ながら儲けはどうなっているんだと戦々恐々なのですが、中森くんは終始マイペース。こういう人が将来は成功するのだろうか……。
というわけで、おもしろかったです。
ただ、いちばん好きなのは未来のやつなんだよなあ。この巻でも中森くんが登場しますが、なぜかオネエ口調になっています。なにがあった。
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