スクリーントーンでエロスを目指した日
基本的に自分のnoteの投稿はテキストですが、イラストも思いついた時には描きます。
下手の横好きみたいなものだし、基本的に女の子しか描きたくないので女の子ばっかりなのですが、こんな自分も漫画家を目指してみた時期というのはあります。元を辿れば中学生の頃。
世の中にコミックスタジオもアイビスペイントもなく、もっといえばプロの絵描きさんでさえ、ペンタブで作業されていたのはごく一部。なので、紙にインクを付けたペンで描くという、アナログな手法を勉強しました。
まずは、漫画を描くために準備するもの。
鉛筆あるいはシャープペンシル、定規、コンパス、インクあるいは墨汁。これらはもともと持っていたので問題ありませんが、さらに以下の道具が必要でした。
・ペン先
・ペン軸
・原稿用紙
ペン軸は先端に穴が開いていて、そこにペン先を取り付けます。このペン先というものにはいくつかの種類があるのですが、最も使われるのはGペンと丸ペン。すごく大雑把にいえば、Gペンは太い線、丸ペンは細い線が書けます。
そのペン軸とペン先を入手するべく、大阪の梅田という大都会の、阪神百貨店の9階にある画材屋さんへと向かいました。
後から考えれば、別に梅田まで向かわずとも地元でも入手できましたが、無学な中学生だったので、漫画なんて高尚なものを描くには、大都会に出ないとダメ……、というような、謎の思考回路があったのです。おそらく。
『マンガスーパーテクニック講座』『マンガ基礎テクニック講座』という本も買いました。
当時の時点で10年以上むかしの本で、漫画家さんのインタビューも多く載っているものの、技法的なことよりも「漫画家は儲かりまっせ」的な側面が大きいように感じました。バブルだったのですね。
若かりし頃のイケメンな江川達也先生や、めちゃくちゃオシャレな上條淳士先生、一本木蛮先生のコスプレ姿、蛭子能収先生の今は亡き前の奥様のお写真もありますが、……漫画の参考になったのかというとまあ、微妙でした。
それでも2000円くらいする高い本×2冊を無駄にするのは嫌だったので熟読し、スクリーントーンを削るという、そこそこ高等なテクニックに挑戦しました。
スクリーントーン、いわゆるトーンと呼ばれるもの。今はイラストアプリにたくさんの種類が入っているし、基本的なものは無料で使えますが、アナログな時代はやはりこれも画材屋さんに行かねばなりません。今度は、地元の商業施設の中にある画材屋さんに行きました。アニメイトを知るのはもうちょっと後のこと。
このトーンというもの、1枚300〜500円と、けっこう高価なものです。中学生の財布には厳しかったのですが、厳選して3枚だけ買って、自転車の籠にそれを丸めて入れて帰りました。
ここから俺のまんが道が始まるんや。満賀道雄先生のごとく「おれの恋人はまんがや」と心の中で叫んで……。
いたわけでもなく、その動機は不純なものでした。いや、ある意味とても純なものかもしれない。ストレートに自白します。
エッチな絵が描きたかったのです。
『マンガスーパーテクニック講座』のトーンの削り方のページには、ビキニ姿の女性のイラストが載っていました。
その女性の腹部あたりのトーンの処理が実にいやらしくて、申し訳ないことに、どの先生のインタビューよりも、その1ページというか1カットが心に響いてしまったのです。こんなエッチな絵ばかり描いて、お金も貰えるなんて最高だな……と。
本当は、肌の露出の多いイラストは、デッサンの狂いを誤魔化しにくくて、画力がないと描けないのですが、中学生に特有の謎の万能感が当時はありました。まだ高校生になったら工藤新一になれると信じていたし、いずれ自分はB'zの稲葉さんになると信じていたので。
しかし、実際に描こうとすると、これが全然エロく描けない。『ラブひな』の単行本(もうひとつの参考資料)を見ながら描いてもなかなか描けない。
漫画家の先生の多くは、模写をとにかくたくさんやって絵の描き方を覚えたとおっしゃっています。なので、『ラブひな』のエロい場面の模写をたくさんしました。そうじゃない場面の模写はしませんでした。自分が目指していたのはエロ絵師だったので。
結局、トーンで自分のエロを創造することはできず、後に同人誌即売会なるものに参加した時に描いた漫画に使いました。
その漫画は『けいおん!』のメンバーがジャイアンのリサイタルに行くというバカ漫画で、エロの欠片もないのですが……。
ところで、今の自分のアイコンのイラストの女の子は、水着バージョンも存在します。でも、世に出すのは、自分が納得の行くエロを描けてからかな……。まだ諦めてはいない。14歳なので。