見出し画像

ガラケーと不器用な日々

もうスマホに替えて10年以上が経ちましたが、それにつれて、ガラケーの記憶が失われていくのを感じます。

ケータイなどに無頓着で、かなり長い間ガラケー使いだったうちの親ですら、少し前にスマホデビューしてPayPayなんぞを使い始めました。

フリック入力が難しくて覚えられないらしいですが、今の自分からすれば、ガラケー時代にいちいち文字変換して入力していたのが信じられない。よくあんなめんどくさいことをやっていたもんだ……。

LINEがなかった頃は、友達との連絡もメールが主流で、送られたメールが溜まってくるとセンター問い合わせとかいうのを使っていたんだよなあ。あれ?センター問い合わせってなんだったっけ?細かいことは忘れてしまった。

あと、既読の表示がないから、送ったメールを相手が読んだかどうかわからない。なので、「読んだよ」「了解」というだけの内容を送り返さないといけない。スタンプとかないから、文で返さないといけない。実にめんどくさい。

現代ではそんな煩わしさからも解放され、ガラケーはスマホへと進化しました。

多くの人はスマホをケースに入れて使っていますが、このケースはいくつもの種類が市販されているし、キャラクターものやブランドものも充実していて、スマホケースの専門ショップなんかもありますね。

ガラケーにはケースというものはありませんでしたが、かわいいストラップを付けたりして飾る人はいました。

主にJKの方々がやっていました。そのJKさんたちのカリスマとして、ネイルクイーンに選ばれたりしていたベッキーさんは、ガラケーのストラップをおそらく世界で最も多く付けている人物として、一目おかれていました。主にタモリさんとか徹子さんとかから。

自分もその頃に好きだったアニメ『GUNSLINGER GIRL』のストラップをぶら下げていました。

一見すると銃のストラップでしかありませんが、小さくペンダントのようなものが付いていて、そこにはヘンリエッタという、その頃に愛でていた子のイラストがあるので、わかる人にはわかってしまうオタグッズ。

ヘンリエッタというのは同作のヒロインで、たぶん中学生くらいの女の子ですが、機関銃をガンガンとブチ放ちます。保護者代わりのジョゼおじさんのことが大好きで、ジョゼおじさんがピンチになると更にドカドカとブチ放ってくれる、とてもいい子です。訳あって義体なので、血まみれになってもすぐ復活します。

そんなヘンリエッタを連れて、毎日のようにガラケーを使っていました。

意味もなく同じメールを見返したり、意味もなくカラオケで先輩が歌っているところを写真に撮ってみたり、意味もなくポエムをメモ帳に認めてみたりと、ひとときも手放せませんでした。

もう機種名を忘れてしまいましたが、自分は確かにそのガラケーを愛していました。それはもう溺愛していました。そしてその愛は憎へと変わり、そのガラケーが緑色であることが気に食わなくなりました。

ならば機種変すれば良いのですが、そうもいかない。というのも、その時期あたりから、いわゆる「2年縛り」の法則が始まったからです。

契約してから2年以内に解約すると、解約金が発生するという制度。後にケータイを営業する側に回ったこともあるので、この制度がなぜあったのかは理解できるのですが、なにせ当時はその解約金がふつうに1万円以上もかかったので、学生にはきつかった。

そんな折に、デコシールなるものが存在することを知りました。ケータイをデコるためのシールで、これを使ってキラキラしたケータイやギラギラしたケータイ、通称「デコ電」を作り上げることができるのだそうです。

主にやっていたのはやっぱりJKの皆様でしたが、JでもKでもない自分もやってみたい……。と思い立ちました。

デコシールは、100円ショップでいとも簡単に手に入りました。が、まあ100円ショップのものなので、ただ紫色の網目が入っているだけの地味なものです。

それでもその時は満足し、本当は緑色なのに紫色の姿をしたカメレオンケータイを持ち歩いていました。ヘンリエッタも笑ってくれました。周囲の人がどんな顔をしていたのかは知りません。

現在は解約金の制度は廃止されているらしく、センターに問い合わせることもなく、昔は高スペック機種のみにしかなかった動画撮影の機能は付いているのが当たり前。音楽も映画も再生できるし、電子マネーにも交通マネーにもなる。便利な世の中になりました。

でも、ケータイも機能が不十分で、自分も不器用だったあの頃を、ヘンリエッタの笑顔と共に思い出すんじゃ……。


いいなと思ったら応援しよう!

ぷらーな
サウナはたのしい。