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お菓子は遊びではない

うまい棒が10円から12円に値上げするそうですね。

物価がどんどん上がっていくこの時代に、ずっと10円で販売していたことのほうが偉業であり、おそらくメーカーのやおきん様にとってもかなりギリギリのラインまで粘っての苦渋の決断だったのでしょう。

なので、それを責める気にはなれませんが、やはり10円で馴染んできたうまい棒が12円に変わるというのには、一抹の寂しさがあります。

駄菓子屋のおばあちゃんが計算するのが大変になりそうだなあとは思いますが、今どき電卓で精算するような昔ながらの駄菓子屋というのもなくなってきているので、ここにも時代の流れを感じます。

もうそろそろ『ちびまる子ちゃん』の初代オープニングに出てくる古めかしい店がなんの店かよくわからない、という子供も出てきそうです。

夢見るものなら飴いっぱいだった思い出。あの歌詞は正確には「♪夢見ることなら アメいっぱい」ではなく「♪夢見ることなら〜 めいっぱい」だというトリビアを披露する機会も、徐々になくなっていくのです。

実際には駄菓子屋で飴をいっぱい買ったことはなく、スーパーで毎日ひと袋ずつ、親に果汁グミを買ってもらっていたのですが。

なぜ果汁グミかというと、袋にジッパーが付いているからです。封を開けても保存しておけるので、少しだけ食べて、後でまた少しだけ食べて……というのを繰り返せるのです。今はグミの種類が増えて、ジッパー付きのものも多いですが、当時は果汁グミくらいしかなかったのです。

そして、その頃から吝嗇家だった自分は、そうやって1日に一度しか与えられないおやつを長く楽しむ方法を、自ら選んでいたのです。別に果汁グミがそんなに好きなわけでもないのに。


本当はねるねるねるねを買って、CMでおばあさんがやっているみたいに「うまい!♪テーテレッテレー」とやりたかったのに。

怪しい物体を練って混ぜ混ぜして、ねるねるねるねという意味不明なお菓子をつくるということに、謎に憧れたものです。食べ物で遊びたかったのです。

コーラにメントスを入れたり、人型のグミを組み立てたり、昔も今も、子供はお菓子を遊び道具にしたがるものです。

ですが、コーラにメントスを入れると爆発するという知見を得たのは大人になってからだし、人型のグミはわりと最近になって出てきた商品。とんがりコーンを指に嵌めるという発想がないほどに世間知らずでした。

アンパンマングミのフィルムがどうやっても綺麗に剥がれないことに失望し、ルマンドをこぼさずに食べる方法がわからず、お菓子とはだんだん縁が遠くなり、自分は辛党の人になっていました。


暴君ハバネロが発売されたばかりの頃、友達に「これやべーから食ってみ」と言われ、食べてみたのですが、そんなに辛くないしふつうに食べられると思い、「ふつう」と答えたところ、「リアクション悪いなあ」と言われてしまったのですが、実際にふつうだと感じたのだから仕方ない。

その頃にはカラムーチョなんてぬるいと感じる味覚が完成していたし、業務用スーパーで売っていた、韓国の辛ラーメンをスナック化したようなやつをたまに愛食していました。

それでもまだ足りないと思っていた矢先、100円ローソンで見つけた衝撃のお菓子。その名も「激辛マニア」。

さっそく購入し、さて、激辛マニアなんて大層な名前を掲げていらっしゃるが、どんなもんですかな、と激辛評論家を気取って口に入れた数秒後、自分は脳内でスライディング土下座をしました。

いや、激辛マニア、マジ半端ないって。こいつ半端ないって。1枚しか食べてへんのにめっちゃ舌トラップするもん……。そんなんできひんやん、ふつう……。

1枚で舌がヒーヒー言う激辛マニアは、ひと袋を完食するのに3日かかりました。もう二度とこんなふざけた食べ物を買うかと思いつつ、定期的にあのアホみたいな辛さが恋しくなって結局はたまに買っていたのですが、いつの間にか終売に。

ロカボとかGABAとかいう文字がコンビニの陳列棚に踊る健康志向の昨今、あんなどう考えても不健全な商品は求められないのか……。

と諦めていた数年後の昨年、またもローソンで激辛マニアとの邂逅を果たしました。すぐさま買って店を出たのは言うまでもありません。


あの地獄をもう一度……、と期待を胸に袋を開けて食べてみたのですが……。

「ふつう」でした。リアクションが悪くてすまん。でも実際にそうだったのだから仕方がない。

辛いことは辛いですが、暴君ハバネロと同じくらいかな(当社比)。ふつうに美味しかったですし、別にお菓子は遊び道具ではないので、別に地獄とか要らないかもなあ、と思いました。


※筆者は中本タンメンのカップ麺にハバネロスパイスを入れて食す変態なので、上記のことをあんまり当てにしないでください。激辛マニアが危険物なのには変わりありません。

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ぷらーな
サウナはたのしい。