「DEVELOPER GENESIS-Osaka Midnight Label #1-
【作者まえがき】
さて、かねてから、なんらかの形で参加したいとは思っていたものの参加できていなかった、あの『ディベロッパー』および『スカイパー』に、僭越ながら参加させていただきました。拙作は、原作の設定や他の方の設定とは異なる箇所も見受けられると思いますが、そこはジェネシスですから。初代ガンダムに対するガンダムSEEDみたいなものです。いや、自分のはどっちかというとGガンダムかもしれません。あきらかになんかジャンルちがうし。皆様の過去作と併せて、たのしんでいただければ幸い。
過去作といっても、…………量が膨大なので探すのが大変? まず、そもそもディベロッパーだかスカイパーだかが、なんかよくわからない? ここを押さえておけば大丈夫! そもそもの発案者である、青空ぷらす和尚様による「目次」。
https://note.mu/purasu/n/nbc86a0a04957
さらに、その発案を拡大させた張本人、ユキノフさn…………げほっごほっ…………プラノフ御大による、「ディベロッパージェネシス」へのお誘い。
https://note.mu/puranohu/n/n31d4cb195438
あと、
というタグを見ると、健康になり年収が上がり人間関係が円滑になり幸せになれて130歳まで生きられると言います。
そして、大丈夫!実は、ぼくも全部は追えていないから!いないけど書いちゃったけど、「平行世界」「2次創作」「参加することに意義がある」など、日本語は便利です!ふるってご参加しませう!
というわけで、
Yes,DEVELOPER. You must see……
23:15。
デジタル表示で時間が刻まれている。その下には、カセットテープの差し込み口。
こんな時間の埠頭には、誰もいない。ただ、薄暗い空と海だけがある。
平成元年式の当時モノとは思えないほど錆びひとつないブラックメッキボディに、ブラックアウトヘッドライト。こんな薄暗い場所では、まるで保護色に包まれているかのようだ。
車内もまた、薄暗い。純正品ではグレーだったシートは、真っ黒に塗装されている。コンソールには黒夢の曲ばかりが入ったマクセル製のカセットテープが詰め込まれている。ダッシュボードに置かれたタバコは、マルボロブラックメンソール。黒いフード付きパーカーを頭から羽織った彼の愛称は、その名も「クロ」。好きな色は、もちろん黒。そして愛車は、日産スカイラインGT-R R32 平成元年式。
「来えへんな、あいつ…………。何してんねんや。22時過ぎには来れる、言うとったやろ。どうせニートやねんから、いくらでも余裕あるやろ。寝とんちゃうか」
咥えタバコでシートにもたれかけながら、クロが毒づく。まだ半分も吸い終えないままに、次のタバコを取り出そうと箱を開けると、もう空っぽだ。
軽く舌打ちをして、タバコを買いにコンビニに行くべく、車を降りた。5分ほど歩いたところに、ぽつんと1軒だけローソンがある。
もう5月だというのに、まだまだ肌寒い。うっかりジャンパーを車内に置いてきたことを後悔した。さっさと行って、さっさと帰ろう。
レジの店員が「しゃむしぇいど!」と叫ぶや否や、「ブラメンの8ミリ…………えーと、56番のやつや。支払いEdyで。なんとかカードは持ってへんから」 と、さらっと会計を済ませる。
クロは、ヘビースモーカーかつチェーンスモーカーだ。少しでもタバコが切れると苛々してしまう体質である。一刻も早く車内に戻って一服しようとレジに背を向けようとしたその時、ひとりの外国人の男が店内に駆け込むや否や、喚きだした。メガネにチョビ髭、現場作業員のような黄色いヘルメットの、珍妙な外国人だ。
”Dude! Is English newspaper put in this store? Wanna know whether the rumor of killed James Birkin is true or not! Me to say that's a hoax! Oh,my lord…………!”
男は、英語で店員に向かって何かを喚いている。クレームではないようだが、何かひどく焦っているようで、顔じゅうに汗を浮かべている。
店員は英語が聞き取れないらしく、ひたすらに両手を挙げて「No,No!」のジェスチャーしかできないようだ。クロもよく聞き取れなかったが、ジェームズという人物に関することのようだ。
”Fuck it!”
話にならないとわかると、男は一目散に走り去っていった。
埠頭に戻ると、R32の隣に、待ち合わせに1時間半遅れで着いた車が停まっていた。
日産スカイラインGT-R R33 平成7年式の当時モノ。こちらもブラックメッキボディだが、ヘッドライトは純正品で、少しばかり汚れている。
そこに乗り込んでいる人物は、ヨレヨレの黄ばんだパーカーをだらしなく着込んでいた。おまけに髪もヨレヨレで、寝癖がついたままだ。
「おはよー。さっき起きた」
言動もまた、だらしない。
呆れて怒る気にもならず、クロはぶっきらぼうに言った。
「じゃ、出発すんぞ。あの人、ただでさえ細かいねんから。できるだけ早よ行かな」
「へーい、へいっ」
だらしない男は、髪を掻きながらR33に乗り込む。この男の名前はキョウ。その名前どおり、その日凌ぎで生きており、短期バイトや日雇い収入で生計を立てているという。20年前の旧車を整備できる資金がどこから出ているのかはわからないが、仲間内では、相手のプライベートに過剰に干渉しない、という掟があるため、キョウがそれについて言及することはない。
16号線を抜け、4号線に合流する。交通量はかなり少ない。R32のスピードメーターは200km/hを振り切った。ここからはずっと直線道路であり、アクセルをフルに踏み続ければすぐにオービスを抜けられるだろう。後続だったR33も、車線を隣に移してR32の横に並ぶ。このまま同時に一気に抜ける。
この快感がたまらない。クロとキョウが走り屋をやめられない理由のひとつだ。公道で思い切り踏み込み、警察の目を掻い潜る。
幸い、手前に車両は1台もいない。いない。いない。はずだった…………。
グオオオオオオオオオオオオォォォォン!!…………
2台のGT-Rの野太い排気音を完全に掻き消してしまい、窓を締め切った車内にまで聞こえるほどのけたたましい排気音と共に、1台の車が手前に現れた。
「…………なんだ、速え!なんだ…………ムスタング?」
急ブレーキを踏み込んで180km/hあたりまで減速し、キョウのR33にパッシングで減速の合図をしながら、クロは突如あらわれた1台の車に目を剥いた。
「フォード・ムスタング。アメ車か。しっかし、でかいタイヤやな、フェンダーギリギリ。今時ハの字とか久しぶりに見たで。あんなんもう心斎橋にしかおらん思てたけど、こういうとこも走るんやな…………しかし、速いな…………300km/hは確実に踏んどった」
すると、ムスタングのリアライトが、R32に向けて光った。更に車線を即座に変え、横のR33に向けても光った。
「煽ってきおったな…………。チョけてるシビック乗りやったら、イジメたんねんけど、アメ車か…………それに、今日はあの人も待たせとるしな…………先に行かしたろ」
更に減速したが、ムスタングも同じペースで減速しており、車間が縮まらない。減速に減速を重ね、制限速度内の90km/hまで落としたが、それでもムスタングは一向に離れない。思い切って、更に70km/hまで。
「ヤバい!」
ルームミラーには、後続車のトレーラーの姿があった。トレーラーはさほどの速度は出していないようだが、このまま減速し続けるのは危険だ。しかし、なんとかしてムスタングから離れなければならない。
もう、追い越してしまうか。クロが悩んでいると、横のR33が、忠告を無視して、速度を上げてムスタングを抜かし、車線を変えてムスタングの前に出た。R33とR32でムスタングを挟み撃ちする状態になった。
「まあ、これしかないわな…………」
”Really?! Really Did James die?”
同じ頃、先ほどローソンで喚いていた黄色いヘルメットの外国人は、カーラジオから流れたニュースに動揺していた。
「本日未明、アメリカ合衆国、カリフォルニア州シリコンバレーの企業、『D&Tシステム』に勤める、ジェームズ・バーキンさんとその一家が惨殺された事件で…………」
言葉を失った。
ジェームズは、数少ない彼の親友だった。車オタクで整備のことしか頭にない彼に、今の彼女であるミザリーを紹介してくれたのも、ジェームズだった。
ジェームズの妻であったリンダも、「話をちゃんと聞かない男は嫌われるわよ」「でも、好きなものが決まっているのは良いことよね」と、分け隔てなく接してくれた。
親友を、2人も失ってしまった。ハンドルに情けなく顔を埋め、咽び泣く彼の名前はトーマス・ウェルズ。
To be continued……
Yes,DEVELOPER.You must see……
#ディベロッパー #ディベロッパージェネシス #スカイパー #みんなのディベロッパー #繋がらなくても繋がってもいいから俺のディベロッパーを読んでくれ