あざとくされたい
あざとい、という表現があります。
主に若い女性に対して使われることが多いと思います。特にアイドルや駆け出しの女優さんなんかに多い印象ですかね。
昨今のアイドルに疎いので具体的な例がなかなか出てこず、けっこう前に引退された方で恐縮なのですが、ももち、こと嗣永桃子さんのキャラクターがわかりやすいでしょうか。
語尾に「~にゃん」と付けたり、舌足らずな発音で喋ったりして、髪型は小学低学年の女の子がするような大きなツインテール。その露骨なわたしカワイイでしょアピールは、周囲をイライラさせてしまうこともあるためにイラドルとも呼ばれ、一世を風靡しました。
現在は完全に引退され、SNSなどもすべて消滅。動向は全くの不明であり、我々はももちという集団幻覚を見ていたのかというくらいに、今となっては跡形もない存在である。
もっと昔だと、こちらは現在も芸能界にいらっしゃいますが、小倉優子さんですね。
こりん星なる異星からやってきたという設定で、甘くメルヘンなキャラクターを作り上げ、舌足らずな口調で世間知らずの少女という体で、タレントとして広く活躍されました。
実際にはこりん星などは存在せず、本当は世間知らずなどではなく、一時期は焼肉チェーン店のボスに君臨されたり、その後も大人すぎるくらい大人なニュースの中心人物となったりして、彼女がこりん星人だと信じていた日々はなんだったんだとばかりに、布団を噛んで枕に泣きつきながら夜な夜な過ごす日々。
ももちさんに関してはブームの頃にあまり触れておらず、そこまでのめり込んでいないのですが、ゆうこりんさんについては、それなりに夢中になっていました。
というか、恥ずかしいからあまり告白したことがないけど、広末涼子おねえさんの次に恋をしたのが小倉優子おねえさんかもしれない。なにせ、自分より歳上の女性が「おかえりんこ」とか言っていて、グラビアで園児服のコスプレをしていて、おまけに自分は宇宙から来た美少女だとか言い出す始末。
イタいと思わなくもないし、バカバカしいと思わなくもないし、いい歳してなにやってんの?と思わなくもない。
でも、かわいいのです。
そういうのは世間的には、あざとい、と表現され、どちらかというとネガティブに捉えられることのほうが多いです。
しかし、自分のことをそうやってかわいく思って欲しがっている女の子を見るのは、幸せなことなのです。それが、アイドルやタレントとして生き抜くための演技や嘘であってもかまわない。
そして、かわいいと思われたいがためのそういった演技や嘘は、ポジティブに言い換えれば、気遣いともいえます。野郎の多くにとって、その気遣いは極上に嬉しいことです。
だからこそ、メイドさんが我に尽くしてくれて、オムライスにケチャップでLOVEとか書いてくれる類の店舗が繁盛するわけで。
たとえ、本当は彼氏がいてもいい。他に好きピがいてもいい。Twitter(X)の裏アカウントであの客キモいと陰口を叩かれていてもいい。
とりあえず今、僕の目の前で、微笑ってくれる。それだけでいいんだ。男ってホントバカ。
メイド喫茶にはもう10年くらいは行っていませんけれどもね。今はコンカフェも多様化していて、機内食カフェや文房具カフェというのがあるそうな。
機内食カフェはスタッフが全員キャビンアテンダントの衣装を着て接客してくれるらしいが、文房具カフェってなんだ?
ペンの衣装を着て接客してくれるのか?ガチャックみたいなマイナー文房具や、鉛筆を垂直に立てるという謎の機能を搭載したハイテク筆箱みたいな懐かし文房具もあるのか?
ちなみにあのハイテク筆箱、最近の小学校では禁止らしい。バトルえんぴつも練り消しゴムもないのに、今の子はどうやって文房具で遊べばいいんだ。
人は幼少の砌から無自覚に自己を表現するもので、鉛筆を齧るのも鉛筆を舐めるのも幼いなりの表現です。ちなみに自分はHBの舌触りが甘口で好きでした。2Bはクセが強くてまだ早かったんですよね。大人の味。
なので大人になってから舐めましょう。ただ、大人になるとなかなか人前で鉛筆を舐めるのが難しくなってくるので、オフィスでひとり残業している時に……、いやでも、オフィスで鉛筆を使うことってまずねえな。
さて、あざといについてですが、大人になると公的に甘えられる場所というのが少なくなります。
特に30代に入ると、両親に金の無心をすることもなくなり、職場でそれなりに偉くなってきて、たとえ偽りであってもまあまあ賢いフリをしなければならず、あたまのわるいひとになれない。
でも、本当は、あたまのわるいひとになりたい。寝て暮らしたいし、金がほしいし、女の子に寄りかかられたい。
もうとっくに爆発したのは知っているけれど、それでも、こりん星に行ってみたい。
ああ、ゆうこりん。高校生の頃に血迷って買った謎のポエムつきの写真集、家のどっかにあるはずなのですが、どこへやったのかなあ。
サウナはたのしい。