カラオケ履歴の狂人
周りが青春パンクに湧いている中でひとり昔のヴィジュアル系を聴いていた陰キャだったのですが、実はカラオケは昔からなぜか好きだったりします。
今でも普段はおとなしい人なので、意外がられるのですが、いざカラオケ店に入ってマイクを持つと、勝手に何かが憑依して何かに酔い痴れながら歌い出してしまいます。カラオケでは人格が変わるとよく他人に言われる。
ヒトカラにも行きます。今はそうでもありませんが、一時期なんかは週1レベルの頻度で行っていて、店員さんに覚えられているので、何も言わなくても顔パスでヒトカラができるくらいでした。
ちなみに、できるカラオケ店員さんだと、ヒトカラ者だとわかると「ひとり分とっときますね」と、後からお連れ様が来るようにわざと装って気を遣ってくれたりしました。
例のアレ以降は完全に機械での受付になり、注文の受け渡しもセルフサービスになっているので、ヒトカラがとてもしやすくなりましたが、いざそうなると、あのカウンターでのおひとりさま受付の気まずい感覚が懐かしくなってくる。
部屋に入り、曲を入れて、マイクを持ち、自分の歌いたい曲を入れるのですが、なぜか最初は、あえてミスチルの『HANABI』など王道すぎる選曲をしたりします。
そういうのは接待カラオケの選曲だろ、ヒトカラでわざわざ歌わんでよかろうに、いったい誰に何を忖度しておるんだと自分でも思うのですが、なんかそうなってしまう。
もっと好きな曲を歌おう。盛り上がれる曲を。気分が高揚する曲を。……X『オルガスム』。
この曲はCD音源バージョンとライブバージョンが存在し、CD音源バージョンは2分台の短い曲ですが、ライブバージョンは15分以上つづきます。
CD音源バージョンだけだと完全燃焼できないので、続けてライブバージョンを入れるも、今度は長すぎてバテる。かつてX JAPANのライブではYOSHIKIさんが身体の限界が来るまで暴れまくった結果ドラムセットに倒れ込むというのが一種のパフォーマンスでしたが、それの再現みたいになってくる。
ライブ映像では、なぜかHIDEさんが唐突に腕立て伏せを始め、TOSHIさんは煽りまくり、PATAさんは無表情で静止していらっしゃいますが、こちらとしてはそろそろ水のおかわりが欲しいので部屋を出てドリンクバーに行きたい。ていうかトイレにも行きたくなってきた。という感じで、12分めあたりで退場。
このあたりで退室10分前のアラームが鳴るのですが、実質2曲しか歌っていないのに帰るというのももったいない。何を歌おうか……と、デンモクの履歴を見てみる。
この履歴を見るのが結構おもしろくて、ひたすら『天城越え』ばかりを練習している人とか、アニソンとヒップホップが交互に入っていて明らかな音楽性の違いが見えている人たちとか、周りがどんな曲を入れようとも桑田佳祐さんの曲しか歌わない確固たる意志を持つ人などがいる。
などとぼんやりしているが、時間がない。あと1曲、2分くらいの短い曲を入れなきゃ。気合い入れていくぞー!
『オルガスム』!
かくして、履歴のいちばん上に残ったのは、Xの『オルガスム』を3回つづけて入れた狂人の記録だったのでした。おしまい。
余談ですが、ヒトカラではなく友達とカラオケに行った時にたまにやる遊びとして、「履歴の中からあえて全く知らない曲を選んで、それを勘で歌うゲーム」というのがあります。けっこう楽しいのでおすすめ。適当でいいのでとにかくメロディーを勝手に付けて歌うのですが、途中で英語のラップとかが出てくると詰む。