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蛸薬師通の果ての西院旭湯

阪急京都線には西院という駅があり、「さいいん」と読むのですが、その近くの京福電鉄の西院という駅は「さい」と読みます。つまり、同じ漢字なのにそれぞれ読み方が違います。

現在はこの地の正式な読み方は「さいいん」ですが、かつては「さい」と呼ばれた時代もあり、阪急の駅は現在の読み方に、京福電鉄(嵐山へと向かう電車なので、嵐電-らんでん-と呼ばれる)は昔の読み方に倣って駅名が付けられたということです。  

その西院の駅前は飲食店が詰まったビルが多く建ち並び、都会の様相を呈していますが、少しそこから外れれば、昔ながらの家並みが見える通りが。そう、ここを地図で見ると……蛸薬師通。

えっ、……蛸薬師通?

蛸薬師通って、河原町の公衆トイレがあるあの通りと同じだよな……?あそこからかなり遠いが、ここまで続いておるのか、蛸薬師通。

今でも京都の友達と会うと通る場所ですが、かつてはビーバーレコードというマニアックな中古CDショップがありました。

CDショップなのになぜか伝説の漫画雑誌「ガロ」の古本が大量に売られていて、かつて蛭子能収さんや内田春菊さんが執筆されていたという「ガロ」って実在したのか、と感動した覚えがある。買わなかったけど。

あと、公衆トイレの近くにラーメン一蘭の店舗があるのですが、ここは私が今まで食した一蘭、いやラーメン店すべてで考えてもトップクラスの美味さでして。魔法みたいに美味い。それを嗅ぎ付ける観光客は多いようで、どこにでもあるチェーン店のはずなのに、行列ができていたりする。しかしマジで並ぶ価値はある。

このように、河原町の蛸薬師通は人が常に往き来する街なのですが、そこからかなり西に逸れた壬生あたりまで蛸薬師通を行くとどうなるのかというと、周辺には田原湯と芋松温泉と五色湯があり、さらに西に歩いたこの西院には、ここで紹介する旭湯があるのです。ちくしょう銭湯ばかりではないか(歓喜)。

京都市内には旭湯という屋号の銭湯が現時点で3店舗あり、それぞれ地域が違うのですが、この西院の旭湯は、他の店舗と区別するためか、Googleでは「西院旭湯」として登録されています。

西院駅から徒歩圏内ということで考えると銭湯はいくつもあるのですが、その多くが中京区壬生地域に位置しており、住所が右京区西院なのは、実はこの旭湯のみ。

というかここ、右京区なん?西院には何度も来ているのだけど、右京区なのは知らなんだ。

いや、右京区って、関西の良い子たちが遠足で行くところでおなじみの、東映太秦映画村があるところでは?

ここから太秦映画村、だいぶ遠いが?……蛸薬師通といい、京都の地理は、知れば知るほど奥が深いなあ。

さて、蛸薬師通をぐるりと回って、裏通りから旭湯に入りましょう。旭湯の建物そのものはいちおう大きな通りの西大路通に面しているのですが、入り口はそこから蛸薬師通を迂回して、学習塾の手前を曲がった路地へと入ったところにあります。旭湯と銘打たれた提灯が目印。

入り口の引き戸がいきなり男女別になっており、どちらが男でどちらが女とも書かれていないので初見だとビビりますが、別にどちらから入ってもふつうに下足場なので大丈夫です。

そこからはもちろん男女別に分かれ、昔ながらの番台式の小さな脱衣場があるのですが、なぜかミニ四駆が飾られている。

どうやらこの西院旭湯では、銭湯の浴室にミニ四駆のコースを設置してレースをする「風呂四駆」なるイベントを定期的に開催されているという。

京都の銭湯でミニ四駆レースか……これは熱い。西院駅前のジョーシンにもミニ四駆のコースが設置されていますが、西院はミニ四駆ユーザーが多いのか?

タミヤ公式のミニ四駆レースでは原則的にタミヤの純正品でないモーターやパーツの使用は禁止ですが、「風呂四駆」は、かつてタミヤのライバル模型メーカーが発売していた鬼速モーターや謎のVIPホイールの使用はOKなのだろうか?……OKだったとして、鬼速モーターも謎VIPホイールももう入手困難でしょうけど。

お世辞にも広いとはいえない脱衣場の壁には、様々な有名人のサインが飾られています。JUN SKY WALKER(S)の皆様も西院旭湯を訪れたようで、メンバーがた各々のサインが記されていました。

浴室も小ぶりですが、サウナと水風呂が脱衣場に突き出した形になっているため、窮屈には感じません。

中央にあるトルネード風呂はボタンを押すと動き、よくあるエステバスの激しいバージョンみたいなやつで、勢いがあるのですが、10秒くらいですぐ終わってしまう。思わず連打したくなってしまいますが、こういうのは連打すると傷みやすいらしいので、連続使用はしないことに。

お湯はかなり熱め。カランがぬるかったので油断していたが、少し入っただけでも踵が火照ります。西大路通から釜場が少し見えますが、昔ながらの銭湯によくある薪沸かしとも違い、今では珍しい、おがくずによる湯沸かしを行っているのだそうな。

おがくずというのは大鋸屑と書き、要するに木屑のこと。抗菌作用があるらしいです、とGoogleのAIが言っていました。

抗菌作用についてはよくわかりませんが、保温作用はなかなかにあるような。帰り道に雪がちらついていたのですが、ぜんぜん寒くない。

なんとなくまっすぐ駅に行きたくなくて向かったのは、ジョーシンの地下1階。ここはフロア全体がおもちゃ&ホビーのコーナーであり、レゴもトミカもプラレールも、ミニ四駆も品揃えが豊富。

もちろんミニ四駆のパーツも売られていませす。FRP強化マウントプレートが昔とほとんど変わらん値段(300円前後)で売られていたのに感動する。ミニ四駆の本体は今は1000円くらいしますけどね。昔は600円だったのに。 

今が必ずしも悪い時代だとは思わないし、昔が必ずしも良い時代だったとも思いませんが、気持ちだけ昔に戻るのは悪いことではないだろう、という気分になったのは、大鋸屑の作用なのかもしれません。

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ぷらーな
サウナはたのしい。