こぼれエッセイ「いつかに聴いたいつかのメリークリスマス、いつかに歌ったいつかのメリークリスマス」

今はファンというほどでもないのだが、中学生時代はB'zの大ファン………というより、B'zのオタクだった。

といっても、お金の無い学生である。ライブに足繁く通ったり、グッズを買い漁ったりしていたわけではない。オフィシャルファンクラブにも入ったことはない。全くの余談だが、その少し前に「ズッコケ三人組ファンクラブ」には入っていた。入ると黄色い手帳がもらえる。

どうオタクなのかというと、図書館や書店でB'z関連の書籍や雑誌インタビューを読み漁り、音楽そのもののことより彼らのトリビアエピソードを日々学んでいたのだ。

「ビーズ」の発音は本当は尻上がりが正しいのだとか、当初は「A'z」にするつもりだったが「エイズ」を連想させるから配慮して「B'z」にしたのだとか、そういった知識を詰め込んでいた。古いアルバムは図書館で借りることができたのでそれを利用しつつ、TSUTAYAも利用しつつ、ちょこまかとオタク活動をしていたのだ。

youtubeやスマホが普及するのは、もっと後のこと。CDの発売日は、ショップで確認していたし、PVはショップでしか観れなかった。テレビにあまり出ないB'zならなおさら、情報にありつける機会は少ない。

初めて買ったCDアルバムは、B'zのベストアルバム「Treasure」だった。初回限定版にはジグソーパズル、2度目のプレス版にはトランプが付いてくる。私が買ったものにはトランプが付いていた。

初めて買ったCDだという思い入れもあって、何十回も何百回も繰り返し再生した。

その中の1曲「いつかのメリークリスマス」。

当時、激しい曲が大好きで、バラードやテンポの遅い曲はあまり聴かなかった。同ベストアルバムの中で一番気に入っていた曲は「Liar!Liar!」。

だから、かったるい歌だなあ、というのが印象だった。


やがて私は、大学生になっていて、カラオケに頻繁に行くようになっていた。大学の近所にあった、少しうらぶれた格安のカラオケ店が、おなじみの溜まり場のひとつになっていた。少ない時は3人、多い時は20人くらいで、遊びに行った。

彼女はいなかったけれど、女友達はいた。自分も含めてオタクばかりだったので、アニメソングばかりのカラオケ。しかし、当時の私はオタクとしては初級だった。

まず、ガンダムは、さっぱりわからない。

リビングにしかテレビがなく深夜放送が視れなかったため、昔の深夜アニメの話についていけない。

私のアニメ知識およびアニメソング知識の源は、主にラジオだったのだ。

そして、足りない知識を、Gyoの無料放送をひたすら視て、そしてオタクの人とカラオケに行くことで補っていた。

さて、カラオケといえば、当然、自分が歌う順番も回ってくる。知っているアニメソングを歌うものの、持ち駒は尽きてくる。

当時はまだ、歌本というものがあった。カラオケの曲目はすべて、タウンページのように分厚い冊子に、五十音順に載せられていた。その冊子を、初めから雑に捲っていく。「あ」のつく曲目、「い」のつく曲目…………。「い」「い」……。

「いつかのメリークリスマス」


………おお、そうか。

私は歌は不得意である。私の歌う曲で部屋が盛り上がることはあまりなかった。しかしその時は違った。大喝采である。たぶんみんな知っている曲だから。

B'zは……………モテる!一瞬そう勘違いしそうになったが、次に入れた曲は全然盛り上がらなかった。たぶんみんな知らない曲だから。

次に入れた曲は「MOTEL」……………ではなく、「HOLY NIGHTにくちづけを」。もうひとつあるんだ、クリスマスソング。


#エッセイ #Xmas2014 #カラオケ


サウナはたのしい。