短編小説 纏足の女
メイは纏足だった。幼い頃から足を矯正されて小さくするのは女としては当然だった。
当然早く歩く事も、走ることも困難だった。メイのそばにはいつでもシュェがいた。シュェは纏足されていない田舎女だった。
足を洗う時、常にシュェがいた。シュェはメイの足を触る度、綺麗で美しいと言った。メイはシュェの大きな足を眺めながら軋む心を慰めた。私はきっと、良いところへお嫁に行けるけれど、シュェは私のお付として人生を終える。となればシュェは運命共同体といっても過言ではなかった。メイはいつもシュェの事を気にかけた。
ある日、シュェはいつも飯を残すと女どもが話しているのを聞いた。メイは胸騒ぎがして、気に入らなかった首飾りを賄賂にシュェの様子を一人の女に探らせた。
シュェが足を洗う時、メイは聞いた。
「最近食欲がないと聞いたけど」
シュェは何でもない顔をして最近腹が痛いのですと言った。メイは隠し事をするシュェに怒りを募らせた。
メイの元に女がやってきた。シュェはイン家の男と情を交わしているが、誰かまではわからないという話だった。メイは激怒した。
それからメイはシュェをいびり始めた。小さな足でシュェの顔を蹴りあげたり、指の間を洗う時、シュェの手を締め上げたりした。シュェははじめは絶望的な顔をしていたが次第に目を合わせないようになった。メイは更に激昴する。
シュェの飯を更に減らした。シュェは減った飯から半分を残し、持ち去るようになった。どう考えても腹痛ではないとメイは確信した。
メイは一人で、シュェが出かけるのをつけた。シュェは街を通り、用心深く裏路地に入っていった。メイも急いで路地を曲がりたかったが足が小さくてなかなか追いつくことが出来ない。メイは肩を掴まれた。
知らない、小汚い男が三人立っていた。綺麗なお嬢さん、とメイのことを呼んだ。メイは悲鳴をあげる。足を持ち上げられ、メイはその場に倒れ込んだ。メイは呼んだ。シュェを呼んで泣いた。
路地からシュェが男と二人飛び出してきた。やはり、とメイは泣きながら落胆した。しかし男は簡素な服を着ていた。男は三人の前に飛び出すと土下座を始めた。驚く辺りの隙をついてシュェはメイを引きずって逃げた。
メイは男の正体についてシュェを問いただした。男は一緒に奉公に出てきたきょうだいだがイン家はあまり金回りが良くないらしく、残飯を分けているとシュェは答えた。
メイの力は一気に抜けた。それにしても、一人で家を抜け出すなんてとメイはシュェに叱られた。しかしメイはシュェに抱きついた。おいおいと泣き始めた。シュェはあきれていたが、メイの腰を抱き返した。