自粛警察と実在

あまりにも都合がよい存在って、実存を疑ってしまう。例えば自粛警察。誰もが「いかにもありそうな話だ」と思う話すぎるから。
その姿を見たことはないが、残された貼り紙や通報記録から実在を信じることって、例えば山中の足跡やフンや抜け殻から山男やツチノコの存在を信じることに似てる気がする。
あるいは、横浜にひとりいた白塗りの女性の話が、全国に出没する白いメリーさんの話になったようだと思う。
だってあまりにも都合が良すぎる。メディアは「こんな話があるらしい」と紹介したら、いかにも世相を切った雰囲気を出せる。聞いた我々は、その行動を過剰だ、異常だと思うことによって、自らの正常さを確認することができるとともに、奔放な人々の行動が自粛警察とやらに抑制されることにも安心感を覚えることができる。全員にとって都合がよすぎるのだ。
わたしは物語がひといちばい好きなので、疑いながら生きなければならない、と風呂に入りながらつらつらと考えていた。

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