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演劇の青山「アンダーカバー」のこと
演劇の青山「アンダーカバー」が終演して6日経ちました。でもまだまだずっと作品のことをしゃべっていたい、だってめちゃくちゃがんばったから。あれすごかったね、あれもすごかったね、あそこはほんま最高やったね。いくらでも言える。
幸い今は配信期間中です。まだ許されるでしょう、喋ってても。しかしあと7日で配信まで終了してしまいます。時の流れあなどりがたし。今のうちにできるだけたくさんアンダーカバーのことをおしゃべりして、そして、少しでも配信を見てくださる方が増えることを願ってこのノートを書いています。配信チケットの購入は12/14(土)14:00まで。
脚本すごかった
脚本を担当したのはピン芸人のどくさいスイッチ企画さん。以下、どくさいさんと書きます。どくさいさん?となるのは慣れてください。
私がどくさいさんと初めて会ったのは、R-1プランプリ2022の準々決勝でした。その年、アマチュアで準々決勝に進出していたのが3人で、大阪では私とどくさいさんだけでした。そんな縁でお互い注目していて、楽屋で挨拶をしました。準々決勝のネタが面白かったので、そのすぐ後にやっておられた単独ライブを見に行きました。軽い気持ちで見に行ったけど、面白すぎて感動して、ここで完全にファンになる。ご本人がTwitterのプロフィールにカクヨムへのリンクを載せておられたので、これまた軽い気持ちで覗いてみたら、すごい切れ味のショートショートが読んでも読んでも膨大にあって、ものすごい才能と沼の入口に立った気持ちになり、恐れおののきながらも絶対ご一緒したいと思うようになりました。勇気を出して最強の一人芝居フェスINDEPENDENTへお誘いして、一人芝居の脚本を書いてもらった、ということで、ご縁ができました。
その後、どくさいさんはR-1プランプリ2024で決勝に進出され、一躍全国的な注目を集め、その全国的な注目集める生放送で「会社のことは何も言えません」とか言い(ウケてた)、その後しばらくして36歳で会社を辞めて上京されました。
めちゃくちゃ才能のある方だから、私ごときの感覚で推し量るのもおこがましいけど、悩んでないわけはないと思う。
「仕事やめたいなー」と思ったことのない人はいないでしょう。もしいたら、ここからは読んでもらわなくて結構。「やめたいなー」と思って、それを実行に移した人も移さなかった人も、色々考えただろう。
今回の作品は、たぶん色々考えて会社を辞めて環境を変えたばかりのどくさいさんが書いたオフィスの話です。なんせ才能がめちゃくちゃある方だから、全部余裕で創作かもしれないけど、でも、会社でしっかり働いたりガッツリ悩んだりするリアリティが描かれた台本だと思う。
今のどくさいスイッチ企画しか書けない、悩みながら働くすべての人に刺さる台本だと思います。
参考1「36歳で会社やめて上京した人」としてインタビューされるどくさいさん。
参考2 私が恐れおののいたショートショートは、この10月にKADOKAWAから出版されました。切れ味と驚きに満ちた1冊。ぜひ。
演出すごかった
演出を担当したのは、大先輩・大沢秋生さん。以前に共演させてもらったり、演出してもらったりしたご縁があって、2022年のINDEPENDENTにどくさいさんを誘ったときに演出をお願いしました。どくさいさんの台本のとがった部分そのままに、みごとに「演劇」にしてくださいまして、その感動のままに、演劇の青山にお誘いさせていただきました。
今回、SNSでも話題に挙げてくださる方が多かったこのシーンは、大沢演出によるものです。
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どうや!どんなシーンか全く分からないでしょう!!
大沢さんは「僕、意味分からないシーン大好きなんですよ」と言って嬉しそうに演出席から見ておられました。
後述しますが、演劇の青山の稽古の進め方はけっこう特殊だった気がします。役者全員が思いついたことを言います。私もそんなに稽古現場をたくさん知ってるわけではないので、あくまで当社比ですが、むちゃくちゃ議論します。役者の出したアイデアでめっちゃ面白くなることも多々ですが、毎回スッキリ結論が出るわけはないし、役者同士で意見が食い違うことも多々。しかし煮詰まってきたら、大沢さんが「これでやってみましょう」と言って、さらっと全員の納得解を示してくれます。
今回の稽古場はこの大沢さんのバランス感覚に支えられていました。改めて、めちゃくちゃすごい方です。
役者陣最高やった
今回ご出演いただいた俳優のみなさま。
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言うまでもなく多方面で大活躍され、その名を轟かせておられますが、今回の稽古場でとくにありがたかったのは、むちゃくちゃ議論ができたことです。
みなさんお忙しいので、稽古スケジュールはまあまあタイトだったから、ほんとならバシバシ決めていく稽古ができれば効率的ではあったと思う。自分はせっかちなので、正直スケジュールは常に気になってました。しかし、むちゃくちゃ議論して作ったことで、面白さの厚みみたいなのは絶対増したんじゃないだろうか。
いっぱい議論して作ったので、共通言語も生まれました。よく言ってたのは「なるべく大きく振りかぶる」というやつ。
私がどくさいさんのコントを見たときに印象的だったのは、「一言で全部変わる」というところ。テキストの切れ味が鋭すぎて、めちゃくちゃかっこいいと思った。そのキレみたいなのを複数人でも出したくて、そのための共通認識をつくるために
「ここは振りかぶろう」
「なるほどね」
とか言ってやってみていました。この「振りかぶる」という感じを伝えたくて、「フェイントをかける」とか言ってた時期もあったんですが、今のところ「振りかぶる」がいちばん伝わりやすい気がする。でも、言葉じゃないのかもしれない。やってみて、オモシロがオモシロで返ってくるという幸せな瞬間をたくさんくださる最高の方々で、本当に豊かな稽古時間でした。
ていうか、変な写真ばっかりですね。何のシーンかは、ぜひ配信でお確かめください。
配信見てほしい
そんなわけで、脚本・演出・役者、全員まあまあ必死で作った、演劇の青山「アンダーカバー」、ただいま配信中です。
全員必死で作りましたが、なんとお値段2000円。上演時間は85分。必死で作ったとは思えないほど、何も考えず笑える作品になっていると思います!
演劇の青山「アンダーカバー」
脚本 どくさいスイッチ企画
演出 大沢秋生
出演 福田恵/長橋秀仁/是常祐美/マナカ/桐山泰典
(作品紹介)
葉月産業株式会社の社員、赤木には夢があった。しかし赤木の思いをよそに、突然やってくる季節はずれの新入社員。この新人、何かがおかしい・・・!新人の登場をきっかけに狂いだす職場の歯車。回らない業務、回せないPDCA、なぜか回るカメラ。暴かれる正体。果たして赤木の夢は叶うのか!?
演劇の青山がお届けする、日常と実存がぐらつく波乱のオフィスコメディ。
配信チケット
料金2,000円/上演時間85分
販売期限 12/14(土)14:00まで
視聴期限 12/14(土)16:15まで ※何度でもご覧いただけます
取扱 観劇三昧