福田八段、R-1グランプリに出る

福田八段という名前でR-1グランプリに出て、準々決勝で敗退しました。

この1か月すごく楽しかったことと、この短期間ですごくたくさんの方にお世話になったことをメモしておこうと思います。

うれしかったので、細かく書きます。長文すみません。

自己紹介

私は普段、レトルト内閣という劇団で俳優をやったりしています。

レトルト内閣としての本公演は、2020年に延期して以降できていません。延期の経過についてはよろしければこちらをお読みください。

本公演ができない間、関西演劇祭に出品させていただいたり、こんな動画をつくったりしていました。


「福田八段」

R-1のネタの内容は、書道家がお客さんに人生の一言を授けるというもの。きっかけは3~4年前、MBS主催のチャリウッドの片隅でやっていた「茶屋町ベンダース」というイベントでした。演芸のメニューが書いてある自販機がおいてあって、メニューのボタンを押したら中から人が出てきて演芸を提供するというものです。主催の青木さんが関西演劇界の人を集めてネタを書いてはりました。

何回めかで、青木さんが

「福田お任せボタンを作るからさ、なんかやってよ。書道とかさ。」

と言ってくれて、それで書道家のキャラを考えました。当日、なぜか唐突に喉をつぶして全く声が出なくなってしまい、仕方なく書のみでお客さんと会話したのですが、驚くほどウケました。なんかあの日はお客さんの顔みたら言葉がおりてきて、書いたら全部ウケました。たぶんあれがゾーンというやつです。声が出なくなった経験はこの1回きりなので、ピンチになると脳の未使用領域が開く、みたいな話は本当にあるのかも知れない。

ちなみに書道は子どものころ近所の教室で習ってました。「お習字でもしい」と言ってくれたお母さんありがとう!あのとき習った書道は今とても私を助けています、たぶんお母さんが想像もしなかった形で!

青木さん、両親、ありがとう!

出場

12月、京都の生きる伝説・黒川猛さんから電話がありました。伝説の劇団・ベトナムからの笑い声でコメディを量産し、今はThe GO&MO`Sという名義で一人コントを狂ったように作り続けている人です。

「俺R-1考えてんねんけど、賞レース出たことないから色々教えてや」


私は「安定志向」というコンビでM-1グランプリにずっと出ていたのです。三回戦どまりでしたが、予選から見るお笑いマニアにはかすかに知られてました。弟の結婚式で、弟の友達のM-1マニアに憧れの目を向けられたのが人生のハイライトです。私は昼間公務員をしてるので、公務員が漫才をしているという設定にしてました。

企画とは掛け算。よく言われることです。「公務員×M-1」はわりと飛距離の出る掛け算でした。「公務員漫才師」の肩書で朝日新聞に載ったのはたぶん今のとこ私だけでしょう。相方の藤さんが忙しくなってしまい、直近では出れていませんでしたが。

黒川さんから電話をもらって、

「私は去年出たけど2回戦で落ちました。今年のR-1は、どうしようかな。うーん。がんばってください。」

とかなんとか話して電話を切ったのですが、賞レースのこと色々話したせいで、「M-1三回戦は楽しかったな・・・」というのをそこからしばらく考えました。三回戦になると大きい劇場でやれて、お笑い愛の権化みたいなお客さんで場内は満員。そこでドーンと返りがあったとき、明確に「あ、今、脳内麻薬が出た。」と思ったものです、あと楽屋がDr.ハインリッヒと同じで、明確に血圧が上がった。

エントリー締め切り当日の12月24日、投函してしまいました。

エントリーしたのは多分に黒川さんのおかげのような気がします。

予選

1月7日、1回戦突破。

1月16日2回戦。思ったよりウケて、気分良くネタ終えました。お客さんに「めっちゃ面白かったです」と声かけていただいて、それでもう満足してました。

客席にいた芸人・ヒゲ王子さんとふろむよーさんが「いったと思うよあれ。」と声をかけてくれたのですが、いやいや…とか言って堂島ロール買って帰りました(会場が淀屋橋だった)。

晩、社会人芸人の先輩・栗尾さんから連絡きて、準々決勝進出したの知りました。二回戦が楽しかったから、単純に、まだ続くことがうれしかった。

嬉しい!いつも一番に情報をくれるのは栗尾さん!ヤッタ!なんでそんなに情報早いの栗尾さん!という気持ちでした。

準々決勝からはネタ時間が3分になります。

ネタを練るために、「ライブに出たいのですが・・」と栗尾さんに相談。同じくアマチュアで進出したどくさいスイッチ企画さんを紹介してもらってライブ情報を教えてもらい、BAR舞台袖の加藤さんに相談。加藤さんから、ライブ主催者の芸人・鬼としみちゃむさん、ボニーボニーさんを紹介してもらいました。(このへんRPG感があった)

出してもらったのは500円のライブだったんですが、全員面白くて衝撃だった。若手芸人さんたちが腕を磨く場としてやっているライブらしい。芸人さんのファンなのであろうお客さん(若い女性が多かったように思う)が分け隔てなく笑ってくれて、いいお客さんやな、と感心しました。ちゃんとウケてくれたし、分かりにくいとこはちゃんとウケてなかった。めっちゃ信用できるお客さんでした。ここで、あまりウケなかったところを練り直したりできました。主催の芸人さんたちもめっちゃいい方で、突然きた知らんおばはんにすごく親切にしてくださり、「準々がんばってくださいね」とか言ってくれはりました。

その後、コントユニットかのうとおっさんのかのうみなこさんと、栗尾さんにネタ見てもらったり、劇団員にネタ動画を送り付けて意見やアイデアを募集したりしていました。

ネタ見てくれた栗尾さん、かのうさん、

アイデアをくれた三名刺繍さん、田頭健樹さん、藤京子さん、ウイカさん、そして意見くれたみんな、

ライブ出演のお世話をしてくれた栗尾さん、どくさいスイッチ企画さん、BAR舞台袖の加藤さん、鬼としみちゃむさん、ボニーボニーさん、ありがとうございました!

0.04%

R-1グランプリにアマチュア芸人が出場して準々決勝に残る確率は0.04%らしい。これは、同じくアマチュアで準々決勝に残られたわっきゃいさんがネタでおっしゃっていたというのを見て知りました。

今回、準々決勝に残っていたアマチュアの人は、大阪では私とどくさいスイッチ企画さん、東京でわっきゃいさんの三人でした。

わっきゃいさんはYouTuber・会社経営・コピーライトなど様々なことをされてる現役京大生という、凄すぎて意味わからん方でした。私が京大で知ったのは「凄い人は凄いし普通の人は普通やし、変な人は変」というシンプルな事実ですが、こんな、凄くて変な人は見てる人を元気にさせます。すごく人気のある方なんだというのも納得でした。応援します。

どくさいスイッチ企画さんは、準々決勝の翌々日に単独ライブをされていたのですが、「面白そう」だけで見に行ったら、おそろしいほど面白かったです。そのおそろしいライブ、noteで公開されておられます。凄いです。私は面白すぎて絶望しました。

わっきゃいさんもどくさいスイッチ企画さんも、それぞれのご活動を知ると、「R-1準々決勝進出というのは、この巨大な才能のほんの一面を表すだけのものなんやなあ」と思わされる、本当に凄い人達でした。凄い人を知れたことにとても感謝しています。

準々決勝当日

賞レースの緊張は独特。尺も決まってるから絶対に段取りをロストできないし。M-1のときは、出番前は「藤さん緊張してないかな~」と考えてたらよかったけど(藤さんもそう思ってるかも)、一人だったら、自分の緊張と向き合うしかありません。

最終的に「お金もらってないねんから、私が楽しければいい」と思うようにしてました。

(しかし、よく考えたら、同じライブでギャラもらってる人ともらってない人が出てるのならば、ギャラもらってる人がギャラの分お客さんに奉仕せい、と思いますが、R-1の条件はプロもアマもみんな同じ「2000円払う」でした。みんなお客さんに対する責任は同じでした)

配信映像を見たら、登場で張り切りすぎてセンター通り越してる自分が写ってました。覚えてます。舞台上で「あれ、センターどこやこれ・・?」と思ってゼロ番を確認してジリッと戻りました。配信みると、すごい一瞬目を細めてゼロ番を確認し、さも芝居の流れかのようにゼロ番に戻ってました。いいぞ!伊達に芝居やってないぞ私!

始まってしまえばもう、お客さんとの会話が楽しくてたまんなかったです。私のことなんか全然知らないお客さんと、「誰やこいつ」の状態からスタートするのは、なんというか、血が沸く感じがあります。

お客さんの顔をじっくり見ながら、笑顔が見れるって最高やなあ、というポエティックなことを考えている間に夢のような3分間が終わりました。

敗退

その日の晩、まだ半分夢みたいな気持ちで堂島ロールを食べていたら(なんばにも支店があった)、栗尾さんが「厳しいですね・・」と連絡をくれて、落ちたのを知りました。いつだって教えてくれるのは栗尾さん。ありがとう栗尾さん。

本番が楽しかったから、悔しさはなかったです。すがすがしく、残りの堂島ロールを食べました。甘味とウイスキーの組み合わせは本当に最高です。

総括

そういうわけで、この1か月、なんか青春みたいな気持ちで、初めてお会いする方に助けてもらったり、友達に手伝ってもらったりしていました。改めて、かかわってくださった方に感謝を申し上げたいです。

R-1に出ている芸人さんのネタを見ていて、自分はやっぱり発明家じゃないな・・と思い知りましたが(創作するには発明の才能が必要な気がしてる)、自分のペースででも作品を作れたらいいなと思います。

この1か月のことは、走馬灯を編集するときにぜひ使いたいVなので、忘れないように、文章にしました。長文になりましたが、お読みいただいた方がもしおられましたら、本当にありがとうございました。

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