デートでなんてこった。
こんなはずじゃなかったのに…という経験は、皆様にももちろんあるだろう。
それは勉強や仕事でのことかもしれないし、恋愛のことかもしれない。
思い出しては苦い気持ちになる”あんなこと“や”こんなこと”が、私も中学3年生の時にあった。
私の通っていた学校は中高一貫校だったので、中3の夏には多くの同級生がそのまま付属高校に内部進学することを決めていた。
忙しい高校生になる前に、存分に遊んでおかねば、という風潮もあって、夏休みも惜しみなく遊ぶことに費やしていたので、
私は当時付き合っていた彼氏とも、当然のようにデートの約束をした。
約束の日の一週間前、少しでも可愛くなりたかった私は、いつもお世話になっている美容院で髪を15センチほど切ってもらって、セミロングにイメチェンした。
髪を切ったことに気づいてもらえたらその日の話題になるかな、と淡い期待もしながら、15歳のぷきんはデートを楽しみに待っていたのだ。
デート当日
切ったばかりの髪の毛に、新しいサンダル、お気に入りのスカートで向かった待ち合わせ。
寝癖を直すのに時間がかかってしまった私は、5分遅刻するという最悪のスタートを切ったのだが、険悪な雰囲気になることもなく、目的の映画館へと向かった。
ところで、髪の毛は?気づかれなかったの?と思った方もいるかもしれない。
そう、この時の私は、遅刻してしまったことへの申し訳なさと、優しく許してくれた彼への感謝で、髪の毛の話題が上がらなかったことに気が付きもしなかったのだ。
いや、というより、髪を切ったことに気づいてもらえるかなんて、本当はどうでもよかったのかもしれない。
だって本来の目的は2人で楽しむことであって、容姿の変化にそこまで敏感になる必要なんてないのだから。
デートの途中で、髪型について触れられていないことに気が付いたが、そんなことよりも楽しむことが最優先だと考えることにしたのだった。
観たかった映画を観て、カフェでおしゃべりして、楽しい時間を過ごすことができたが、翌朝から部活があるという彼のために、早めの解散となった。
そういえば、結局気が付いてもらえなかったなぁ…
と少しだけ心残りもあったのだが、自分から言って彼に気を使わせてしまうのもなんだか申し訳なくて、髪の話題には触れないことにした。
駅の改札に向かって歩いている時、彼が口を開いた。
「髪の毛さ…
(ぷきんの心の声)(え、気が付いてくれたの!? もしかして照れて言えなかったのかな? なにそれ可愛すぎか。)
…切ったの気が付いた?」
・・・んんんんん!? 今なんて?
思わず、「え?なんて?」と口にしてしまった私に、彼は依然として繰り返す。
「だからさ、髪の毛。俺切ったの、気が付いた?」
そう言われて、とっさに彼の頭を見上げる。
…なんだろう。言われてみれば切った気もするけど、正直わからない。
「ごめん、気が付かなかった。」
正直に彼に伝えると、
「えー、残念だなぁ。気づいてほしかったのになぁ。俺、彼氏なのに。」
と、彼はわざとらしく残念がってみせ、少しだけ非難されたような気分になった。
あぁ、彼氏の髪型の変化に気が付かないなんて、私は彼女失格だ。たとえそれが数ミリ単位であったとしても、そこは気が付くべきだった。
まぁ、私も切ったんだけどね。15センチ。
でもね、ほら。重要なのは楽しむことだから。実際楽しかったから。彼は何も悪くない。そう自分に言い聞かせて、なんとか落ち着こうとする。
だってほら、数行前の私もこう言ってる。
(前略)
髪を切ったことに気づいてもらえるかなんて、本当はどうでもよかったのかもしれない。
だって本来の目的は2人で楽しむことであって、容姿の変化にそこまで敏感になる必要なんてないのだから、、、
そう、容姿の変化に敏感になる必要なんてないんだ。
確かに、彼は数ミリ単位の散髪に気が付かなかった私を軽く非難したが、彼だって本気で悲しんでいるわけじゃない。
私の髪には気が付かなかったけれど、容姿の変化なんて重要じゃない。それに楽しかったのだから、それでいいじゃないか。
…って、なるかぁぁぁぁぁぁ!
私も切ったんですけど!?
しかもあなたと違って十数センチ切ってるんですけど!?
それなのに私が悪者ってなにごと!?
なんて言うこともできず、私はごめんねと言って、力なく笑うことしかできなかった。
その後、彼とは別のことで喧嘩になって別れてしまい、高校卒業までお互い気まずいままだった。
ちなみに、未だに「あの時、実は私も髪切ってたんだ。15センチ」とは伝えられていない。
その後なんと彼とは、予備校で隣の席と知らずに座ってしまうという衝撃の再会の仕方をするのだが、その話はまたの機会に。
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