デートに向かう電車内で髪の毛を犠牲にした話
ワクワクどきどきしながら、快速電車に乗った。
今日は豊島園跡地にできた、ハリーポッターのスタジオツアーに彼氏と行く。
彼氏とは豊島園駅で合流するので、行きは1人だ。
平日の朝7時台の電車なので、混雑の覚悟をして乗ったが、身動きが取れないほどの混雑ではなかった。
自分の周囲5センチくらいは空間がある感じ。
動けません、っていう満員電車に比べたらマシだ。
でも混雑してるので奥まで進めず、ドア付近で落ち着くことになった。
偶然、私の前後左右が女性で、少し安堵する。
目の前に立つ女性も私に背中を向けているので、向かい合わせで気まずいということもない。
乗り換えまでは3駅、昨夜のうちに調べた乗り換えルートを頭の中でシミュレーションして過ごす。
1駅目、降車人数よりも多くの人が乗車してきた。
私が向いているドアと反対側が開いたので、後ろから押される形で奥に詰める。
私の真後ろに立つ人が着ているダウンのフードが、頭を何度かかすめる。
混んでいるのだから仕方ない、と諦めつつも、髪の毛が静電気でバチバチしたら嫌だなぁと憂鬱になる。
少し経ってから、後ろの人がやたら押してくることに気づいた。
電車の揺れと共に体重がかかるのは仕方無いにしても、揺れが気にならない時でも押される。
なんだこれは、嫌がらせか?
電車の揺れを利用して、少し押し返して抵抗してみる。
全然効かない。
なんせ後ろの人は、フードの位置から察するに、私より頭一つ分背が高い。
後ろから押される、というより
斜め上から押さえつけられている、という方が正しい。
ムカついてきたので、体育の移動の時みたいに腰の位置に拳をセットして、いつでもエルボーできる体制をとった。
しかし、これまた全然効かない。
頭と肩には体重かけてくるのに、肘には何も当たらない。
たぶん後ろの人は、小田和正してたんだと思う。
エルボーもできないのなら、もうどうしようと思って。
とりあえず、次の駅で降りるかもしれないし、降りなくても人の乗り降りで立ち位置変わるかもしれないし、我慢することに。
ふと上を見上げたら、ドア上の横長の広告のフィルムが反射して、後ろが見えることに気づきました。
どんな輩なのか見てやろうじゃないの。
思っていた通り背は高く、ダウンジャケットを着ていて、
眼鏡をかけたどこにでもいるような男性でした。
待って、背中合わせだと思っていたけど、メガネをかけた横顔が見えたのはどういうこと?
そう思って再び注視したところ、背中合わせになったり、横に体を向けたりと忙しなく動いてる。
なんだこいつ。
もう怖いから次の駅で絶対に降りてくれ。
そんな祈りもむなしく、降りない男性。
まじかよ、勘弁してくれよ。
広告のフィルムに反射して写る男性を恨めしく睨む。
そこで気づいた。
コイツ…立ったまま寝てやがる…!!!
その高身長を活かしてしっかり高いつり革をつかみながら、
ぐわんぐわん揺れている!!!
周りがこの人を避けているためか、彼の周りは他の人よりもスペースがあるようで、あっちへ行ったりこっちへ来たり、とにかくぐわんぐわんだった。
さらに、自分のことばかりで気づかなかったが、よく見ると私の左右の女性も押しかかり被害を受けているようだった。
これは重罪すぎる。今すぐ断罪すべき。
もういっそのこと、抵抗は辞めて押しつぶされてみようか。
私という堤防を失った後ろの彼は、そのままバランスを崩して倒れるだろう。
幸いなことに、車内は身動きがとれるほどの混雑なので、被害は大きくないはず。
良からぬことを考えあぐねていた時、私の考えを揺るがす衝撃の事実を発見した。
私の目の前の、背を向けて立っている女性のカバン、
そこに着けられた、白地に淡い色のイラストが描かれた丸いストラップ。
そう、マタニティマーク!!!
絶対に押しつぶされてはいけない。
耐えきれずバランスを崩してもいけない。
避けて後ろの男性を転ばせてもいけない。
なぜなら、目の前の女性は妊婦さんだから。
絶対に負けられない戦いの始まりだ。
どんなに体重をかけられようが、この衝撃は私が全て吸収する。
どんなにダウンのフードが髪の毛をこすろうが、私は絶対に避けない。
負けない。
いや、
なんでだよ!!!!
あなたが何回も何回もフードで摩擦を起こしているこの髪の毛は!!
私が毎晩、大事に大事にシャンプー・トリートメントして!
保湿して!丁寧に乾かして!
寝るときにはシルクのナイトキャップまで被って!
徹底して摩擦によるダメージを防いでいる、私の努力の賜物で出来ているんだよ!!!
それなのに、こんなフードにこすられて.…
かわいそう!私の髪の毛かわいそう!!箱入り髪の毛なのに!!!
でもこの衝撃を吸収しないと、妊婦さんにぶつかっちゃうから!
不本意だけど!あなたの体重を支えるしかありません!!!
ゆるせない!!!!
自立しろ!!!
長い長い戦いでした。
時々カクンってなって一瞬だけ目覚める時は、その開いた目を目つぶししてやろうかと思いました。
とんでもない憎しみをこらえながら、次の停車を待ちました。
乗換駅ではたくさんの人が降りました。私も降りました。
降りる駅の降車ドアは私の前だったので、最後まで後ろの男性を直接見ることはできませんでした。
今でも思い出すと腹が立ちます。
合流した彼氏に少しだけ愚痴って、でもせっかく楽しみにしていたハリポタだったので、noteに書いて昇華してやりました。
思い切って声をかけてみればよかったでしょうか。
混んでいて振り向けないので、私も小田和正して上に叫ぶしかないですけど、
その方が迫力あって良いかもしれません。
この経験を次回につなげたいです。
長い長い愚痴でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。