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まるでデジャヴ

ある土曜日、幼稚園が所有するお山に行ってきた。
娘と息子が通う幼稚園は少し変わっていて、幼稚園の園庭に1000坪のお山がある。
園庭とひとつづきになって、傾斜のある森があるのだ。
その中に先生たちが作ったという小さなおうちが何件か建っていたり、そこから園庭に向かって長い滑り台があったりする。
さらにそれとは別に、園から車で15分くらいのところにも山を所有していて、そのお山で季節に合わせたアクティビティをしている。
山にかける情熱がすごい。
そのお山に行ってきた。

土曜日ということで、「ご家族皆様でお越しください」とお便りには書かれてあった。
ほう、夫に下の子たちを任せて行きたかった私の思惑は園のそれとはズレているのだな、と理解して、腹をくくる。
何に。お弁当に、だ。
運動会に続き、またしても五人分のお弁当を強いられることとなった。
幼稚園は、お母さんってスーパーマンだと思っているのかしら。
ああ、お弁当、お弁当ね、と三日くらい前から覚悟を決めていたのに、なんということか、前日は夕飯の洗い物が終わらないままに寝落ちして、朝起きたら七時前だった。
お米も洗っていない。炊飯器はもちろん空っぽだ。
夫は早朝から仕事があり、出発時刻に合わせて帰宅する、ということだった。
頼れる人は誰もいない。
詰んだな。
頭が真っ白になった私がまずしたのは、スマホの漫画アプリを開いて、漫画を読む、だった。
どうかしている。
漫画をひとつ読んだら心が落ち着いた。


詰んでいる場合ではないよね、とまずお米を洗って早炊きモードでスイッチを入れる。
お湯を沸かしている間に食洗器に食器を放り込んで、お湯が沸いたらペンネを茹でる。
その間に昨日の夕飯の残りのマーボー豆腐から豆腐だけつまみ出して、水とケチャップと塩コショウを入れて煮る。これまた残り物、昨夜不評だったほうれん草のハーブソテーも刻んで入れる。
卵焼きをせわしなく焼いて、終わったら鶏ひき肉に昨日の麻婆豆腐で使い切れなかった木綿豆腐を突っ込んで、こねる。
卵焼きを冷ましている間に鶏ひき肉を小さなつみれにしてフライパンで焼いて照り焼きに。
焼いている間にウインナーを切って、もうひとつのフライパンで焼く。
茹で上がったペンネをマーボーから華麗な転身を遂げたミートソースにからめてミートペンネができた。

つくねおよびウィンナーを焼いている間におにぎりを量産して、それぞれのお弁当箱に詰めていく。
今回は各々のお弁当箱に詰めることにしたので幾分気が楽だった。

出来上がったおかずと、あらかじめ茹でてあったブロッコリーを添えて、水筒、おしぼりを用意して時計を見たら、なんだかぎりぎりで間に合っていた。

人は火事場になったらすごい力が湧いて時間軸を超えられるらしい。

何食わぬ顔で集合場所に到着し、朝からパニックを起こしたことなんてないような涼しい顔で皆さんにご挨拶をして、楽しく活動に参加した。

お山はとても広くて、しかしきちんと整備されていて、園の子どもへかける情熱と遊びへの探求心を見てとてもありがたい気持ちになった。
子どもたちは皆、のびのびとお山の中を駆け回り、木の実を拾い、葉っぱを拾い、先生が作ったというアスレチックで元気に遊んでいた。
気候も良い日で、私たち大人も森の中を散策するのはとても気持ちがよかった。

お弁当の時間になり、息子の担任の先生が
「おかあさん!これ朝から作ったんですよね?!すごいですね!」
と我が家のお弁当をのぞき込んで言った。
彼女は私の本当のすごさを知らない。
朝七時、あなたの身支度が整っていたかもしれないその時間に、我が家には白いご飯さえなかったのだ。
その狂気じみた状況を作り出すふざけた精神こそが「すごい」のだ。

それにしても私は前倒しして物事をきちんと遂行するセンスが激しく欠けているらしい。
運動会のお弁当然り。

もうほとんどデジャヴなnoteですいません。

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ハネサエ.
また読みにきてくれたらそれでもう。